星稜高の指揮官から新たなサッカー人生をスタートさせた河崎護氏
1985年の監督就任から35年以上に渡って星稜高(石川)を率いた河崎護氏が、今年3月いっぱいで星稜中・高を定年退職。新たなサッカー人生をスタートさせている。河崎氏は1、2回戦敗退が続いていた石川県でまずは毎年選手権に出場するチームを作りあげ、そこから時間をかけて星稜を全国トップレベルの強豪校へ。2014年度の選手権で石川県勢初の日本一を勝ち取ったほか、10年以降では全国唯一となる4年連続ベスト4以上(2012年度~2015年度)という快挙などを成し遂げている。
また、ワールドカップで3大会連続ゴールのMF本田圭佑(現ボタフォゴ)やFW豊田陽平(現鳥栖)、DF鈴木大輔(現浦和)という日本代表選手を育成。一方で、国内最大規模のユースサッカーフェスティバル、石川県ユースサッカーフェスティバル(2020年で第33回)の立ち上げ、運営に中心として携わるなど、育成年代の強化にも大きく貢献してきた。今年もコロナ禍で困っている高校生たちのために予防対策を徹底しながら石川県ユースサッカーフェスティバルを開催、全国から80チームが参加し、大会は成功。その河崎氏が星稜での35年間や、昨年の謹慎処分、石川県ユースサッカーフェスティバル、そしてこれからについて語った(第1回はこちらから)。
―星稜に黄金時代が訪れたのは2010年代。『冬の星稜』と言えるほど、冬に強かった。チームの作り方も確立されていました。
「石川県ユースフェスティバルでチーム力をつけているのもあるけれど、個を成長させる時期でもあります。夏になると、レギュラーじゃない3年生はなるべくBチームに参加させます。彼らは自信がなかったり、経験値が上がっていなかったり、何か一つ足りない。でも、優秀です。このような選手たちは夏、Bチームでとことん鍛えます。一方で、この時期は1、2年生を主力にします。1、2年生を主力にして、ここで選手としての技量を見極めたり、伸ばすことで秋に使えるようになります。夏場、暑い中で走って、その時は頑張れない選手もいるけれど、秋になって涼しくなった時に急に走れるようになる。秋は1年で力が一番伸びる時期なんです。ここで紅白戦をしたら良い。ただ、『選手権のメンバーを決めるよ』と言いながらやると、3年生が燃えるんです。1、2年生はそれに食われてしまう。そこで初めて冬に使える選手が見えてきます。1、2年生の方が良いと思っていたが、やっぱり3年生に取って代わられていたりします。冬は、夏の財産が彼らを大きく成長させているんです」
―石川県ユースフェスティバルの影響は大きいですね。
「毎年この大会で、色々なチームを見ています。石川経由で全国大会に行っているチームもいっぱい見ています。青森山田高校も今年初めて(和倉ユース大会の)決勝に来て優勝しました。選手権大会優勝・プレミアチャンピオンシップ優勝した彼らでも、何故かこの大会の優勝は無かった。ここで負けるのには何か理由がある。もちろん新たな取り組みや大きな戦術変更などチャレンジする時期です。レベルの高い拮抗した試合をやり、トレーニングを重ねることで、プレミアや選手権であれだけの成績・結果を出していると思います」
―河崎先生にとって、選手権は嬉しさと悔しさと。
「楽しかったですよ。僕は連続で出ないといけないという自負があって、それは青森山田の黒田監督とも良く話していて、連続出場していると子供たちが全然違います。大会に入ってからも常に平常心だし、選手権に出て東京に来るといつものところに帰ってきたという感じがする。宿舎も、グラウンドもそう。子供たちは毎年違うので、星稜というユニフォームが選手権に馴染んできたのはラスト10年くらいかな。それまでは1回戦負け、次の年は出れないの繰り返し。PK戦で負けて大会が終了する、この悔しさは1年間付きまといます。PK練習は相当やりましたよ」
―階段を登り続けて日本一。ただし、入院中で胴上げされていただろう場にいることができませんでした。
「(2012年度から)3位、2位、1位、3位。(優勝時は)ウチの家内が先生に相談したらしいですよ。すると先生が『病院にヘリがあるから、飛ばしますか』と(苦笑)。その話を家内が私に言ってくれたんですが、でも、一瞬考えましたけれど、身体が痛くて動けなくて。本当はヘリに乗って埼スタへ行きたいと思いましたけれどね。ただし、言えることは選手権の勝った負けたも凄いことかもしれないけれど、僕にとっては歴史を作ってくれた一年一年が本当に大切な歴史です。全ては、子供たちの負けた悔しさの上に立っているものだから」
