写真:金子拓弥
小さい頃からセレッソ大阪が大好きだった。特に好きだったのは…
神村学園中時代から将来を嘱望され、高校1年次からチームのエースナンバーである14番を託された。世代別代表でも常に名を連ね、主力として活躍。注目度は月日を追うごとに高まり、Jクラブから関心が示されるのは自然な流れだった。
2月17日、セレッソ大阪は神村学園に所属する大迫塁(2年)の加入内定を発表した。2年生のうちに進路を決めるのは今でこそ珍しくないが、やはり例としてはそこまで多くない。なぜ、大迫はこのタイミングで決断を下したのだろうか。
左足のキック、展開力、ゲームメイクは世代トップクラスで、トップ下でもボランチでもプレーできる汎用性も持ち合わせる。将来性豊かなレフティという評価に疑問を挟む余地はなく、セレッソ大阪の強化部もやはり中学3年生の頃から追い掛けていた。
大迫がクラブ関係者と面と向かって話をしたのは昨年の春。話を聞いた瞬間、大迫自身は大きな喜びがあったという。
「小さい頃からセレッソ大阪が好きだったんです。特に清武弘嗣選手が好きで、自然と試合を見る機会が多かった」
幼少期から憧れていたクラブとの出会い――。昨年8月のインターハイ後に練習参加すると、セレッソへの想いはより強くなった。
「すごく楽しかった。大阪特有のわちゃわちゃした感じは自分も好き。その中で日本人の選手を中心にコミュニケーションを取ってくれて、すごくいい時間を過ごせたんです」
特に憧れの存在である清武からは冗談混じりで「セレッソに来るでしょ?」と声を掛けられ、大迫も「行きます!」と思わず即答したほど。練習参加を通じ、セレッソでプレーする意思が固まっていく。
もちろん、サッカー面での収穫も大いにあった。4日間の練習参加では初日と最終日が公式戦と被っていたため、実際に主力組とトレーニングをしたのは2日ほど。それでも、普段の練習では感じられないひとつ上のレベルのサッカーを知る機会となった。
「トレーニングのレベルが高く、強度が凄かった。できないプレーも多かったけど、トップ下のポジションでゴールへの意識も出せたし、トレーニングで得点も取れた。攻撃に関しては少し手応えがあって自信になったと感じる。ただ、守備の強度やスピード感は全然足りないと思いました」
今年の目標は高校日本一と今季中のJリーグデビュー
手応えを得た攻撃面でもプロのスピードに付いていけず、改善すべき点が見えたとも話す。特に大きな影響を受けたのが、昨季限りで現役を退いた大久保嘉人だ。
「同じチームの時は大久保さんを狙い、師王にパスを出すイメージを持ってプレーしていました。動き出しが速く、ボールを持った瞬間にフリーになっている時が多かったのでパスの出しやすさがあった。ただ、自分の判断がワンテンポほど遅く、オフサイドになってしまうこともあったんです。もっとボールを受ける前に周りを見ないといけない」
高校年代であれば、簡単に出せていたパスもプロの世界では通じない。その経験値は大迫にとって大きな財産になった。
練習参加で気持ちが固まったのは間違いないが、一般的に考えれば、他チームの練習にも参加してみたいという想いが芽生えてもおかしくない。大迫はすでに2年次の春休みに別のクラブの練習に参加していたなかで、決断を先送りする考えはなかったという。
「いろんなチームに参加するのは性格的にあまり望んでいなかった。いろんなチームに良い顔をしているみたいで、申し訳なさがあって好きじゃないんです」
もちろん、早めに進路を決め、高校ラストイヤーは自分のやるべきことに没頭したいという考えもあった。
「早めに進路は決め、目標に向かって集中できる環境を作りたかったんです」
今年はチームのキャプテンに就任し、今まで以上に責任がある役回りを担う。また、昨年はインターハイでベスト8敗退、プレミアリーグ参入プレーオフでも1回戦で敗れ、選手権でも初戦で姿を消すなど、チームを日本一に導けていない。そうした2年次の悔しさを晴らすためにも、早めに進路を決めたかったのだ。
また、早期のJデビューを果たしたいという想いもある。現在は特別指定選手として登録されていないが、練習参加の中で評価を高められれば今季中にプロデビューのチャンスを掴める可能性は決して小さくない。プロとしての心構えも備わりつつあり、「試合に出るのは難しいかもしれないけど、そこを狙わないとプロではない」と言い切る言葉からも覚悟が窺えた。
何はともあれ、進路は決まった。今後はより注目され、去年以上にマークもきつくなるだろう。だが、それも織り込み済み。どんな状況でも最高のプレーを見せ、神村学園を日本一に導くために全力で最後の1年を戦う。「チームを疎かにしてセレッソに行くという考えはない。まずは神村学園でしっかり結果を残してプロの世界に飛び込みたい」とは大迫の言葉。チームでのパフォーマンスが認められれば、自ずともうひとつの目標であるプロデビューも現実味を帯びてくる。自身の価値を証明するための戦いはまだ始まったばかりだ。
取材・文●松尾祐希(フリーライター)
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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