掲げた『ステージ奪取』を個でも組織でも体現。名古屋U-18が2年ぶり2度目の日本一!
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[8.4 日本クラブユース選手権U-18大会決勝 札幌U-18 0-2 名古屋U-18 正田醬油スタジアム群馬]

2年前のチームもそうだった。指揮官の柔和な、しかし熱量を持った指導を受けた選手たちは、いつの間にか自分たちで行動できる主体性を身に付けている。この日のハーフタイムを、その指揮官はこう振り返る。「『こんなんじゃ話にならねえぞ』『もっと走らないと』『もっとアグレッシブにやらないと』『誰にも何も影響を及ぼせないし、自分の価値も上がらねえぞ』と、もう方々から、みんなから声が掛かっていて、『じゃあ、そのみんなが誓ったことを有言実行しようぜ』と言うだけで僕は済んだので、後半は自分たちらしい戦い方ができたのかなと思っています」。

古賀聡監督、群馬の夜空に3度舞う。4日、第45回日本クラブユース選手権(U-18)大会は決勝を迎えた。初優勝を狙う北海道コンサドーレ札幌U-18(北海道)と、2年ぶりの頂点を目指す名古屋グランパスU-18(東海2)が対峙した一戦は、前半39分にMF甲田英將(3年)が先制点を挙げ、後半31分にもFW真鍋隼虎(3年)が追加点を決め切った名古屋U-18が、2-0で勝利。2019年大会に続く2度目の日本一に輝いた。

札幌U-18を率いる百戦錬磨の知将・森下仁之監督は、決勝に向けて新たな策を講じてきた。今までベースに置いてきた4-4-2ではなく、3-4-2-1のシステムを敢行。「積極的に行こうということで、よくトライしてくれたと思います」という言葉通り、序盤から相手とのミスマッチが生まれやすい構造の中で、赤黒が主導権を奪い取る。

前半6分には左WBに入ったDF佐々木奏太(2年)が、カットインから果敢にミドル。軌道は枠の左へ逸れたものの、この試合のファーストシュートを記録すると、19分には丁寧なビルドアップから、右WB菊池季汐(3年)のパスを引き出したMF砂田匠(3年)が打ち込んだミドルは、クロスバーを直撃。「準決勝同様『楽しもう』と全員に声を掛けて、硬くならないで、みんな良い入りをしてくれました」とその砂田が語ったように、続く札幌U-18の好リズム。

「相手が自分たちのスカウティングとはちょっと違う立ち位置を取ってきたことで、サイドバックやボランチの腰が引けてしまって、僕たちも押し出せずに後ろ重心になってしまいましたし、前からボールを奪いに行くチームの強みがなかなか出せなかったですね」(名古屋U-18・加藤玄)。決して思い描いていたような展開を享受できず、明らかに苦しんでいたチームの中で、世代屈指のドリブラーが一瞬で輝きを放つ。

39分。ボランチのMF齊藤洋大(3年)が鋭いインターセプト。得意のドリブルで運んだ甲田からパスを受けた真鍋は、浮き球で柔らかいラストパス。走った甲田がダイレクトで右足を振り抜くと、ボールは左スミのゴールネットへ吸い込まれる。「『決勝は絶対自分がチームを勝たせよう』という想いでやっていたので、『絶対決める』という気持ちで思い切って振り切ったのが、ゴールに繋がったのかなと思います」と笑った11番が大仕事。名古屋U-18が1点をリードして、最初の40分間は終了した。

思い通りの流れにもかかわらず、ビハインドを負った札幌U-18は、後半のスタートからボランチにMF千田悠貴(3年)を投入。9分にはMF漆舘拳大(2年)が枠内ミドルを打つも、この日がAチームでの公式戦初出場となった名古屋U-18のGK川上翼(3年)のキャッチに遭う。さらに、10分前後からは1トップの位置にいたFW瀧澤暖(3年)を右WBへ、右WBの菊池をシャドーへ、シャドーに入っていた10番のMF佐藤陽成(3年)を最前線にスライドさせたゼロトップ気味の布陣で反撃を期すも、なかなかペナルティエリア内までは侵入できない。

