不完全燃焼に終わった初めての選手
初めて挑んだ冬の選手権。初めての大舞台はホロ苦いモノとなった。あれから約5か月、ひと回りもふた回りも逞しくなり、“試合を決められる”選手へと変貌を遂げた。
5月29日に行なわれたインターハイ(全国高校総体)の鹿児島県予選決勝。すでに複数のJクラブが注目する神村学園の2年生MF、大迫塁が最終盤に大仕事をやってのけた。
宿敵・鹿児島城西を向こうに回し、前半からトップ下の位置で貪欲にゴールに迫る。後半はややトーンダウンしたが、1-1で迎えた延長後半5分、自ら持ち込んで得意の左足でゴールを狙った。「思い切って撃とう」。迷いなく振り切ったミドルシュートが決勝弾となった。
大迫は神村学園中の3年時にプリンスリーグ九州を経験。1年生の昨季は入学当初からチームのエースナンバーである14番を託されるなど、大きな期待を背負って戦った。正確な左足のキックに確かな戦術眼を持ち、守備でもハードワークを厭わない。将来性は誰もが認めるところで、世代別の日本代表にも度々招集されていた。
しかし、期待に応えられていたかと言うとそうではない。代表で安定感のあるプレーを見せた一方で、神村学園では裏方に徹するゲームが多く、ゴールやアシストでチームを勝利に導く活躍はあまり果たせなかった。
とりわけ、その課題を露呈したのが昨冬の高校サッカー選手権だ。攻撃力を買われ、本職のボランチではなくトップ下でプレーしたが、パフォーマンスはいまひとつ。2回戦の近江戦(1-0で勝利)で決勝弾を決めた相棒、U-18日本代表のFW福田師王(2年)と比べれば、インパクトを残せたとは言い難い。迎えた富山一との3回戦、0-1で敗れた一戦で、厳しい現実を突きつけられる。トップ下を任されるも、試合中に本職のボランチへ配置転換。理由は相手のプレッシャーに耐え切れず、ボールロストを繰り返していたからだ。
結局、後方からのゲームメイクに終始し、決定的な仕事は最後までできずじまい。不甲斐ない出来に、試合後はピッチに膝を突いて、人目を憚らずに涙を流した。
意識改革に着手。ゴールへの積極性を呼び覚まして──
当時から課題と言われていたゴールへの意欲。大迫と同じように入学当初から注目されていたMF松木玖生(青森山田/3年)は、誰よりも得点に拘り、1年時の選手権では4得点を奪ってチームの準優勝に貢献した。そうした先人たちの歩みを踏まえれば、ゴールで期待に応えることが注目選手の宿命。ただ、注目度が高まれば求められるハードルはより上がるだけに、結果を残す作業は一筋縄ではいかない。
いったいどのようにして、大迫は短期間で変貌を遂げられたのか。さまざまな事象で大いに刺激を受け、本気で変わろうとしたからだ。注目株にとって、ターニングポイントはふたつあった。
選手権で敗退した後、大迫は交流があった松木と話す機会を得た。そこで感じたのが、ゴールへの積極的な姿勢だ。
「玖生君が意識しているのは得点。それを(2得点に終わった)選手権が終わった瞬間から考えていたので、すごいなと思いました。その当時、自分は(選手権で上手くいかなくて)自信をなくし、ボランチでチームのために戦うことを考えていたんです」
松木の言葉で気付かされた大迫は、意識改革をスタートさせる。そして2月上旬。J1クラブでの練習参加を体験し、自分の方向性が間違っていなかったと確信する。
「(トレーニングなどで)前を向けるシーンも多かったなか、前線で得点を取ったほうが自分の評価にもつながるし、中盤で点を取る選手のほうが重宝されるとあらためて思いました。また、意外に自分のプレーができたことで、『Jの舞台で早くやりたい』という気持ちも出てきたんです。もっとなにが必要かなというのを考え、(課題の)得点力やフィジカル面の強化も含め、よりなにをやっていくべきなのかも見えてきました」
松木の言葉で目覚め、Jクラブの練習で得た手応え。シーズン開幕後もその感覚を失わず、トップ下で堂々たるプレーを見せてきた。今予選では初戦以降ゴールから遠ざかっていたが、大一番の土壇場で結果を残せたのは、明らかな成長の証だろう。
「トップ下に入ってからは、自分がチームを勝たせる意識が付いてきた」
昨季までは自分の適正ポジションに悩むこともあったが、もう迷いはない。
いまでは「前のポジションをやったほうがいい」と言い切り、今大会前も有村圭一郎監督に2列目での起用を直訴するほど、手応えを得ている。「自分はチームのバランスを考えて勝つためにプレーして、師王が得点を取るためにやっていた。だけど、トップ下に入ってからは自分がチームを勝たせる意識が付いてきたので、本当に良かった」とは本人の言葉。常に大迫を気にかけてきた指揮官もその成長に目を細め、さらなる期待を寄せる。
「大迫は今大会もいろんな葛藤を抱えていましたが、『前のポジションでやってみたい』と本人も話していた。後ろに下げるのは簡単だし、チームの勝敗も大事ですけど、本人が希望した2列目のポジションで最後までやらせたんです。これで本人も吹っ切れたと思います」
良い意味で我の強さが出てきた大迫。持ち前の技術力に得点力が加わった注目株が、夏の大舞台で主役を担う可能性は十分にある。
取材・文●松尾祐希
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
- 1 ブライトン&ホーヴ・アルビオン VS アーセナル 予想、対戦成績、最新情報2024/1/5
- 2 クリスタル・パレス VS チェルシー 予想、対戦成績、最新情報2024/1/5
- 3 トッテナム・ホットスパーFC VS リヴァプール 予想、対戦成績、最新情報2024/1/9
- 4 FCナント VS ASモナコ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/11
- 5 フラム VS ワトフォード 予想、対戦成績、最新情報2024/1/10
- 6 LOSCリール・メトロポール VS FCナント 予想、対戦成績、最新情報2024/1/5
- 7 マンチェスター・シティ VS ウェストハム・ユナイテッド 予想、対戦成績、最新情報2024/1/5
- 8 アーセナル VS ニューカッスル・ユナイテッド 予想、対戦成績、最新情報2024/1/8
- 9 レアル・マドリード VS RCDマヨルカ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/10
- 10 スタッド・ラヴァル VS レッドスターFC 予想、対戦成績、最新情報2024/1/11