ついに坊主撤廃・スマホ解禁…それでも名門・国見が継承する伝統とは 【大久保嘉人は何と言った?】
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 脈々と引き継がれた伝統を変えることは、なかなか難しいことだ。

 

 今年、ある変革を行った指導者が高校サッカーにいた。国見高校サッカー部を率いる木藤健太監督だ。

 

 言わずもがな、国見が高校サッカー界に残してきた実績は改めて説明する必要もないだろう。選手権優勝6回(戦後最多タイ)、インターハイ優勝5回を誇り、これまで多くのJリーガー、日本代表選手を輩出してきた。

 

 そんな名門・国見のイメージの象徴の1つといえば「坊主頭」だろう。黄と青の縦縞を背負った選手たちの姿は、その強さも相まって威圧さえも感じさせてきた。しかし、同校OBでもある木藤監督は就任3年目にして、1967年の創部から続いてきたこの「伝統」を廃止した。さらに2年前から禁止してきた携帯電話の使用も認めたのだ。理由はこうだ。

 

「全国大会からも長く遠ざかっている状態であるにも関わらず、伝統ばかりを守っているような気がして、『強豪』という変なプライドだけが残っているように映ったんです」

 

 

「何が必要かという視点は常に持っていました」

 

 木藤は島原半島で生まれ育ち、地元・国見高に進学。現役当時はレギュラーとして活躍し、1学年下にはあの大久保嘉人がいた。近畿大学を経て、当時J2だったアビスパ福岡に加入すると、モンテディオ山形を経由して計6年間のJリーガーとして過ごした。2010年からは地元の三菱重工長崎サッカー部でプレーし、12年に現役を引退。翌年、長崎県の公立学校教員試験を受け、17年にコーチとして母校に帰ってきた。

 

「昔から自分にとって何が必要かという視点は常に持っていました。高校時代も『言われたことを全部やっていていいのか?』とずっと考えていましたね。丸刈りに関しては、当時から意義を見出せていませんでしたし、『坊主だから強い』と思ったことは一度もない。小嶺(忠敏)先生が植え付けてくれた基礎技術とハードワークを大切にしたサッカーと、『相手に必ず勝つ』というメンタリティーがあったからこそ、強い国見があると思っていました」

 

 時に、小嶺監督とは意見の食い違いで言い合ったこともあるほど、当時から自ら考えることを習慣としていた木藤は、高校を卒業してからも「国見の伝統」に疑問を抱いていたという。そして、指導者として母校に赴任すると、全国大会から遠ざかっている状況を目の当たりにした。

 

 小嶺監督が離れた国見は、低迷期の中にいた。かつては21年連続出場という記録を樹立した選手権には10年間、インターハイも2010年大会以来、出場することができなくなっていた。

 

「もう国見は、昔のようにトップの選手が集まる場所ではない。だからこそ来てくれた選手をきっちりと育てる。大事なのは、人としての中身。情熱、やる気、実直さ。これこそが小嶺先生が植え付けた本物の国見のメンタリティーで、そこに坊主や携帯電話を持つ、持たないは関係ないと思ったんです」(木藤監督)

 

 坊主の文化が悪いと言っているわけではない。それぞれの意思で行っているのであれば、それは意味があることなのだろう。何事も強制しては、自主性が育たない。大事なのは一つ一つの行動に目的意識を持つことだ。

 

「たまに『選手を甘やかしている』と言われますが、それは違って、その規則で満足している方が甘やかしている気がします。そもそも我々は結果を出すために坊主をなくしたわけではありません。あくまで僕の中ではフラットな状態に戻ったにすぎないので、本当にこれからだと思います。これから我々の真価が問われてくると思います」(木藤監督)

 

主将GK緒方(17歳)の言葉

 

 当初は1つのことに打ち込む覚悟の象徴であった坊主が、いつの間にか形骸化してしまっていたことは高校生のリアルな言葉がよく現している。今季キャプテンを務め、U-18日本代表候補でもあるGK緒方要(17歳)はこう語る。

 

「正直、丸刈りの意味は僕らの中でもよく分かっていませんでした。ただ、『国見はこうだから』という固定観念でやっていた」

 

 長崎市出身の緒方が国見を選んだ理由は「GKコーチがいて、サッカーをする環境が素晴らしかったから」。坊主、携帯電話禁止のルールは「仕方がないという思いで入った」という。

 

 選手たちが受け継がなければいけないのは、小嶺監督が植え付けた勝者のメンタリティーであり、戦う姿勢である。時代へリンクするために、木藤監督は変革に乗り出したのだった。

 

 木藤監督は当然、反発も覚悟した。しかし、周囲の反応は意外なものだった。木藤監督の9歳年上で、国見OBでもある内田利広総監督は「私自身もずっと疑問に思っていましたが、応援してくれる街の人たちの想いや高校サッカー界におけるイメージなどを考えると、なかなか踏み切るのは難しかった。木藤監督が強い意志と自信を持って臨んでくれているので、我々はそれを全力でサポートしようと思っています」と賛同。国見の黎明期の象徴となった高木琢也からも「現場が思うようにしろ。気にするな」という後押しをもらった。

 

 そして後輩・大久保はこんなことを言っていたという。

 

「正直、自分が選手の時も丸刈りは『古いな』と思っていた。それが未だに携帯禁止とか丸刈りでやっているのかと。今の時代、『丸刈りだから国見に行かない』という選手も多くいるだろうし、ようやく時代について来たか」

 

 徳永悠平や徳重健太(V・ファーレン長崎)ら名だたるOBたちも「ようやく変わった」と声を揃えていた。

 

新1年生にも“意味”を伝える

 

 “新生”国見は木藤監督のもと、ポゼッションやビルドアップからの崩すサッカーを目指している。しかし、その根底にあるのは脈々と受け継いできた「球際の戦いで上回る」「正確にトラップやキックをする」「ハードワークを厭わずに相手に走り勝つ」という伝統だ。そして「地域の人たちから応援されるチームであること」。それは国見のユニフォームを身にまとう責任でもある。

 

 その変革の効果は髪型だけでなく、少しずつ目に見える形で現れ始めている。

 

 昨季は13年ぶりとなる“高卒Jリーガー”が誕生。FW中島大嘉が北海道コンサドーレ札幌に加入した(ちなみに彼は丸坊主がトレードマーク)。今季は九州新人大会を14年ぶりに制して九州王者に輝いた。

 

「髪を伸ばせるようになっても、ルールを守らなくなってしまっては意味がないし、逆に国見という伝統が崩れてしまうと思う。自由にしたからこそ、責任があるので、新1年生たちにもきちんとその意味を説明して、それが受け継がれていくようにしたいと思います」(緒方)

 

 ユニフォームの雰囲気は少し変わった。それでも黄と青の縦縞は変わらない。伝統を継承するための「変革」。国見は覚悟の一歩を踏み出した。

 

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