写真:安藤隆人
選手権決勝は仲間たちの姿を画面で見つめることしかできなかった
選手権優勝校の看板を提げてサニックス杯ユースサッカー大会に出場をした山梨学院。谷口航大と石川隼大のダブルボランチ、FW茂木秀人イファインなど優勝メンバーに注目が集まる中、筆者は背番号5の187cmの大型CB小林士恩に目を奪われた。
圧倒的なハイボールの強さ、対人の強さはもちろん、予測と判断力が非常に魅力的だった。見えている世界が広く、相手の動きを見ながらも、味方の動きやスペースの感知をすることができる。だからこそ、パスやインターセプトで得たボールを、インサイド、インフロント、そしてインステップとバリエーションあるキックで、正確な長短のパスを繰り出す。裏へのフィード、足下にピタリと届く低弾道のミドルパス、サイドチェンジ、そしてショートパスと状況を捉えたパスで攻撃の起点となるプレーは見ていて面白い。
それだけのポテンシャルを持つ彼だが、10年ぶり2度目の選手権優勝の瞬間は山梨学院の講堂でチームメイトなどとテレビで見ていた。
昨年はAチームとBチームを行き来するような状況で、怪我や武器としている縦パスのミスも多く、周りの信頼を掴むまでには至らず。選手権予選ではベンチ入りをしたが、結果的に選手権はメンバー外。決勝で大画面に映る仲間たちの姿をただ見つめることしかできなかった。
「悔しい思いと、自分たちの先輩が戦っているところをスタンドで見たかったなという2つの思いがありました。あの大きなスタジアムでみんなはどういう気持ちでプレーをしているんだろうと考えながら見ていました」
小林は画面から目を背けなかった。「僕があの場に立てなかったのは、他の選手よりも足りない部分が多かったから。それを受け止めて次につなげようと思っていた」と、改善点を見つけて磨き続けようと決意していた。
そして新チームとして臨んだサニックス杯。両膝のコンディションが思わしくなく、遠征自体の帯同も危ぶまれた。だが、長谷川大監督やトレーナーと話し合って、「高卒プロを目指しているので、もしコンディションが上がった時に少しでもプレー出来るようにここに帯同させてもらいました」と、出られないことも覚悟をして九州にやってきた。
伸びしろは十分! コンディションを戻してプロ内定を勝ち取れるか
グループリーグ初戦の矢板中央戦、第2戦の鹿島アントラーズユース戦、第3戦の佐賀東戦は出場しなかったが、第4戦の大分トリニータU-18戦でついに出番がやってきた。
「僕の長所のひとつがパス。第一優先は最前線の選手につなぐことを考えていて、(茂木秀人)イファインや佐竹祥太の動き出しを見て、ディフェンスラインの裏に落とすパスや、足下につけるパスを狙います。そのコースが切られていたら、中に入ってくる両サイドハーフにパスを出したり、ボランチが前向きに受けられるパスを出して、相手の前への矢印を折るパスを意識しています」
この言葉通り、彼が繰り出す縦パスやサイドチェンジは面白いように繋がった。両膝はテーピングで固められており、裏への対応はまだ万全ではない様子だったが、鋭い出足でボールを奪っては、すでに出しどころを把握した上で、素早く正確な縦パスを打ち込んだり、逆サイドに蹴ると見せかけて同サイドの選手にミドルパスを打ち込んだりと、彼のパスの精度は非常に高くて効果的だった。試合は1-2で敗れたが、攻撃の起点となるパスは大きなインパクトを残した。
それ以降はスタメン出場を果たすも、チームは東福岡とドロー決着した以外は全敗と結果を出せなかった。チームにとっても、彼にとってもほろ苦い大会になったが、前方向にパスを蹴り分けられる股関節の可動域の広さと両足のキック精度、視野の広さに加え、CBに必要な高さと後方でオーラを放つ彼の存在は、視察に来ていたJクラブのスカウトの目には止まったのではないだろうか。
「これからも積極的なプレーをしていきたいと思いますし、コンディションも整えて、もっといい状態でプレーを見てもらえるようにしたいと思います」
伸びしろは十分。ポテンシャルを見せつけたからこそ、万全の状態に戻して、さらに躍動をする姿を見てみたい。彼を見ることができただけでも、「ここに取材をしにきた価値があった」と思えるほど、これからが楽しみなCBなのだから。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
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高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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