異例J内定5名の興國高がオール3年生で臨んだ最後の公式戦…指揮官が語った無念の想いとチームの財産
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「なんでこの学年でこんなことに」歴代チームの中でも手応えは断然良かったが…

 

スーパープリンスリーグ関西順位決定戦で、興國高は大阪桐蔭高にPK戦の末に勝利。最終戦を勝利で締めくくった。写真:安藤隆人

 

 12月5日にJグリーン堺で一斉開催されたスーパープリンスリーグ関西・順位決定戦。7・8位決定戦はJリーグ内定選手5人を擁する興國と大阪桐蔭の一戦となった。

 

 多くのチームが1、2年生を中心にした新チームで臨むなか、興國はオール3年生でこの一戦に臨んだ。

 

「もっといろんな人に今年のサッカーを見てもらいたかった。今年の3年生は人間的にも素晴らしい選手たちばかりで、サッカーのクオリティも高かった。正直、『なんでこの学年でこんなことになるんだろう』と思ったくらい。だからこそ、今日もオール3年生で締め括らせたかった」

 

 こう内野智章監督が語ったように、最終戦は今年のチームをけん引してきた最上級生たちに、『華を持たせる』形となった。

 

 今年は新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、インターハイが中止となり、リーグ戦もレギュレーションが大きく変わった。プレミアリーグWESTに所属していたガンバ大阪ユース、セレッソ大阪U-18、ヴィッセル神戸U-18、京都サンガU-18がプリンス関西に加わり、14チームが7チームずつに分かれ、1回戦総当たりの末にそれぞれのグループで同一順位のチームが順位決定戦を行なう形となった。

 

 公式戦の数が大きく減ったのはどのチームも同じだが、興國にはMF樺山諒乃介、GK田川知樹、DF平井駿助、MF南拓都(12月3日に内定発表)の4人が横浜F・マリノスに内定し、FW杉浦力斗がツエーゲン金沢に内定しており、チームの活動とは別にそれぞれの内定先で経験を積んでいた時期もあり、「全員が集まることができたのは10月で、3月以来のことでした」となかなかチームとして活動することができなかった。

 

「今年の春、コロナ禍の前にスペイン、フランスに行ったときに手応えの質が歴代のチームより断然よかったんです。毎回同行してくれているコーディネーターの人も『今年は次元が違う』と言ってくれていたほどでした。だからこそ、インターハイ、プリンスで彼ら自身も興國のサッカーを見せたかったと思うし、僕ももっといろんな人に今年のサッカーを見てもらいたかった」

 

「それを後輩たちに見せてくれたのが彼らの残した最大の財産だと思う」

 

来季の横浜入団が内定している樺山。華麗なボールさばきでゴールに迫った。写真:安藤隆人

 

GK田川は2本のPKをストップし、勝利を大きく引き寄せた。写真:安藤隆人

 

 選手権予選は準々決勝で大阪桐蔭に敗れ、2年連続の選手権出場は叶わなかった。そのショックは大きかったが、Jリーグ内定者以外の3年生レギュラーの多くが強豪大学への進学を決めるなど、それぞれが将来に向けて道を決めて羽ばたこうとしている時だからこそ、最後の公式戦は3年生で飾りたい。内野監督の激励とも言えメッセージを受け取った選手たちは、モチベーション高くピッチに立った。

 

 すでに金沢で出番を得続けている杉浦は不在だったが、マリノス内定の4人はスタメン出場。GK田川、平井と中島超男のCBコンビを軸にした質の高いビルドアップから、豊田柊弥と湯谷杏吏のダブルボランチがゲームを作り、トップ下の樺山が個の打開力を発揮してゴールに迫った。

 

 35分には左サイドを突破したDF児山雄基のクロスをファーで南がヘッドで合わせるが、右ポストを直撃。その後はボールポゼッションで優位に立ち、樺山と南も果敢に個人技を見せるが、90分を通して大阪桐蔭の堅い守備をこじ開けることができなかった。

 

 スコアレスドローで90分間を戦い終え、勝負はPK戦に。ここでGK田川が完全に読み切って2人のキックをストップ。3年生の高校最後の公式戦を勝利で締めくくった。

 

「Jリーグ入りが決まった5人をはじめとして、人間的にも彼らの努力とか、サッカーに対する取り組みはとてつもない財産になったと思っています。樺山は、公式戦はもちろん、紅白戦、トレマッチでも一番走る。ピッチ外でも1、2年生だけでなく、中3の選手に対してもいろんな話をしてくれたり、個別に相談やアドバイスをしてくれたりと、本当に監督のようなことをして、実際にプレーで見せてくれる。杉浦も努力の才能は凄いし、人の話をきちんと聞ける。平井、田川、南は後輩の仕事を率先して手伝ったり、紅白戦のラインズマンなどもするんですよ。大学に進学する選手たちも努力する姿勢は凄かったし、試合に出ている選手がとてつもなく努力をしている。それを後輩たちに見せてくれたのが彼らの残した最大の財産だと思う」

 

 今年は目に見える結果を残せなかった。だが、3年生が示したものはそれ以上に大きなものだった。サッカーがうまいだけでは上に行けない、不断の努力が実を結ぶということをピッチ内外の姿勢で示してくれた。

 

「だからこそ、後輩たちがそれを引き継いで、興国の新たな伝統にしていってほしい」

 

 未曾有の1年を堂々と戦い抜いた3年生への感謝と、新たな興國高校サッカー部の歴史の積み重ねに向けて。内野監督の目は来季へ向けられていた。

 

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

 

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