5年で3度の選手権、関東一の小野貴裕監督が見据える「1個でも上」
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今日幕を開ける99回目の選手権、関東一高(東京B)が3年ぶりに冬の舞台に帰ってくる。

 インターハイは15年から4年連続で出場し、15年は4強に進出。選手権は16年度の初出場から2年連続出場も果たし、いいサイクルに入っていた中で19年度は全国の切符を掴むことができなかった。それでも、MF類家暁(3年)やDF菅原涼太(3年)らが1年生でインターハイでプレーし、小野貴裕監督が「満を持して迎えた3年目」に、関東一にとって3度目の選手権の切符を手にした。

 2020年、指揮官が期待を寄せる代が最高学年になる矢先に新型コロナウイルスの感染が拡大、活動を制限・休止することを余儀なくされた。しかし、その“空白の期間”が指揮官にとってはターニングポイントになったという。

「個人的な感覚としてはこの5年くらいはずっとギリギリの精神状況でした。勝てなかったこの2年間で焦っていたこともないですし、逆に勝っていたときも興奮していたというよりも起きていることを消化していくうちにあっという間に過ぎてしまっていました。それがあのタイミングに時間が止まって、自分の頭が整理できる時間がやっとできました」

 チームの活動が再開されるまで約半年、勝っていたときと勝てなかったときを紐解いていった小野監督。その一方で、選手たちには毎日活動記録をつけさせ、紙に書いたものを、スマホで撮って送ってもらい、状況を把握することに努めた。そして、ステイホーム中の自宅トレーニングでも、趣向をこらしたという。

「フィジカル的に一番落ちるものを考えるとやっぱり筋力かなと。うちは(プロトレーナーの)木場克己さんに見てもらっているので、体幹のトレーニングをやれる土壌はありましたから、上級生優先でコーンとかメディシンボールといったトレーニング器具を、接点を持たないように受け渡しを工夫して配りに行ったりもしました。家にコーンがあったら邪魔だったと思うんですけど無理を言って……」

 6月後半になり、トレーニングが再開されたときには小野監督の胸に特別な想いが去来した。

「生徒たちからすると確かに悔しい思いはたくさんあったと思いますけど、同じ目標をもって集まれることがどれだけありがたいか。そこから意識しているのは、生徒たちに伝えることをできるだけ明確にすることと、多くを伝え過ぎないということ。せっかく真っ白になったところからはじめているのに、いきなり多くを言ってしまうのはよくないと思ったので」

「体を戻す7月、動き出せる8月」を経て、9月13日の東京都1部リーグ・FC町田ゼルビアユース戦(○2-1)で20年度初の公式戦を戦い、10月には選手権予選がはじまった。

「フィジカル的にどこのチームとやっても確実にやり合えていましたし、先に足が止まることはなかったです。例年のことですけど、体がちゃんと動くようにっていうことは計画的に組んでいました。『ちょっときついかもしれないけど、ここは負荷かけていくよ』っていうふうに継続的に。選手権予選中には個別の選手のコンディションを上げたいと木場さんに依頼して、ピンポイントでコンディションが上がってきたりとか」

 関東一は都予選の全5試合を20得点2失点で駆け抜けた。

「(選手権出場は)3年ぶりなんですけど、見方を変えると5年で3回。回数としては少ないとは思いませんし、これは5年間で在籍してくれた選手たちの成果だと思っています。この3回目の出場は僕の中ではすごく大きい。2020年でキリもいいですし、私も今年40歳になったので、いろいろなものが節目の年になりました」

 特別な1年を経て、選手権へと臨む小野監督の想いにも変化が訪れた。 

「全国大会でこれぐらいを狙うなんて一回も言ったことがないんですよ。ずっとそう考えてきてたんですけど、全国に出てきた時点で力のあるなしに関わらず、やっぱりどのチームも目指すべきはてっぺんなのかなと。都を代表して出ていくわけですから、1個でも上を狙う。1個でも上を狙うことを繰り返せば当然てっぺんになるので。胸を張って全国優勝だなんて言わないですし、そんな力があるとは今思ってはいないんですけど、やっぱり現実的な路線で考えるとベスト8ぐらいのところにはちゃんと入っていきたいなっていうふうには思っています」

 過去2大会で超えられなかった2回戦突破、そしてその先へ――。関東一は本日12時5分、山辺高(奈良)との1回戦を迎える。

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