矢板中央高を今春卒業し、スペインに渡った藤野和哉。ユース年代のトップリーグに所属するチームで奮闘を続ける。写真:(左) db-sports.com/(右)田中研治
日本に別れを告げて早1か月半。昨冬の高校サッカー選手権で矢板中央の得点源として活躍した背番号9が異国の地で新たな挑戦をスタートさせた。
藤野和哉、18歳。中学校時代から憧れていたスペインでのプレーを選択し、ユース年代のトップリーグにあたる“ディビシオン・デ・オノール・フベニル”に籍を置くCDバスケス・クルトゥラルで2月からプレーしている。中井卓大が所属するレアル・マドリーのフベニールA(U-19チーム)も同じリーグのライバルだ。
スペインのトップチームを持たないクラブとの契約は半年間。限られた時間の中で結果を残せなければ、道を開くことは叶わない。厳しい環境に身を置いた男は、どのような想いでスペインでの挑戦を続けているのか。矢板中央で学んだことや今後のビジョンも含め、藤野に今の想いを聞いた。
――◆――◆――
――スペインに渡って約1ヶ月が経ちました。現地での生活には慣れましたか?
徐々に慣れてきました。ただ、最初は自分の考えを伝えられなくて、街に出てもどこにどうやって行っていいか分からないし、スペイン語を完璧に話せるわけではないのでチームメイトともコミュニケーションが取れない。かなり苦しかったですね。もちろん、渡航前に勉強はしていたのですが、現地の言葉はやっぱりなかなか聞き取れない。特に自分が住んでいるアンダルシア地方は訛りがかなりあるんです。ただ、今はシェアハウスで日本人2人と一緒に暮らしているので、すごく助けられています。
――高校卒業後に文化も違い、言葉も通じない環境にいきなり身を置きました。元々海外に挑戦したいという気持ちがあったのでしょうか?
海外挑戦への想いは昔から持っていました。きっかけは中学2年生の時です。ジェフ千葉U-15に所属していた時にスペイン遠征を経験して、中井卓大選手がいるレアル・マドリーやパリ・サンジェルマンの下部組織と対戦しました。サッカーのスタイルが日本とまるで違い、特にレアル・マドリーの次元の違う強さは今でも覚えています。プレーが落ち着いていて、小さい選手でも身体が強い。力の差をとても感じましたね。その時からスペインでプレーする夢を持ちました。
中学時代の自分であればスペインに挑戦することも難しかった
――千葉U-15からU-18に昇格は果たせませんでした。ただ、矢板中央に進学してから大きく人生が変わったと思います。
そうですね。最初は身長が低く、中学を卒業したばかりなので身体も強くありませんでした。しかも、入学早々に足首を怪我して3か月間の離脱。正直、不安しかありませんでしたね。でも、試合に出られない時期が続いたことで大きく考えが変わりました。自分を変えないといけないと想い、自分から発信するようにしたんです。チームメイトにも積極的に声をかけ、意見交換をするようにしたら、プレーも変わりました。テクニカルなところは自信があったけど、消極的な性格で人見知りをしていた自分がピッチ内外で自己表現がうまくできるようになり、苦手なプレーにもチャレンジできるようになりました。
――具体的にプレースタイルはどのように変わったのでしょうか?
中学の時は守備をしないで攻撃だけするようなプレースタイルでした。なので、入学当初は1年生チームのコーチに守備面をかなり指摘されて、2年生になってトップチームに関わるようになってからも髙橋健二監督や金子文三コーチにかなりキツく言われました。だからこそ、高校3年生になって、球際の部分や守備のところを考えてプレーできるようになりましたね。特に髙橋監督からは球際、空中戦の強さ、運動量を教わりました。とにかく気持ちを前面に出して戦う。中学時代の自分であればスペインに挑戦することも難しかったと感じているので、戦う姿勢を学んだので自分が大きく変わったと感じています。
――矢板中央に進学したからこそ、今の自分があるということでしょうか。
それはあると思います。他のチームに行っていれば、埋もれていたかもしれません。矢板中央に落ちたら普通の高校で趣味程度にサッカーをやろうと思っていたぐらいだったので、本当に矢板中央に来て良かったです。
――高校3年次は夏のインターハイで2回戦敗退、冬の高校サッカー選手権ではベスト16で敗退となりましたが、個人としては選手権予選で全試合ゴールを挙げ、本大会でも初戦でネットを揺らしました。夏以降に一気に結果が付いてきたと思うのですが、そこはどのように捉えていますか?
高校3年生になり、トップチームで安定して試合に出られるようになりました。自分に自信が付き、特に夏以降はゴール前での予測がスムーズに行なえるようになりましたね。また、味方の選手がシュートを打った時は弾くかもしれないので、GKの動きを見て走り込むプレーは元々心掛けていたのですが、チームを勝たせたいという想いが強くなったことでよりそのようなプレーに磨きがかかったのかもしれません。
半年間であと5点は取ってステップアップとなる活躍を
――進路が正式に決まったのはいつ頃だったのでしょうか?
高1の終わりには大学進学ではなく、海外で挑戦したいという想いが固まりました。そこから色んな人に相談をし、高校3年生に上がった時にスペインでトライアルを受けたいという意向を監督などに伝えました。そこから夏にスペインでテストを受けることを希望したのですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で実現せず、自分自身も矢板中央でレギュラーとしてインターハイに出場する機会を得たので、そもそも夏にトライアルを受けられる状況にならなかったんです。ただ、昨年の5月26日に誕生日を迎え、18歳になっていたので国際移籍は可能な年齢で、日本国内にいながらチームを探すよりも、スペインに渡って契約を目指して練習参加を目指す方向に切り替えたんです。なので、夏の時点で選手権後に渡欧すると決めました。
――2月11日にCDバスケス・クルトゥラルと契約を結び、デビュー戦で14日のカラベラ戦は途中出場ながらヘディングでゴールを挙げました。徐々にプレータイムも伸びているようですが、そこはどうですか?
ゴールをいきなり取ったことで、もっとみんなとコミュニケーションを取ることができたし、少しだけですが自信もつきました。ただ、初戦は残り10分から、その次のアウェーゲームは30分間出場して、次のホームゲームではスタメンで起用してもらえたものの、全然やれたという感じがないんです。個人的には全然納得できていません。悪くても結果を残せればいいのですが、悪い上に結果も残せていない。ちょっと今はもがいている感じですね。でも、契約は半年。ここから6か月で結果を残して、マラガ、セビージャ、カディスなどトップリーグのセカンドチームに移籍できるようにしないといけませんね。
――残された時間は半年。プレッシャーありませんか?
プレッシャーはありません。今のチームは残留争いをしているので、ゴールを決められればヒーローになれる環境があるのでポジティブに捉えています。
――現状でステップアップするために何が必要だと感じていますか?
スピードは自信を持ってやれています。なので、自分は身体の強さをもっと身に付けないといけません。渡欧後はジムに行ったり、水泳を中心に強化を進めている最中です。
――今後の意気込みを教えてください。
チームで結果を残して、ステップアップに繋がるような活躍をしたい。そのためには半年間であと5点は取って、チームを残留に導きたいです。次はプロと同じカテゴリーになるので、少しでも上のレベルのリーグでプレーできるように頑張ります!
取材・文●松尾祐希
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■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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