学校・練習・住まいが近距離の寮生活のメリット
岡山学芸館高校の「瀬戸内占春寮」。野球場とサッカーグラウンドに隣接している
「今の高校サッカーは地方勢が強くて、都会の高校は全国大会で勝ちづらくなっている」。大阪のある高校の指導者が発した言葉が印象に残っている。近年の高校サッカーは練習で身につけた技術、戦術を試合で発揮するために、肉体強化に力を入れるのがスタンダードになっている。
都市部の高校はバスや鉄道など交通網が発達し、遠方からでも学校へ通いやすい。ただ、広範囲から優秀な選手が集まりやすいのは利点であると同時に、選手がフィジカルを鍛える上でネックになってくる。
例えば、冒頭で挙げた大阪の高校では、通学に1時間以上の時間をかけて隣県から通う選手が少なくない。学校の授業と練習を終えて、家に帰ると22時過ぎ。そこから食事を摂り、お風呂に入って寝ると日を跨ぐのが当たり前になる。
さらに次の日も朝練などに向かうために6時前後には起床するとなると、育ち盛りの選手にとって大敵である睡眠不足に陥る。
その点、学校生活、練習、日常生活を近距離で過ごせる寮生活は、選手の成長に理想的な環境が整っていると言えるだろう。練習を終えればすぐに食事が摂れて、就寝時間も早くなる。自宅生とは違い、日頃どんな食事をして、栄養を摂っているかまで目が行き届くのも寮生の利点だ。
そうした日々の積み重ねが、3年間の高校生活によってフィジカルの差として表れ、結果にも出てくる。近年の高校サッカー選手権でコンスタントに上位に食い込む青森山田高校(青森県)、矢板中央高校(栃木県)などはその代表例と言えるだろう。
そんなサッカー強豪校は、選手権出場に憧れる遠方の選手を受け入れるため、寮を完備するのが当たり前になっている。そして、今の寮は"古い・汚い・プライベートがない"といった、以前はあった負のイメージを覆す施設が増えている。
強豪校の寮は充実化の一途
その代表格と言えるのが、選手権に4度出場し、昨年はインターハイベスト8まで進んだ岡山学芸館高校(岡山県)だ。
これまでの寮が手狭となったため、2017年4月に野球場とサッカーグラウンドに隣接する場所に「瀬戸内占春寮」を建設。各学年20名ずつ計60名、野球部と併せて120人が共同生活を送っている。
寮にはミーティングスペースとしても使用できるきれいな食堂もあり、トレーニング後すぐに食事が摂れる。また、運動後の疲労をとるため交互浴ができる大浴場や、練習試合に来たチームが宿泊できるスペースも備えている。
コロナ禍でオンライン授業が増えたため、今では当たり前になっているが、自チームの試合やJリーグ、海外サッカーを視聴するため、いち早く寮にWi-Fiも導入した。
選手が暮らす部屋は4人1部屋ではあるが、ベッドの下段が勉強机などの個人スペースになっており、カーテンなどで区切ることでプライベートな空間も確保できている。
「練習参加に来た選手で寮を希望する選手には案内しますが、なかなかこれだけきれいな施設はないので、親御さんとともにビックリされます」と口にするのは高原良明監督だ。寮費は他チームよりも高めだが、新たな寮ができてからは県外からの入学希望者が増えたという。
2019年度から2年連続で選手権ベスト4入りを果たした帝京長岡高校(新潟県)も、選手の成長を考えた寮を新設したチームの一つだ。これまで県外から来た選手は複数に分かれた下宿先で生活していたが、全員までスタッフの目が行き届かず、食事やコンディショニングといった部分は選手の意識任せになっているのが課題だった。
だが、日本一を獲るためそうした私生活の改革に着手。2021年頭には学校近くにサッカー部専用の食堂を作り、自宅生も含め練習前後に補食を摂れる環境を整えた。4月にはサッカー部専用の寮も完成したが、こちらは睡眠にこだわった設備にしたのが、特徴だ。
夜にスマートフォンやPCから発するブルーライトを含む明るい光を浴びると脳が昼と判断し、眠れなくなると言われるため、夜10時以降は室内への電子機器の持ち込みを禁止。充電は廊下でできるように建物が設計されている。
睡眠時間を確保するため、洗濯にも工夫が施されている。寮生は洗濯機が空かないため、寝る時間が遅くなるケースも多いが、帝京長岡では平日の洗濯は代行業に依頼。登校前にランドリーバックに洗濯物を入れると、業者が各部屋の洗濯機に入れ、洗濯後は選手それぞれの部屋に干してもらえる。
