帝京・日比威監督「本当に苦しかった。ただ諦めないでいればチャンスが来るだろうと思っていた」
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 選手権6度、インターハイ3度の全国制覇を誇る、高校サッカー界の名門・帝京。ここ数年は、全国大会出場まであと一歩と迫りながら、ことごとくその高い壁に跳ね返されてきたが、ようやくインターハイの扉をこじ開けた。全国出場権がかかった準決勝の堀越戦も本当に苦しい展開で、諦めずに戦った結果のインハイ切符だった。試合後にチームを率いる日比威監督にインタビュー。涙ながらに今までの苦しい思いや試合について語ってくれた。

 

ーー劇的な試合でしたけれども振り返っていただけますでしょうか?

 

 苦しいよね…。いや、また負けるのかと思って。みんな走って、良かったと思いますよ。

 

ーー就任してから「あと一歩…」というのが何回もありましたけれども?

 

 6回目なのでね、今日で。この6回目は相当キツいですよね。でも本当によく走ってよくやってくれたと思いますよ。

 

ーーGKからコンバートしたDF荻野(海生)選手が同点ゴールを決めましたが?

 

 最後はMF福地(亮介)が決めましたしね。3年生がよくやった方じゃないですかね。

 

ーー1-2と1点ビハインドで後半のアディショナルタイムに入った時は、どういうことを考えていらっしゃいますでしょうか?

 

 堀越さんがコーナーで時間稼ぎをしてきたのを見て、「諦めないでいれば、まだ1回はチャンスが来るだろうな」と思っていました。ただDF入江(羚介)がピリピリ来ていたので、上手くいかないかもと思ってもいましたけど…。入江のボールも良かったし荻野の入り方も良かったですね。

 

ーーMF山下(凜)選手の交代出場も大きかったんじゃないですか?

 

 本当は(スタメンで)出すつもりだったんですけど。前半のプランで本当は最初の20分以内に1点取っておきたかった。前半の20分までに2本くらいあったと思うんですけど、あれをやっぱり1点決めておけばもう少しゲームは自分たちのペースになったんじゃないかなと思います。

 

 カウンターが来てGK岸本(悠将)がファンブルして…。(プリンス関東の)前橋育英戦で0-3で負けた試合とまったく同じ流れで。岸本のミスで始まって。パンチングするのかキャッチするのか。もう少し俊敏性がないと厳しいということを本人が理解しないといけないと思います。これでプリンスで1試合、インハイで1試合ミスをしているわけで、これをどう修正していけるかということが重要だと思います。

 

ーー結果的にMF山下、MF福地と交代で入った選手が2ゴール決めましたし采配的には当たったと思いますが?

 

 ただやっぱり、本来であれば彼らは先発で出なければいけない選手たちですし、 FW伊藤(聡太)にしてもFW齊藤(慈斗)にしても、まだまだだと思いますし。今日は勝って周りに救われた部分があるかも知れないですけれど、決めるところで決めていればなんてことはない試合だったと思います。もう少しラクなゲームにできたところを、苦しいゲームにしてしまったのは2トップにも原因があると思います。

 

 準々決勝の大成戦では点を取っていますけれども、内容は良くなかったと思うんです。勢いだけでやっていて仲間に助けられて。ボランチにしても、今までやっていないMF押川(優希)を起用したり、マリークは戻ってきましたし、福地も戻ってきましたけれど、まだベストメンバーは組めない状態は厳しいですけどね。その分、周りが本当によく伸びてきてくれていると思います。MF並木(雄飛)にしてもMF前野(翔平)にしても、非常によくやってくれたと思います。前半は彼らがMVPですよね。

 

ーー課題もあるかも知れませんが、これでインターハイ出場が決まりました。能力的には全国でも十分戦えると思いますが?

 

 確かにそうかも知れないんですけれども、今のチームは、たくましさが少し足りないかなと。上手さはあるんですけど。2、3年前の選手たちは、春先が悪い、インターハイも悪い、でも第4コーナーまわって選手権の時には相当ハードワークできたので。今の選手たちは、上手いんだけどハードワークの部分が課題ですね。

 

 全国の舞台に出るだけではなく獲らないといけないので、それを達成するためには、もう2つくらいレベルアップしないと全国の強豪校にはまだまだかなわないんじゃないかなと思います。

 

ーー就任されてから「全国大会に出場させなきゃ」という思いを持ってこられたと思いますが?

 

 そうですね、7年かな?選手権で4回、インターハイで1回、「あと1勝」というところで勝てなくて。 1年目の選手権予選は1回戦で日本学園にPK負け。あれが衝撃的で。いきなり監督になって戸惑いはありましたけど、自分の心構えがしっかりしていなかったから、それが選手たちに伝わってしまい負けたんだと思いますし。今はもちろんそういうことはなく、選手たちも自信を持ってやってくれていると思うので。

 

 7年経ってみて感じたのは、選手たちを「伸ばす、上手くさせる、強くする」ためには、まず選んでもらわないといけないんだなと。中学生の子たちに「帝京に行きたい!」と思わせるようなサッカーをしない限り、この学校は復活しないんだなと。そのために2〜3年は惜しまず我慢しましたね、Tリーグでも「つまらないサッカーしてるな」と自分で思いながら。本当は縦に速いサッカーとかをやりたいんですけど、リーグ戦で勝ちを重ねて、つねに上位にいないと選手たちが来てくれないんですよね。そのうちにビルドアップもポゼッションもやりながら、縦に速いサッカーもやって。時間をかけてそうしているうちに「帝京に入って全国大会に出るんだ」という子たちが増えてきてくれて。

 

 そういう意味では三浦颯太や佐々木大貴(ともに現日本体育大学)が入ってきてくれたというのが大きいと思うんですよね。流通経済大柏Bとのプリンス参入戦(3-0で勝利しプリンス関東昇格)なんてベストゲームで。あれから「どうしても帝京に行きたい」とウチを選んでくれる子たちが増えましたし。今の帝京を作ってくれたOB、先輩たちは本当に財産ですよね。

 

ーー10大会ぶりのインターハイ出場を日比監督の代で成し遂げたことに意義があると思うのですが、その辺りはどうお考えでしょうか?

 

 誰がやっても勝たないといけないので 。そこは本当につらいですよね…。

 

ーータイムアップの瞬間は何を思われましたか?

 

 もうホッとしました。それだけです。とりあえず土俵に立てる、スタートラインに立てると。ただこれを続けないといけないと思いますし。

 

ーー全国大会に出ると優勝も期待されるかと思うんですけれども?

 

 まあインターハイは春までの成果の発表会みたいなものだと考えているので、今の段階でどのレベルにいるのかを測るうえでのいい経験だと思いますし、また来週からはプリンスリーグが再開しますが、メンバーが少しずつ戻ってきているので選手権に向けて良い準備もしないといけないなと思っています。

 

 3月のイギョラ杯で肉離れを起こしたMFマリーク(橋本 マリーク 識史)も戻ってきましたし、2月からいなかったMF松本(琉雅)、3月からいなかったDF前濱(就意)も戻ってきますので。

 

 プリンスリーグもありますし、コンディションの良い選手にもチャンスを与えないといけないので。5〜6年前の帝京には7、8人しかいい選手がいなかった。3年くらい前は10人ちょっとはいい選手がいた。でも今はその3倍くらいいい選手がいます。これは間違いないですね。そして帝京にはいいスタッフもいます。今の選手たちを伸ばしているのは松澤朋幸ヘッドコーチ、山下高明GKコーチたち。10人以上いる優秀なスタッフたちのおかげです。

 

 とりあえず今日は勝てて本当に良かったと思います。

 

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