「高校2年生の夏」の重要性が増している。
8月13日からサッカーインターハイが開幕する(福井県/1回戦は14日から)。Jリーグや大学サッカー部の多くのスカウティング部隊が一堂に会する大会だ。
かつて高体連の選手たちにとって“就職活動の場”と位置づけられていたのは、冬の全国選手権だった。しかし、昨今はスカウティングアプリケーションの発達やアジアマーケットの拡大、そして高校生の海外志向の意識が高まったことで、いきなり海を渡る例も少なくない。それに比例するように、各Jクラブ、大学の逸材の争奪戦も熾烈を極めている。
J1湘南ベルマーレの牛島真諭スカウトは現状をこう語る。
「メジャーな選手であればあるほど、かなりの確率で高3時点での競合は発生しています。(高校3年生に)声をかけた時点で、既に他クラブや大学と具体的に話が進んでいるケースが多々ある。そのため高1、高2の世代の中から、まだメジャーにはなっていない選手を探し出し、獲得に向けて早めに動き出す。そうしないと、クラブのビジョンに合う選手が獲得できないんです」
さらに、プロ入りの実力を有しながらも大学進学を希望する高校生(高体連の選手)が増えたことも大きい。特に有力選手は、夏前後に進路が確定するJクラブユース組のトップチーム昇格を逃した選手たちとの競争を避けるために、5、6月の段階で決まる強豪大学サッカー部のトップ推薦枠を狙う。そのため、高3の夏前には進路が決定している選手がほとんどだ。他クラブや大学との競合を覚悟してでも獲得に乗り出したい高3の選手の場合は、稀に夏を過ぎた時期まで粘ることもあるというが、それもほんのひと握りのケース。
つまり、高体連の有力選手を獲得する場合は、高2の時点での“見極め”が重要になってくる。
高2でJ内定を発表した鈴木淳之介
実際、湘南ベルマーレは昨年冬に帝京大可児高校3年MF鈴木淳之介の獲得を発表している。牛島スカウトは鈴木を高校2年の夏で発見し、すぐにリストアップ。秋にかけてリーグ戦と選手権予選に足を運んで見極め、「選手権に出たらメジャーな選手になって争奪戦が起こる可能性が十分ある」と、その年の冬(選手権本戦直前)に正式オファーを出した経緯がある。高2の選手権前後に声をかけても出遅れる可能性があったという事例は、ひと昔前では考えられなかった話だ。
ただ、牛島スカウトは「厳しい夏を超えて、ひと皮剥ける選手(高3)はたくさんいます。もちろん我々はそういう選手も必ずチェックします」とも語る。しかし、夏以降の獲得に関しては、進路決定を急ぐ高校3年生よりも、よりプロ入りの意志が固い大学生に切り替えるクラブの方が多いのが現状だ。大学サッカーにおいても同じように早期内定(大学3年)が主流となり、後期の大学リーグやインカレのラストチャンスに懸ける大学4年生にターゲットするほうがピックアップしやすい。
これらの流れに鑑みると、「高校2年生の夏」の重要性をご理解いただけるだろうか。特にJ2、J3クラブともなれば、獲得に向けた具体的なアプローチを急ぐのは当然だ。
敏感なのはスカウトだけではない。
プロにしても、大学にしても、サッカーに進路を求める高校生たちはその流れをいち早く察しており、「3年になってからアピールしていては遅い。1年からアピールしないといけないし、高2は進路を決める勝負の年になる」と口にする選手が大半。現在、ヴィッセル神戸で活躍する郷家友太(当時・青森山田)も、5年前、つまり高2のインターハイを「人生を変える大会」と位置付けていた。
「特に昨年は、高校1年生の選手たちをチェックするはずだったインターハイと国体(サッカー少年の部はU-16の大会)が中止になり、視察できる試合が大幅に減ってしまいました。『高1でチェックをして、高2で見極める』という例年の流れが分断されたことで、今年の夏のフェスティバルやインターハイは(昨年見ることができなかった)高校2年生の選手たちをチェックする重要な機会になると思っています」(牛島スカウト)
牛島スカウトらの鼻息が荒いのも無理はない。なぜなら、よりによって今年の高校2年の世代は「豊作の年」と言われるほど注目株が揃っているのだ。
神村学園・大迫&福田にはオファーも?
今年のインターハイ最注目は、MF大迫塁&FW福田師王の神村学園コンビだろう。
ボランチからトップ下まで中盤ならどこでもこなす大迫は、ピッチを俯瞰から見る「鷹の目」を持つと評される司令塔。常に顔を上げ、首を何度も振って周囲に状況を把握する能力に長け、そこから正確な長短のパスを繰り出していく。昨季からトップ下での起用が定着し、ワンツーからの抜け出しやフィニッシュワークにも磨きがかかった。
U-17日本代表では中心選手として活躍し、4月にはロールモデルコーチを務めた中村憲剛の教えも授かり、視野が広がった。いち早くJリーグ内定の一報を耳にする存在かもしれない。
その大迫の前で1トップを張る福田は、174cmと上背こそないものの、驚異的なバネと屈強なフィジカルを武器に一瞬のスピードでゴールに迫ることができるストライカーだ。相手DFとの駆け引きに優れ、細かいステップや体の向き、相手の死角に入る動きの質も高い。
さらに、ここにきて球際の強さを評価するスカウトも多い。体の使い方がうまく、ライナーのボールを相手DFを片手で抑え込みながら胸トラップでコントロールしてみせる。日本代表の大迫勇也を彷彿させるような、ハイスペックなFWへの成長が期待されている。
2人とも附属の神村学園中からともにプレーしており、高校進学と同時に不動のレギュラーを掴んだ。昨季の時点から複数のJ1クラブが獲得に乗り出すなど、早くも争奪戦の中心にいる。ともにまだ進路を決めていないことで、今大会でも熱視線を送られることだろう。
ディフェンダーでは、一昨年度の選手権王者である静岡学園のCB行徳瑛に期待したい。184cmの高さを生かしたヘッドはもちろん、ボールを運ぶ力も備え、戦況を見てボランチラインまで果敢に顔を出す。長短のパスで攻撃のスイッチを入れることができる貴重な素材だろう。
また、父は元ブータン代表監督で、JリーグではFC岐阜の監督を務めていた行徳浩二氏だ。父親譲りの守備センスと静岡学園で磨いた攻撃センスで、Jクラブから注目を集める存在に成長中だ。
他にも、前橋育英で伝統の14番を託されるボランチ・徳永涼、名門・大津の超大型ストライカーの小林俊瑛(192cm)、古豪復活を懸ける帝京には181cmの左サイドバック・入江羚介など、2004年生まれ世代には楽しみな素材がゴロゴロいる。
「高1ではまだ周囲への遠慮があるし、高3にもなれば責任感が増してチームのために自分を抑えてプレーする選手も増えてくる。高2も選手権に近づくとその責任感が芽生える頃なので、夏のインターハイは一番自由にプレーできる時期。ある意味、選手の特長が一番見られる大会かもしれないですね」(牛島スカウト)
今年は1回戦が2日間にわたって行われることが決まり、休養日が例年の1日から2日に増えた。計9日間の短期決戦でチャンスを掴み取るのは誰か。
高2の夏に「自分」を叫べ。真夏の福井での萌芽を楽しみしている。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
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※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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