プレミアリーグEASTで開幕6連勝。「Jリーグの日」の翌日に指揮官を直撃
青森山田を率いる黒田監督。28周年を迎えたJリーグについて持論を語ってくれた。写真:徳原隆元
今季の高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEAST(以下、プレミアEAST)で開幕から6連勝と首位をキープする青森山田。昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でプレミアEASTがなくなり、青森山田はスーパープリンスリーグ東北でプレーすることを余儀なくされたが、2年ぶりのプレミアで23得点・1失点という圧倒的な数字を叩き出し、ここまで優勝候補筆頭と呼ぶにふさわしい戦いぶりを見せている。
「どのチームも青森山田をどう倒そうとするか工夫をしてくる中で、我々には去年の経験に加え、責任と自覚を持った選手が揃っている。今年の選手たちは全てのタイトルを取る、全て勝つ気持ちでやっている。我々指導者としてもその選手たちの姿勢を尊重したいし、目指さない理由はありません。育成年代における強さ、トレンドを飛び越えて雪国・青森から全国に発信していく。それを選手たちが望んでいるし、育成年代のサッカーをより変えていきたいと思っています」
6節の流通経済大柏(5月16日)との高体連対決を3-0で制した後、黒田剛監督がこう口にしたように、青森山田の選手たちはエース松木玖生や宇野禅斗、ストライカーの名須川真光と言った昨年を経験している技術レベルの高い選手たちが、屈強なフィジカルと走力、そして球際の強さを発揮して攻守において強度の高いプレーを見せているからこそ、全勝という結果を生んでいる。
「テクニカルな部分はもちろんですが、スピード、フィジカル、メンタルのすべてにおいて戦っていける選手になっていかないと、日本のサッカーとして良くないんだというメッセージを送っていきたい」(黒田監督)
流経大柏戦の前日の5月15日は、『Jリーグの日』。28年前のこの日に国立競技場で行なわれたヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)vs横浜マリノス(現・横浜Fマリノス)との一戦でJリーグが開幕した。
28周年を迎えたJリーグに対し、1995年の監督就任から26年に渡って青森山田を指導し、柴崎岳(レガネス)、室屋成(ハノーファー)、菊池流帆(ヴィッセル神戸)ら多くのJリーガーを輩出している黒田監督。育成年代への想いを受けて、今のJリーグに対する見解を聞いてみると、こう口を開いた。
「今のJリーグはかなり発展しているわけでも、衰退しているわけでもなく、これから良くなるためにみんなで考えて、工夫しようとしている段階だと思っています。だからこそ、みんなもがき苦しんでいる。その中で我々ができることは、育成年代を盛り上げ、上で戦える選手を増やすこと。日本が世界のトップ10に行くためには今のままでいいのかという、クエスチョンは誰もが持っていると思います。
日本の特徴を聞かれると、多くの人が『俊敏性があって、堅実で勤勉』と言うのですが、もちろんそれはありますが、海外を相手にリスタートやヘディングで負けていいかというとそうではないですし、全てにおいてやり方によっては戦えると思うのです。もちろん海外の強国はフィジカルレベルも高さも凄いものを持っているのは間違いありませんが、では、そこに対して真っ向勝負をするのではなく間合いをとったり、タイミングを図ったり、相手の呼吸を崩して競り合えば勝てることもある。
今年の我々のチームは180cm以上の選手がGK以外はいない状態ですが、セットプレーから点が取れるし、競り合いでも十分に戦える。身体的ディスアドバンテージはトレーニング次第では克服できることを我々が証明していきたいと思っています」
「うまい選手がいかにあらゆる局面で戦えるか。そこが世界に近づくために必要」
今季のプレミアリーグEASTでは開幕から6連勝を達成。23日には互いに無傷で勝ち続ける清水ユースとの一戦を迎えた。写真:安藤隆人
青森山田はただパワーで押し切るだけでもなく、技術を前面に出して戦いきるだけでもない。両方を当たり前のように出来ることに本質があると黒田監督は説く。
「育成年代のベクトルというのをきちんと定めることで大きく変わると思います。フィジカル、スピード、ボールや勝利への執着心というベースがある中で、テクニカルでうまくて、特徴を持った選手が入ってきたら日本はもっと良くなると思います。うまい選手がいかにあらゆる局面で戦えるか。そこが世界に近づくために必要であることを、改めて見返す28年だと思っていますし、節目にできたらなと思っています。そのために青森山田がどれだけ刺激になるか分かりませんが、メッセージ性を発信していきたいなと思います」
育成とプロを分断せず、ひとつの流れとして組み込んできたからこそ、Jリーグは発展してきた。その中でJユースと高体連という2つの大きな組織の壁を壊したプレミアリーグ、プリンスリーグも発展だけでなく、頭打ちにならないように変化を加えてきた。だからこそ、それをこれからも継続し、工夫を重ねながら発展させていくべきだ。
プレミアリーグは発足からちょうど10周年でもあり、黒田監督が言うように今年を日本サッカー全体においての節目の年として、Jリーグ30周年を迎える時によりレベルアップを遂げるための礎にしていかなければいけないと切に思う。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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