溢れる涙を抑えきれず…前橋育英vs桐生一、県予選3回戦で実現した「群馬頂上決戦」の明暗
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プリンスリーグ関東同士の対決が早くも予選3回戦で実現

 

 

 選手権群馬県予選3回戦でまさかの『頂上決戦』となった。プリンスリーグ関東に所属する前橋育英と桐生一が、10月18日に太田総合公園サッカー場で激突した。

 

 今年の選手権予選はインターハイ予選が中止になったことで、2月に行なわれた新人戦の結果でシードが決められる。前橋育英が3回戦で常盤に0-1で敗れたことでシード権がなくなり、桐生一は準々決勝で前橋商に2-3で敗れたもののシード権を確保。結果として桐生一のゾーンに前橋育英が入ったことで、プリンス関東同士の対決が3回戦で実現した。

 

 両チームにとってまさに大一番。「まずは育英との試合が大きな山場になると思っていたし、全員がそう思っていた」と、試合前に桐生一の田野豪一監督が語れば、前橋育英の山田耕介監督も「やっぱり3回戦で重要な試合が待っている」と以前の取材で口にしていた。

 

 いざ決戦の時。立ち上がりに勢いよく襲い掛かったのは桐生一だった。

 

「立ち上がりの20分で点を取ろうと思っていた。育英はボール保持してくるので、僕らはボールを奪ったら高いラインの裏を狙ってのカウンターを徹底しました」

 

 キャプテンでボランチの落合遥斗が語ったように、3-4-2-1の布陣を敷く桐生一は、ポゼッションを仕掛ける前橋育英に対して、しっかりとポジションをとりながら、縦パスや斜めのパスに対して複数の選手が鋭い出足でプレスを仕掛ける。奪っては落合の展開力、浅田陽太と寳船月斗の2シャドーの突破力、1トップの入澤祥真の運動量を駆使して、質の高いカウンターを繰り出した。

 

 11分、桐生一は右FKを得ると、落合が「FKに対して相手の守備のラインが高いことは分かっていたので、そこに早いボールを入れればチャンスになると思っていた」と、右足でディフェンスラインとGKの間に巻いてくるライナーのキックを送り込むと、これに反応した浅田が右足アウトサイドで合わせて先制。これで活気付いた桐生一は13分に入澤がセンターライン付近からロングシュートを狙い、前橋育英ゴールを脅かした。

 

 反撃に転じたい前橋育英は、トップ下に入ったヴィッセル神戸内定のMF櫻井辰徳を起点に攻撃を構築しようとするが、桐生一の連動したプレスの前に苦しむ。それでも櫻井は34分にドリブルからミドルシュートを放つが、コースが甘くGKに収められた。

 

 そして前半アディショナルタイムに試合は再び動く。桐生一は左からのクロスをペナルティエリア内で入澤が胸トラップから鮮やかなボレーシュートを突き刺し、2-0。

 

 後半、前橋育英は櫻井をボランチに下げて、よりボールに触る回数を増やしたが、その効力が発揮される前に痛恨の3失点目を喫してしまう。43分、左CKを得た桐生一は落合の正確なキックをMF金沢康太が押し込んだ。

 

「この試合にかけて2週間取り組んできた。でも結果に繋がらなくて…」

 

 

 3点差になり、もう攻めるしかなくなった前橋育英のエンジンがようやく掛かった。だが、3点のリードはあまりにも重すぎた。

 

 60分、MF熊倉弘達の縦パスを受けたFW鈴木雄太がドリブルから鮮やかなスルーパス。これに抜け出したFW中村草太が飛び出してきたGKを交わして1点を返す。後半アディショナルタイムには鈴木が2点目を挙げるが、届かず。3-2で桐生一が前橋育英の連覇を6で止めて準々決勝進出を決めた。

 

「全国優勝という目標を持って育英に入ってきたし、この試合にかけて2週間取り組んできた。でも結果に繋がらなくて、本当に悔しいし、唯一の後悔です。もう少しこのメンバーでやりたかった」

 

 試合後、前橋育英の櫻井は溢れる涙を抑えきれなかった。それほど両者にとってこの一戦は重要であり、高校サッカー人生を懸けた戦いであった。それは泣き崩れる前橋育英の選手たち、勝利して感極まる桐生一の選手たちの姿を見れば一目瞭然であった。

 

 だが、まだ3回戦。桐生一の田野監督は前橋育英に勝利したことに喜びを表しながらも、自戒をするようにこう口にした。

 

「狙いは全国で勝つことであって、育英ではない。怖いのは来週以降です。決勝は自然と気合いは入りますが、準々決勝、準決勝が重要。この試合でも選手たちは本当に伸びたと思うし、こういう試合をもっと選手たちに経験させてあげたいので」

 

 明暗はくっきり分かれた。3回戦で実現した『群馬頂上決戦』は、ここでどちらかが敗れ去ってしまうことがもったいないと思えるほど、ハイレベルで白熱した激戦であった。

 

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

 

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