「今年はかなり厳しい」の声を力に…前年度全国4強の帝京長岡が3年連続の選手権出場!主将が明かす強固な一体感
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「周りから力がないと言われても、僕ら3年生がしっかりと自立すれば」

 

 

 昨年度の選手権ベスト4の帝京長岡が、3年連続で新潟県を制し、全国の舞台の切符を手にした。

 

 同じプリンスリーグ北信越に所属するライバル・新潟明訓を相手に、立ち上がりから得意のポゼッションで揺さぶると、25分にゴール前のこぼれ球に反応した1年生MF、廣井蘭人が先制弾を叩き込む。一気に畳み掛ける帝京長岡は、29分にもMF石原波輝の右からのクロスをFW葛岡孝大がヘッドで合わせ、2−0とした。

 

 後半はエース反町太郎を軸にした新潟明訓の反撃に対して、1年生GK佐藤安悟、松村晟怜と三宅凌太郎の2年生CBコンビを中心に最後まで集中を切らさず、クリーンシートで3連覇を達成した。

 

「去年ほど技術はないのは分かっていましたが、チームとして『俺たちは強い』と信じて、結果で周りに証明しようと話していた。もう去年と比べられるのは仕方がないので、逆にモチベーションに変えてやろうと思っていました」

 

 試合後、3年生ボランチ川上航立はこう口にした。昨年のチームは谷内田哲平(京都サンガ)、晴山岬(町田ゼルビア)、吉田晴稀(愛媛FC)、プロを断って明治大に進んだ田中克幸と、全国トップクラスのメンバーを揃え、前述したように選手権ベスト4に輝いた。

 

 川上は前回、唯一の2年生レギュラーとして選手権のピッチに立っていた。今年は前述したタレントたちがごっそり抜けたことで、「今年はかなり厳しくなる」と周りから囁かれ、それは彼の耳にも入っていた。

 

「今年は1、2年がたくさん試合に絡んでくる。周りから力がないと言われても、僕ら3年生がしっかりと自立してチームを引っ張れば、下級生に能力の高い選手がたくさんいるのでチームとして昨年に負けないチームになると思っていました」

 

 俺たちはやれる――。自分たちが自分たちを信じ切れなければ、周りの評価通りになってしまう。それを川上は誰よりも理解していた。

 

「こういう気持ちになれたのは、やっぱり昨年の先輩たちの影響が大きいです。僕自身、昨年は3年生のサポートを受けて伸び伸びとプレーをさせてもらったし、3年生が作り出す一体感が凄かった。今度は僕が1、2年生をサポートする番。責任を持ってやっています」

 

帝京長岡の伝統のエースナンバーを引き継ぐも「僕は14番タイプじゃないと思っていた」

 

 

 川上はキャプテンとして常にチームの先頭に立ち、試合では献身的な守備とパスセンスを駆使して、攻守の中枢を司った。川上が偉大な先輩たちから引き継いだのは、チームのために戦う、自分の力を発揮するというメンタリティだけではなかった。谷内田が背負っていた帝京長岡の伝統のエースナンバー14も、彼の背中に引き継がれた。

 

「僕は14番タイプじゃないと思っていたし、期待されている1年生の廣井やMF桑原航太などがつけると思っていたし、僕は昨年の6番のままだと思っていた」

 

 彼の言う通り、帝京長岡の14番は下級生の期待の存在が背負い、卒業してからまた新たな下級生に引き継がれるパターンが多い。3年生で引き継ぐのはどちらかと言えばレアケースだ。しかし、古沢徹監督は14番選びに迷いはなかった。

 

「今年は去年のチームと比べられ、かつこれまでの先輩たちが成し遂げられなかった3連覇も懸かっていると言う、プレッシャーの大きな代。だからこそ、そのプレッシャーを跳ね除けて前に進んでいかないといけないからこそ、その象徴として航立しかいない」

 

 絶大な信頼を持って川上に14番を託した。そして、彼はその責務を真摯に全うし、チームを3連覇に導いた。
「一体感は絶対に最後まで大事にしないといけない。今日の試合もずっと『最後は気持ちだ』とみんなに伝えていた。これで全国の切符を掴んだので、次は全国制覇を本気で狙っていきます」

 

 昨年塗り替えた歴史を、さらに塗り替える。プレッシャーを力に変えていくチームの先頭に川上の存在がある限り、これは決して夢物語ではないだろう。

 

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

 

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