[プレミアリーグWEST]掲げるのは「頂点奪還」。名古屋U-18はグループの競争意識で“個”が成長中
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[7.3 プレミアリーグWEST第9節 京都U-18 2-3 名古屋U-18 東城陽G]

4戦未勝利のホームチーム。4戦無敗のアウェイチーム。間違いなくどちらにも、勝機はあった。まさに紙一重の勝敗を分けたのは、ペナルティエリア内へと仕掛ける姿勢で、わずかにアウェイチームが上回ったからだろうか。「この2か月間は攻撃でも守備でも、ピッチに立つ1人1人が個で状況を優位に変えるということと、それをスイッチにチームとして推進力を出そうということをテーマにしてやってきましたので、そういう意味では今日の得点に繋がったシーンは、2つのPKもそうですし、自分で状況を破りに行って、勝負しに行った結果だと思います」(名古屋U-18・古賀聡監督)。3日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第9節、京都サンガF.C.U-18(京都)と名古屋グランパスU-18(愛知)の一戦は、激しいシーソーゲームとなったが、3-2と名古屋U-18が勝利。開幕からの無敗を5に伸ばしている。

早くも序盤から双方がフィニッシュを取り合う。前半4分は京都U-18。GK岡田修樹(3年)のゴールキックにFW小山真生(2年)が競り勝ち、MF中野紘太郎(2年)が放ったシュートは枠の左へ。6分は名古屋U-18。MF鈴木陽人(1年)の浮き球をFW貴田遼河(1年)が落とし、FW遠山湧斗(2年)のシュートはゴール左へ外れたものの、得点への意欲がピッチ上に充満する。

すると、先にスコアを動かしたのは名古屋U-18。20分。鈴木のプレッシャーから、こぼれ球をDF葉山新之輔(3年)、MF齊藤洋大(3年)とダイレクトで繋ぎ、前を向いた遠山湧斗は「自分に来るというのはわかっていて、受けたら迷わず振り抜こうと決めていました」と右足一閃。豪快な軌道がゴールネットへ飛び込む。「シーズンを通してAチームの試合に絡むことが少なくて、ここでチャンスが自分にも回ってきたので、この1試合に自分のすべてを懸けようと思っていました」という15番の先制弾。名古屋U-18が1点のリードを奪う。

だが、決して流れは悪くない中で、ビハインドを負った京都U-18も前半の内に追い付いてみせる。39分。少し持ち運んだ右SBの植田陸斗(3年)が丁寧なフィードを送ると、フリーで抜け出したFW平賀大空(2年)は角度のない所から強引にシュート。ボールはゴールへ突き刺さる。それまでも再三狙っていたフィードで裏へ抜け出す形から、きっちり成果まで。前半は1-1でハーフタイムへと折り返す。

後半も両者のやり合う姿勢が鮮明に。5分は名古屋U-18。ハーフウェーライン付近からドリブルを開始したMF佐藤大晴(3年)がそのままペナルティエリア内まで持ち込み、マーカーともつれて転倒したのを見た主審は、PKを指示する。キッカーは佐藤自ら。短い助走から、キーパーの逆を突いて右スミにグサリ。2-1。名古屋U-18が一歩前に出る。

京都U-18の反撃はすぐさま。9分。「自分がプレーで示すことによって周りを引っ張るというのを意識してやっているので、キャプテンというよりもチームの中心というイメージで、自分がプレーで周りを引っ張っていくというのは意識しています」という“キャプテン”のMF遠山悠希(3年)が右CKを蹴り込むと、こぼれをDF嶋洸輔(3年)が残し、FW小山真生(2年)がトライした浮き球でのシュートは、完璧な軌道を描いて逆サイドのゴールネットへ飛び込む。2-2。再びスコアは振り出しに引き戻された。

終盤のビッグチャンスはホームチーム。39分。右から途中出場のMF安藤友敬(1年)が折り返し、平賀のシュートは枠を襲うも、この日がプレミアデビュー戦となった名古屋U-18のGK北橋将治(2年)が、左手1本でビッグセーブ。「このチャンスを逃す訳にはいかないので、ここで絶対自分の存在を証明していきたいなとは思っていました」(北橋)。勝ち越しは許さない。

40分。直後の京都U-18のCKから、一転してボールを奪った名古屋U-18はロングカウンター発動。DF佐橋杜真(3年)のパスを受けたMF西凜誓(2年)は、自陣から60メートル近く単騎で持ち運ぶと、ペナルティエリア内へ切れ込んだタイミングでDFに倒され、PKを獲得する。今度のキッカーはキャプテンのDF加藤玄(3年)。「毎回練習後に蹴っていたので自信はありましたし、『これを決めたらゲームは終わりだろう』と強い想いで蹴りました」。揺れたゴールネット。3-2。三たび名古屋U-18がリードを手にする。

何とか勝ち点を奪いたい京都U-18も、最終盤にセットプレーのチャンス。45+4分。左から遠山が正確なFKを蹴り込み、DF大坪謙也(3年)は完璧なヘディングで合わせるも、北橋が完璧なファインセーブで仁王立ち。「今持っている集中力を全部注いで、何が何でも止めようという気持ちで挑みました」という守護神の執念が勝り、鳴り響いたのはタイムアップのホイッスル。「チーム全員で『絶対に勝つ』という気持ちを持って入ったので、本当にチーム全員で戦った結果の勝利だと思います」(遠山湧斗)。名古屋U-18が白熱のシーソーゲームを制して、勝ち点3をモノにする結果となった。

「3年生も多く抜ける中で、『それでも勝たないと』という意識で、この2ヶ月は本当に積み上げてきましたし、公式戦がない中で、大学生に胸を借りてトレーニングを積んできたものが、まだまだ課題ばかりでしたけど、本当に最後に決める所とか、身体を張る所とか、この90分で見えたんじゃないかなと思います」(加藤)。

トップチームのACLに帯同している選手、ケガで離脱中の選手を含めて、3年生の主力を複数欠く中で迎えた2か月ぶりのプレミアリーグで、きっちり勝利を収めた名古屋U-18。コロナ禍の影響で、県外のチームと試合を組むことができない中で、毎週のように大学生と肌を合わせてきたことも、彼らの成長を促す上で大きなポイントだったという。

「これまで柱となってきた選手が抜けて、これまで柱になり切れなかった3年生が1年生を引っ張って、新たな1,2年生も『自分はやれるんだ』ということを自信を持って表現してくれて、最後の西の突破もそうですし、遠山もそうですけど、1年生たちも“自分の色”で存在感を示すことができたのが、チームにとって大きな刺激になるかなと。ケガしている3年生もうかうかしていられないなと、思えるのではないでしょうか」(古賀監督)。

開幕戦以来の出場で、ゴールという結果を出した遠山湧斗の言葉が印象的だ。「本当に1日1日がサバイバルですし、今日活躍したからといって、次に自分にチャンスが回ってくるかも保証されていないことなので、慢心せずにどんどんスタメンで出ている選手に対して自分も圧力を掛けていけば、チームとしても個人としても競争関係も高まって、なおかつ自分も成長できるので、そういうことはこだわってやっていきたいです」。

掲げたスローガンは『頂点奪還』。よりグループの輪が大きくなってきている名古屋U-18が真剣に目指す頂は、確実にその輪郭を現しつつある。

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