興国高校サッカー部
勝利至上主義ではなく育成。結果より成長を本気で突き進む高校サッカー部がある。大阪府天王寺区にある興国高校だ。2020年、一挙に5人もの学生がプロに進み注目を集めた。U18日本代表候補のMF樺山諒乃介ら4人がJ1の横浜F・マリノスへ、FW杉浦力斗がJ2の金沢へ入団する。冬の全国大会は大阪府予選の準々決勝で敗退。全国に縁のなかったチームからプロ選手を輩出するレベルに成長した。
同校サッカー部を率いる内野智章監督は、初芝橋本高時代(和歌山)に全国高校選手権で4強を経験。高知大を経てJFLの愛媛(現J2)に入団したが1年で退団。2006年に興国高校に就任した。「勝つことも大事だが、それと同じくらい、可能性の高い選手を育てること」を重視している。
2020年度の部員数は270人以上で、チームは8チームに分けられ昇格・降格が随時行われる。スペインへの遠征を取り入れ、育成に力をいれている。そんな内野監督に全国大会に出場できなかった2020年度のチームと育成理論について聞いた。
「内容がなくて勝つ」ではダメ
──2020年度のチームを振り返っていかがですか?
昨年のチームは非常に真面目でした。ですので、1年を通して上達したと思います。ただ一方で、上達して余裕ができてしまったという面がありました。簡単にパスを出せばいいのに、余裕がありすぎて相手に隙を与えてしまう。一生懸命走って、体をはってハードワークはするんですが全員がファンタジスタになってしまった分、チームとして機能しない部分がありましたね。繰り返しますが、彼らは非常に真面目に取り組んでいました。
ただ、ある一定のゾーンにまでいったことから、さらにその上にいくことが簡単ではなかったんですよね。一生懸命やっている分、怒ることもできず難しかったです。偉そうに聞こえるかもですが、昌平高校(埼玉)にも、セレッソ大阪にも勝って、勝ち続けているチームだったのですが、衰退する時って、誰かが悪いのではなく歯車が狂いだすんだなと思いました。そういう意味では、勝ち続けている青森山田(青森)はすごいなと思います。
──青森山田は全国大会で準優勝でした。
昨年末、新チームで初めて青森山田と練習試合をさせてもらいました。トップ選手が抜けたBチームでしたが、出場選手もベンチで控える選手もすごく勝ちにこだわっていることがわかるんですよね。
例えば、前半は青森山田が太陽を背にしていました。キーパーの背中に太陽を持つ形ですね。だから、こちら側は太陽が目に入る。ゴールキーパーからはじまるキックは、全て高く蹴り上げるハイパントが選択されていました。我々は太陽が目に入りますし、こぼれたボールに対しては青森山田の方がフィジカルに秀でているので、彼らがボールキープできていました。
その選択がすごいなと思ったし、守備に対する選手たちの能動的なコミュニケーションもクオリティが高かった。開始早々からベンチもアグレッシブにコーチングをしているし、レフェリーや対戦相手に対して、公式戦のようなテンションで挑んでいました。
これで選手権に行けないBチームなんだと。指導者として、非常に勉強になりましたね。常日頃から彼らもポゼッションや技術などの細かなこだわりがあると思いますが、「勝つ」ということに対して徹底しているなと思いました。
──青森山田と興国は違う?
青森山田は良い意味で「絶対に勝たなければならない」で、僕らは「負けていい試合はないよ」という表現の違いでしょうか。僕らも「内容が良かったけど負けた」というのはダメです。「絶対に勝て」がファーストではないですが、「内容がなくて勝つ」のはダメです。「内容をもって勝て」ですね。
例えば、前半を1-0で勝って折り返しても、後半は引かずに2点目3点目4点目をとることを選びます。一方、青森山田では「絶対王者として、このゲームに勝つ」があるので、勝負に対する追求の仕方が異なります。とても勉強になり、選手らがすごく刺激を受けていました。
正しい使い方を教えながら危険性も学んでいく
──昨年度はコロナがあって大変でした。興国ではYouTubeに自主練の様子を選手がアップしSNSで発信していました。その指導の背景は?
発想はシンプルで、「今の子たちがそういったことに敏感だから」です。TikTokにのせていいよとも言っていました。閲覧数が伸びることで、承認欲求が満たされる部分があるなら、それが「モチベーション」になっていいんです。外出もままならない、指導者が近くにいない、一人でトレーニングする際に、「モチベーション」をどう保てるか。自分の動画を見てもらうことがエネルギーになるなら肯定します。私も確認できますしね。それをクラブのオフィシャルSNSで紹介します。
──危険ではないかという声もあるのでは?
リスクはもちろんあります。多くの学校が「携帯禁止」「SNS禁止」としています。いじめにつながる可能性もあってナーバスになるテーマです。でもこれは私見ですが、未成年として最後の教育機関である高校が携帯を禁止にすることは、自動車教習所に通わずに運転するようなもの。彼らが未成年ではなくなった時、何の指導もないままSNSを扱うことになるんです。
それが、SNSで誹謗中傷やトラブルが起こる原因の一つだと思うんですよね。高校でSNSの使い方を指導することが必要かと。ただし、僕の場合はサッカー部の監督で、その関係性から選手をコントロールしやすいこともあるでしょう。その中で、正しい使い方を教えながら危険性も学んでいく。ポジティブなことを経験させながらネガティブなことを指導してあげることが必要だと思っています。
また、大学進学の学生もいたので、自分のプレイ動画を作ってYouTubeにアップするというのもさせました。自分が出ている試合の映像を集めて、切り取って動画を作成する。なかなかのクオリティで作っていますよ。それを自身のツイッターから限定公開でYouTubeに公開する。オープンにしたい人は自己責任でとやらせていました。
今年度もコロナの影響は少なくないなか、新チームはすでに始動している。SNSを活用した指導は今後も継続する予定だという。プロに進む学生にとっては、入団はまだ通過点。これまで以上に厳しい競争に勝てないと若くして引退もありえる。スポーツ選手特有のスポットライト症候群により、引退後に他の仕事や家庭で活躍できなかったら……。そうならないことを内野覚監督は指導しているようにも見えた。自覚をもった未成年ほど、頼もしいものはない。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
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※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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