授業がなく時間に余裕が生まれる土日は自らが洗濯を行ない、寮生活のメリットであるひと足早い社会勉強の経験もさせているのもポイントだ。「大事なお子さんを預かっている以上、コンディショニングの面ではプロに近い環境を整えてあげたい。学校生活を大事にしながらも、サッカーに集中できる環境を作っていきたい」と話すのは、古沢徹監督だ。
一人部屋がスタンダードになりつつある
東山高校の寮は、最近スタンダードになりつつあるという一人部屋だ
寮と共に遠方の選手を受け入れてきた下宿も、現代に合わせて大きく変化をしている。ひと昔前は大家さんの自宅の一部を間借りするイメージが強かったが、最近は会社が運営し、管理人が常駐する学生会館と呼ばれるタイプの施設がスタンダードになっている。
代表的なのが、約1300の高校、大学と提携し、年間2万人もの生徒を受け入れる学生会館のドーミーだ。寮を自前で作ると寮監を配置したり、毎日、食事を提供する難しさなどがあるが、ドーミーの場合はすべてを任せられるのが利点である。
昨年度のインターハイ、選手権でベスト8進出を果たした東山高校(京都府)もドーミーと提携する高校の一つ。以前は学校近くに自前の寮を運営していたが、老朽化が進んだため、約4年前からドーミーが運営する学生寮を利用し始めた。きれいで管理が行き届いた寮の評判はよく、他部活も含めて定員となったため、サッカー部はこの春にできたばかりの新たな寮に移ることになったという。
東山の寮の場合、風呂とトイレがセパレートになった一人部屋。室内には電子レンジ、冷蔵庫、ドラム式の洗濯機、乾燥機といった生活必需品がついている。また、建物内には朝食や夕食を食べるためのきれいな共用スペースがあり、自炊する人用のキッチンも完備されている。無料で飲めるコーヒーメーカーが置かれているのもうれしいポイントだ。
「プライバシーを保てる一人部屋を求めている子どもは多い。我々も時代に合わせないといけない」と話すのは福重良一監督。コロナ禍の感染対策として共同生活が避けられる傾向が強まるなか、一人部屋は選手を預ける保護者にも喜ばれており、県外からの問い合わせが増えた。また、寮を新設する学校も一人部屋がスタンダードになりつつあるという。
人気スポーツであるサッカーに力を入れる高校が増え、県外の高校を進路として選ぶ選手は増えている。選んでもらうチームになるため、チーム実績、プレー環境だけでなく、日常生活にまでこだわるチームが増えるのも必然の流れかもしれない。
一方で施設が新しければ寮費が高くなるのも必然で、寮費が安い旧来の寮が持つ強みもある。自宅から通う高校も含め選択肢の幅が広がっているため、取捨選択が問われる時代と言えるだろう。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
- 1 ブレントフォード VS アーセナル 予想、対戦成績、最新情報2024/1/2
- 2 リーズ・ユナイテッド VS ブラックバーン 予想、対戦成績、最新情報2024/1/2
- 3 インテル・ミラノ VS アタランタ BC 予想、対戦成績、最新情報2024/1/3
- 4 バーンリーFC VS ストーク・シティ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/2
- 5 ブライトン&ホーヴ・アルビオン VS アーセナル 予想、対戦成績、最新情報2024/1/5
- 6 トッテナム・ホットスパーFC VS ニューカッスル・ユナイテッド 予想、対戦成績、最新情報2024/1/4
- 7 サンダーランド VS シェフィールド・ユナイテッドFC 予想、対戦成績、最新情報2024/1/2
- 8 OGCニース VS スタッド・レンヌ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/4
- 9 クリスタル・パレス VS チェルシー 予想、対戦成績、最新情報2024/1/5
- 10 グラナダCF VS ヘタフェCF 予想、対戦成績、最新情報2024/1/4