0-9大敗は市立船橋に何をもたらしたか? 青森での屈辱…名門校に生まれた「ここから這い上がろう」の決意
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「帰りの青森空港で、市船のジャージを着ている時に周りの人の視線が気になってしまった」

 

 

 内容的には決して悪くはなかった。だが、またしても勝点3を掴み取ることはできなかった。

 

 プレミアリーグEAST4節、1分け2敗の成績で横浜FCユース戦に臨んだ市立船橋だったが、前半に訪れた二度の決定機をモノにできず、スコアレスで迎えた90分にセットプレーから痛恨の失点。アディショナルタイムに速攻を仕掛け、MF大我祥平のクロスをGKがこぼしたところをMF坪谷至祐がゴールに蹴り込むが、これはその前にファウルがあったという判定でノーゴール。0-1でタイムアップの時を迎え、今季3敗目を喫した。

 

 4戦勝ちなし。名門・市立船橋にとって今季のプレミアEASTは近年にないくらい苦しい出だしとなった。昨年もコロナ禍における変則レギュレーションとなったプレミアリーグ関東では1勝もできず最下位。降格がある今季は開幕戦でFC東京U-18に0-1で敗れると、第2戦のアウェー・青森山田戦では0-9という記録的な大差で敗れた。

 

「前半を0-3で折り返して、後半に4点目を取られた時に『相手の方が圧倒的に上だ』とピッチ内で感じてしまった。そこから集中しよう、これ以上失点しない様にしようとしたが、立て直せずにずるずると失点を重ねてしまった」とCB金子光汰が語ったように、悪夢としか言いようがない90分間だった。

 

 このニュースは瞬く間に全国に知れ渡ってしまったが、大敗を喫した過去はもう覆せないし、終わったことをいつまでも引きずっていては、前に進めない。大事なのはショッキングな敗戦を喫した後にこそ、真価が問われるターニングポイントがあるということ。

 

 この歴史的大敗を受けて、3年生がどういう態度を示すかによって、チームの行く末は大きく左右される。そこで責任転嫁が生まれたり、内輪もめが起きたりすれば、その一部始終を下級生たちが見て、3年生への信頼関係が崩れてしまう。それこそがチームにとって最悪のシナリオだった。では、市船はどうだったのだろうか。

 

「帰りの青森空港で、市船のジャージを着ている時に周りの人の視線が気になってしまった。『大敗したチームだ』と言われているんじゃないかと思った。本当に悔しかったけど、ここで3年生が下を向いたら絶対にダメだと思った。みんなで話をしたし、それぞれの思いを忘れないようにサッカーノートに書いて、『ここから這い上がろう』と思えた」

 

チームミーティングで3年生が下級生に意見を求めたワケ

 

 

 守備の中心でもある金子、CB小笠原広将、キャプテンのFW平良碧規を中心に、すぐに選手ミーティングを行なった。その際に3年生は下級生からの意見を積極的に求めた。1年生FWである郡司璃来がこう証言する。

 

「試合中、どんなに失点を重ねても、金子さんや小笠原さんが後ろからずっと大きな声で僕らを鼓舞し続けてくれた。その姿を見て『絶対に気持ちを切らせちゃいけない』と思ったし、ミーティングで僕が『もっと雰囲気を良くしないといけないと思う。一人ひとりが練習から声を出していかないと変わらないと思います』と言ったら、3年生は『それは本当に大事なことだから、もっとみんなで盛り上げていこう』と言ってくれた。僕ら下級生の意見を分け隔てなく聞いてくれるし、言わせてくれる雰囲気を作ってくれるのでありがたい。みんなで変えていこうという意識はありますし、尊敬する3年生のために頑張ろうと思いました」

 

 金子曰く、彼らが1年生の時は3年生にモノを言えない雰囲気があったという。改善点を見つけても、それを言い出せないジレンマを経験したことで、「自分たちが3年生になったら下級生が意見を言いやすい雰囲気を作ろう」と話していた。大敗を喫してもその意思はぶれることなく、より活発な意見交換に打開策を見出した。それに対し、下級生も「3年生は結果が出なくても、文句も言わずに練習に一生懸命取り組んでいる。その姿勢は見習わないといけないし、貢献したいと強く思う」(郡司)と、現状を共に打破しようとモチベーションを上げている。

 

 試合内容もこのミーティングを機に良化。3節の浦和ユース戦はスコアレスドロー、4節の横浜FCユース戦でも優位に試合を進めていた。冒頭で触れた通り、90分にセットプレーで失点をするというショッキングな展開になっても、金子と平良を中心に全員が声を切らさず、アディショナルタイムには猛攻を仕掛け、ファウルとなったが一度は相手のゴールネットを揺らしたのである。

 

「最後は『幻のゴール』になったのですが、僕らはこれまで1点先に取られたら取り返せないという状況が続いていたので、あそこでネットを揺らすことができたのは大きな収穫だと捉えています。反省するべきところは反省をし、かつ必要以上に落ち込まず、ポジティブな雰囲気を持って、次以降も全学年一丸となって戦ってきたいです」

 

 常勝・市船の精神は今の選手たちの心の中にしっかりと宿っている。これがある限り、彼らはこのままでは終わらない。市船の逆襲はここから始まるだろう。

 

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

 

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