逆にハーフタイムでねじを巻きなおした名古屋U-18に、戻った前への推進力。後半5分、7分と立て続けに真鍋が迎えたフィニッシュは、どちらも札幌U-18のGK逢坂文都(3年)の好守に阻まれ、10分に右からドリブルで運んだFW豊田晃大(3年)のシュートも枠を越えたものの、14分に投入されたFW貴田遼河(1年)がさらなるアクセルに。

15分。貴田が高い位置でボールを奪い切り、真鍋の反転シュートはここも逢坂がファインセーブ。直後に右SB葉山新之輔(3年)が入れたロングスローを真鍋が繋ぎ、貴田のシュートは枠の右へ。18分。左からカットインしながら、貴田が枠へ収めたシュートは逢坂にキャッチされたが、右は葉山と甲田で、左はDF佐橋杜真(3年)とMF佐藤大晴(3年)で組んだ両サイドのアタックも一気に活性化され、追加点への意欲を前面に押し出すと、大トリを飾ったのは、やはりナンバー10。

31分。葉山が右サイドを粘って運び、貴田とのワンツーで抜け出した真鍋は、「絶対に振り抜いてやろうという強い気持ちがあった」と右足一閃。鋭い軌道はゴール左スミへ一直線に突き刺さる。

「試合前に同点で得点ランクトップというのは知っていて、『絶対に単独で得点王になってやる』というところは目標だったので、決められて良かったです」と笑ったストライカーの、単独得点王を手中に収める今大会7点目で勝負あり。「攻撃陣は本当に勝負所で決め切ってくれる強さがありましたし、後ろも(吉田)温紀と僕を中心に、今日も耐えるところはしっかり耐えられましたし、本当に勝負強いチームになったなと思います」とチームキャプテンのMF加藤玄(3年)も胸を張った名古屋U-18が、2年ぶり2度目となる日本一のタイトルを獲得。優勝カップを高々と掲げる結果となった。

札幌U-18の躍進には拍手を送りたい。この日の前半も、彼らの持ち味は十二分に発揮されていた。3年生の安定感、下級生の躍動感、そして指揮官の采配が溶け合った好チームだった。キャプテンとしてチームを牽引してきた砂田は、晴れやかな顔で言葉を紡ぐ。「やり切りました。悔いがないと言ったら嘘になるかもしれないですけど、自分たちの力は出し切れたかなと。胸を張って北海道に帰りたいと思います」。道産子たちの意地は、群馬のピッチで確かに煌めいていた。

終わってみれば圧巻の優勝という感もある名古屋U-18だが、決して楽に勝ち上がってきたわけではない。DF吉田温紀(3年)と豊田はACL帯同のため、大会2日前にU-18へ合流。甲田も負傷が明けたばかりで、グループステージは1勝2分けでの突破。準々決勝はPK戦、準決勝は延長戦を粘り強く制し、ファイナルまで辿り着いている。

「プレミアもそうですし、今大会もそうですし、自分たちが圧倒して勝てたとか、主導権をしっかり握り続けて押し込んで勝てたという試合は、1つもないと思っています」と話した古賀監督の、続けた言葉が興味深い。「ただ、1つ言えることは、我々は『ステージ奪取』ということをチームの大きな柱として掲げていて、何よりも大切なのは、1人1人がより上のステージで活躍するチャンスを奪い取る、ということだと」。

「トップに上がっていく選手は、すぐにトップの競争の中でレギュラーを勝ち獲っていくことを意識してやっていますし、大学に進学しても1年生の1発目から試合に出ていくための力を付ける、また年代別の代表に選ばれていくとか、ステージアップしていく、ステージを奪っていく、ということ、個として『ステージ奪取』していくことが大きな柱となっているので、相手は関係なく、自分たち自身が成長することが組織としての強さに繋がると。そこは第一に考えたいと思いますし、もっともっと選手の顔や色がピッチの中で輝いていく、際立っていく、それが繋がってチームになれば、チーム戦術はいらないかなと思っています」。

頂点を争う最高のステージで、見事に栄冠を奪取した名古屋U-18。個でも、組織でも、主体的に『ステージ奪取』を体現できる彼らが日本一の座に就いたのは、ある意味で必然だったのかもしれない。

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