―積み重ねの結果、“あの”石川県から日本一。
「パレードもしてもらって。これだけの人が応援してくれたんだと、感慨深かったですね。昭和60年にスタートした時は土埃で、朝6時から国見の朝練習を見て。それがスタートでしたね」
―昨年の12月、部員に対する暴言・暴行があったとして謹慎処分。そのまま定年退職となりましたが、星稜の去り方は残念な形になりました。
「私が現役時代に受けてきたような厳しい指導が今は許されないことは理解していましたし、気を付けていたつもりですが、多少の罵倒や軽く小突く程度のことは必要な指導で許されるという誤った認識があったことが最大の原因で、本当に反省しています。去年に関しては、ラスト1年、僕は監督から総監督になり、なかなかグラウンドに出れなかった年なんで、たまに行くと色々なところが目についてしまって、歯がゆくて、感情的になってしまったところもあったと思います」
―選手に対しての申し訳ない気持ちが。
「その年の3年生の最後は当然、選手権に出て終わらすというのが自分なりの使命でしたから。毎年、それで終わっていましたから。そうすると、今までの苦労も苦労でなくなるという。そういった思いが行き過ぎてこのような形になってしまったことが、何よりも彼らに対して申し訳なかったと思います。今、3月に定年退職して学園、サッカー部には一切携わっていません。外からの応援、こういう(石川県ユースサッカー)フェスティバルを通じて良いゲームを組んで上げられれば恩返しになるんじゃないかなと思っています。最後、彼らに悔しい思いをさせてしまったのは残念でならないですね」
―色々な誹謗中傷もあった。『そうじゃない』という思いもありつつ、受け止めなければならない部分と両方だったのではないかと。
「週刊誌、新聞、ネットの報道に私のことでこれだけ反響が大きいことを改めて感じました。それに対して、私の周りで仲間が心配してくれて、『先生、大丈夫ですか』という連絡は全国から頂きました。でも、私はやったことを反省しないといけないし、立場は副校長でもあったので、責任を取らないといけないということで2か月くらい自宅謹慎。家族も色々な批判を浴びて、外を歩けない状況でした。家族にそのような思いをさせてしまったことは、本当に悔しいですし、申し訳ないことです。今後は、サッカー界に携わらせて頂いている中で、サッカーに対する裏方として石川県サッカーフェスティバルのような大会を開催することで寄与できないかと考えています。この大会は、田舎の温泉街でやっていたりするので、他でも地域の活性化や、地域貢献を考えてやることができないか。昨年は320チームがこの石川に来てくれたんですね。今年もコロナ禍で難しい状況の中で多くのチームが来てくれて、我々も、旅館も考えて予防対策をしながら成功することができました。この320チームの先生方と私は繋がっていますから、このネットワークを活かして、次は石川じゃなくて北海道や長野県、沖縄県とか、そこへ私が出向いて何かできないかと。こういう温泉街の人たちと、また困っているところに和倉温泉、石川県の成功例を持っていけないかと。これを自分の仕事として、地域貢献に少し携われたらと思っています。それが私の次やっていきたいことです。そういうところがあれば、ぜひ声をかけて頂ければと思います」
―表舞台からは一歩引いた形になります。
「和倉温泉は人工芝が3面できて、3年で1万人のサッカー選手が来てくれ、さらに2面ができ、5面になりました。昨年はなんと11万人の選手・スタッフに来て頂きました。地域の人たちも喜んでくれているし、続けていくことが大切かなと思っています」
―河崎先生の経験を違う形で活かしていく。
「日本代表になった教え子も石川県ユースサッカーフェスティバルを3年間経験しております。どんな選手にも、チームにも、良いゲームを、良い環境でさせてあげたい。その思いがありますし、今後も持ち続けて行きたいと思っています」
(第1回はこちらから)
(取材・文 吉田太郎)
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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