【学法石川高校・監督インタビュー】 創部25年目で掴んだ全国への切符。 夢の舞台はゴールではなく、新たな挑戦へのスタート!!
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福島県代表として初の全国へ出場する

 

これまであと一歩のところでライバルに敗れてきた学法石川だったが、ついに宿願を果たした。本大会では同じく初出場の創成館(長崎)と対戦する。 写真:サッカーダイジェスト

 

いなだ・まさのぶ/1977年生まれ、大阪府出身。現役時代は高槻南高と大阪体育大でプレー。卒業後は大阪学院大などでコーチを務め、06年より現職となる。今予選では尚志を準決勝で下し、悲願の選手権初出場を決めた。
写真:徳原隆元

 

 県予選準決勝。幾度となく挑み続けてきたライバル校からついに勝利を掴んだ。湧き上がる歓喜の中、「まだ何も果たしてはいない」と、常にひたむきにサッカーに打ち込んできた選手たちの気持ちが緩むことはなかった。

 

 初めて挑む全国の舞台。選手権はゴールではなく、さらなる高みを目ざす挑戦の場となる。初の選手権へ向けて稲田正信監督に話を聞いた。

 

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過去に例のない状況の中で掴んだ選手権への切符

 

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、選手権予選が始まるまでリーグ戦の5試合しか公式戦を戦っていません。ただ、それはどのチームも同じで、強化する時間も、環境も限られていたので、何が起こるか分からない、例年以上に強豪校が順当に勝つ保証がないと
感じていました。

 

 経験不足から慌ててしまい、初戦で足をすくわれる。それが私たちに起きても不思議ではありませんでした。そのことは選手たちに何度も伝えましたが、やはり初戦は緊張していましたね。最後は、最大の山場だった尚志との準決勝、聖光学院との決勝を乗り越えて
全国への切符を掴んでくれました。

 

 今予選の4試合を通じ、選手たちは心技体で成長したと感じています。技術だけではなく、精神的にも大人になってくれた大会でしたね。

 

 個人的にも、今回の優勝は特別なものでした。大阪から福島に来て14年目、たくさんの支援をいただき、大学の恩師にもお世話になってきましたが、一度も決勝で勝てず、ずっと悔しい想いをしてきました。自分の力不足を感じることもありました。必ず全国大会に出場して、支えてくれた方々、学校に恩返しがしたかった。ですから優勝した瞬間はうれしい想いよりもホッとした気持ちでした。

 

 何よりうれしかったのは、決勝にかつての教え子やその保護者の方々が応援に駆け付けてくれたことですね。私の一番の宝物です。

 

コロナ禍で引き出された 選手たちの自主性

 

 

 活動自粛中も私たちの学校はオンラインで授業を実施していました。自宅生は練習に来られませんし、県内の寮生も実家に帰省中。自主練習は自分のできる範囲でやるように伝え、彼らに任せました。

 

 一方で県外の子は寮へ残る他に選択肢はなく、敷地の中で自主練習をこなす日々でした。そんな状況でしたから、モチベーションの維持に一番気を使いました。

 

 特に活動が完全に止まり、インターハイの中止が発表された4月からの2か月間が難しかったですね。去年のインターハイ県予選決勝で尚志に延長後半のラストプレーで得点を奪われ、全国の切符を逃すという苦い経験から、今年こそはと非常に高いモチベーションがあった分、選手たちの落ち込みは相当だったと思います。寮で泣いていた選手もいましたから。

 

 サッカーができない、というのは初めてのこと。試合で活躍したい、プロになりたい、それぞれの夢を追い掛けられる日常がない状況ほど厳しいものはありません。それでもチームが大きく成長したのが夏休みでした。学校の許可を得て静岡県の御殿場で昨年度の選手権王者・静岡学園やプリンスリーグ東海のJFAアカデミー福島U-18と練習試合をさせてもらったんですが、県内では感じられない全国レベルの巧さと意識の高さを経験しました。

