G大阪加入内定の“静学10番”髙橋隆大。見違えた高校3年間での変化と成長「今は全部自分がやるメンタルがある」
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「今日は髙橋に救われた」と指揮官も賛辞



写真:松尾祐希


3年間で見違えるようになった。プレーはもちろん、精神的にもタフになり、今では誰からも頼られるエースとなった。身長は155センチしかないが、その存在感は計り知れない。

静岡学園で10番を背負うMF髙橋隆大(3年/G大阪加入内定)が高校最後の冬に向け、調子を上げている。その証が、10月23日に行なわれたU-18高円宮杯プレミアリーグWESTの19節・東福岡戦のパフォーマンスだ。

チームは序盤から相手のハイプレスに苦戦し、中盤からパスをつなげなかった。右サイドハーフで起用された髙橋に良い形でボールが入らず、パスを受けても単独突破をせざるを得ないケースがほとんど。それでも、得意のドリブルに持ち込み、局面の打開を図ろうとする姿勢が随所に見られた。

0−1で迎えた後半もチームは低調な出来に終始。川口修監督も「プレッシャーに屈して何もできていない」と嘆くほど、らしくないイージーなパスミスもあって攻撃の形が作れない。流れを変えられないまま時計の針は進み、残された時間が10分を切る。そこでこの苦境を打破したのが、髙橋だった。
 
81分、ゴール前で仕掛けると、相手DFが素早く寄せてきた。3人に囲まれたが、なんとかキープして右足を振り抜く。ミートしたとは言い難いシュートだったが、ボールは相手DFに当たってゴールに吸い込まれた。

「途中から低い位置からでも仕掛けるようにして、少しずつリズムができてきていた。そのなかでのシュートでしたが、気持ちで押し込むような感じでしたね」(髙橋)

泥臭く奪った渾身の一撃。チームに勝点1をもたらす活躍を見せた髙橋に対し、指揮官も賛辞を贈った。

「今日はどう考えても髙橋に救われたゲーム。髙橋のところでしかチャンスが作れない。それは寂しい話なんですけどね…」(川口監督)

思い返せば、入学した頃は線も細く、武器のドリブル以外は未熟な選手だった。得意なプレーができなければ、ゲームから消えてしまう時間帯も多かった。

仲間を信じながらも自分が全てやる

ピッチ外では、お調子者のムードメーカーというイメージだったが、今年に入ると、雰囲気が少し変わったように思えた。シーズン開幕前の2月、筆者が学校の練習場を訪れると、仲間に厳しい声を掛ける髙橋の姿があった。

ただ、根底にある盛り上げ役の部分は変わらない。「静かなのは嫌。もっとワイワイして欲しいし、なんで乗ってくれないんやって思うこともあるんですけどね。とにかくチームカラー的にも今年は大人しい」という仲間の性格を踏まえ、盛り立てるために今まで以上に声を出すようになった。

だが、厳しいことを言うのであれば、自分も行動で示さなければならない。今年はエースナンバーの10番を託されただけに、結果が誰よりも必要だった。
 
ゴールにこだわったのもそのためだ。昨季までは決定力が課題で、U-17日本代表の合宿でも森山佳郎監督から何度も指摘を受けていたが、今季は18試合で7得点。インターハイでは惜しくも県予選準決勝で敗れたものの、夏以降は、今回の東福岡戦のようなチームを救うゴールも増えてきた。

「気持ちの面で、中学の時は自分以上に点を取ってくれる選手がいたけど、今は全部自分がやるというメンタルがある。そこは本当に強くなった」

仲間を信じながらも自分が全てやる――。組み立てから仕掛け、そして最後のフィニッシュ。3年生になって高まった責任感がなければ、中3の時にユース昇格を逃した古巣・G大阪への加入内定も実現しなかっただろう。

残された高校生活もあとわずか。ムードメーカーだった男は、自他共に認める“静学の10番”となり、最後の冬に挑む。昨冬の選手権ではベスト8で敗退し、今夏のインターハイは県予選の準決勝で敗れただけに、このままでは終われない。最後の高校サッカー選手権でどのようなプレーを見せるのか、注目だ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)
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