 

 主力選手を欠いた静岡学園に3 -5で敗れましたが、トップチームが揃ったJFAアカデミー福島U-18には2-2と粘ることができた。私たちにとっては気持ちを高め、自信を深める唯一無二の経験になりました。

 

 良い状態のまま、9月に県リーグの5試合を戦い、10月に県外のチームと4試合ほど練習試合を組みました。ここが最後の調整の場。選手たちには「まだまだ成長できるぞ」と言い続け、1日の練習でもっと強くなれると信じて取り組ませました。

 

 また、私たちの学校はハンドボールや野球も強いのですが、クラスメイトの中に、最後の試合をできずに引退した他の部活生がいたんです。戦う機会すら奪われてしまった仲間の姿を見て「できないとは言っていられない」という想いが表に出てくるようになりました。それが自覚につながり、精神的に強くなった点も子どもたちの成長に大きな意味を持ちましたね。

 

チームで多くの時間を共有 強い結束も生み出せ

 

 

 昨年の夏休みに参加したフェスティバルの懇親会で、分析アプリ・SPLYZA Teamsの話を聞き、私たちも分析用の映像編集が課題にあったので、試しに今季から導入しようと思っていました。タイミング的には良かったですね。

 

 今年はコロナの影響で、活動できない、試合数も少ないという状況だったので、SPLYZA Teamsにかなり時間を掛けられましたし、チーム全体に浸透させることができました。

 

 私たちの場合は、1試合の分析をする際に7分ごとに区切って班毎にチェックをさせるだけではなく、3人1組で課題や良かった点を発表させていました。伝えた内容を全員でディスカッションし、グループトークをすることで、チーム内での議論が活発になりましたね。公式戦が多かったらここまでできていなかったかもしれません。携帯電話で映像を確認できる点もプラスで、押さえておきたいポイントをタグ付けできます。試合前に見せる映像も簡単にピックアップし、動画にまとめることができました。

 

 実際に今回の選手権予選決勝では、対策として練習試合で聖光学院と対戦した際に出た問題点を映像で見せ、試合当日は逆に良かったプレーを集めた動画を見せて、モチベーションを高めていました。

 

初出場に満足することなく全国でも勝利を目ざす

 

 私たちは全国でも一番下からのスタートです。でも「初の全国で良い経験をしながら楽しめた」だけではダメ。福島の代表として戦い、地元の人が「つまらなかった」と思うような試合だけはしたくないし、そのために、大会が開幕するまでしっかり準備したい。

 

 初戦を突破できれば、飛躍する可能性は十分にあります。出場するからには上を目ざしたいですね。

 

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初の全国へ挑む選手たちに訊くーーー

 

■大津平嗣(3年/DF/写真左)
選手権のためだけに準備をしてきた。インターハイが中止になったけど、全員が選手権に向けて想いを共有できた。SPLYZA Teamsは自分のスマートフォンで見られるので便利。タグ付けの機能とかを使えば、見返したい場面をすぐに確認できるので使いやすいです。

 

■倉島聡太(3年/FW/写真中央)
今年のチームは守備の意識を高く持ってトレーニングから球際や強度に拘っていたので、そこは他校よりも優っていた。SPLYZA Teamsは、いつでもどこでも見られるから便利。寮の部屋でも仲間と試合映像を見ながら、ゲーム内容の振り返りをできる環境ができた。

 

■衣川佳佑(3年/MF/写真右)
今予選は、ライバルである尚志に敗れたOBの想いを背負って、予選を戦えたので、選手権に出場できた。分析に関しては去年まで全員で取り組んでいない雰囲気を感じていたけど、SPLYZA Teamsを導入してひとりずつ意見を伝える場ができ、議論が活発になった。

 

取材・文●松尾祐希 写真●徳原隆元
取材協力●学校法人石川高等学校、株式会社SPLYZA

 

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