サッカーは1人でやるものじゃない。11人、控えメンバー、そしてベンチに入れなかった選手たちの思いすべてを背負って戦うものだ――。
そんな、熱血マンガのような言葉を思い出す人が多いだろう時期が来た。
全国高校サッカー選手権の都道府県大会が各地で開幕している。新型コロナ禍によって開催が不安視された時期もあったが、10月初旬時点では開催の方向で進んでいる。
そんな中で、ネット上に駆け巡った、びっくりニュースがあった。
「高校サッカー8人で初戦突破『次も8人』」
主役として扱われているのは、静岡県立下田高校である。
なぜの連続、現場に行ってみることに
名優・三國連太郎の母校でもある同校は、3年生が受験勉強に集中するため、インターハイ予選限りでの引退を決断。それによって2年生による新チームが発足したものの、チームに在籍する8人だけで公式戦に挑むことになった。それでも選手権初戦は先制されながらも1-1に追いつき、PK戦の末に勝利。あまりにストーリー性がありすぎて、そりゃ話題になるわけである。
しかし……なぜ8人で1勝できたのか?
そもそも、何で11人で戦うことすらできないのか?
ってかフォーメーション、どうすんの?
その真相を知りたい――ならば、実際に行ってみないと。あえてこの週末はJリーグでも海外サッカーでもない、高校サッカーの真実を目にしよう。ということで8人対11人の現場を直撃取材した。
10月3日、会場は金太郎さんで有名な足柄山のふもとにある小山高校で、対戦相手もその小山高だ。キックオフ時点から3人少ないうえにアウェイでの試合。その時点で、へっぽこ選手だった筆者なら気持ちが折れている……。
校舎から興味津々で見ている生徒もいる中で、キックオフの笛が鳴り響く。最初は布陣などが見やすいように、高台の位置に移動してみることにした。
気になるフォーメーションの表記は……
目視とデジタル一眼レフを使って確認する限り、フォーメーションは「4-2-1」である。誤植でもなんでもない。
対する相手の小山高は4-4-2。ボールを持った瞬間――というか支配率という概念があれば、余裕の80%越えなんだが――ほぼ自動的に両サイドバックが高い位置を取ってくる。
それに対して下田の中盤は2枚、ボランチといえばいいのかインサイドハーフと言えばいいのか表現しがたい立ち位置なのだが、サイドに振られるたびに必死にボールサイドへとスライドするため、何度も15mくらいスプリントする。その姿を見るだけで泣けてくる。
対する相手の小山高は4-4-2。ボールを持った瞬間――というか支配率という概念があれば、余裕の80%越えなんだが――ほぼ自動的に両サイドバックが高い位置を取ってくる。
それに対して下田の中盤は2枚、ボランチといえばいいのかインサイドハーフと言えばいいのか表現しがたい立ち位置なのだが、サイドに振られるたびに必死にボールサイドへとスライドするため、何度も15mくらいスプリントする。その姿を見るだけで泣けてくる。
おまけに小山の最終ラインは1人か2人余らせて、下田の1トップの寺嶋洸キャプテンを見張っている。小山の立場を慮れば勝利への最善手を尽くすのは当然のことだが、下田にとってはなんという厳しすぎる状況……。
「サイドに振られることが多かった」
「相手が7、8人攻撃にかけてきつつ、サイドに振られることが多かったので、こちらは人が動かないといけなくて、セカンドボールへの反応が苦しくなりました」
寺嶋キャプテンのコメント通り、試合は開始直後から小山の攻勢が続いた。自陣左サイドをドリブル突破で崩されると、ゴール中央の混戦を押し込まれて先制点を許す。その直後に左サイドから上げられたアーリークロスが逆サイドへ。すると“大外”から完全フリーで走りこんだサイドの選手の折り返しを、ゴール前のFWに詰められる。序盤にして立て続けの2失点である。
日々のトレーニングではパス・トラップ・ドリブルなどの基礎技術、そして対人プレーをできる限り磨いたそうだが、寺嶋キャプテンいわく「トレーニングで最大できるのは3対3で、実際のサッカーを想定した練習はできず、どうしても局面でのプレーに限られてしまいます」とのこと。ピッチの横幅を広く使われてしまったら、日々のトレーニングの成果も何もあったものではない。
下田の選手たち、このまま崩れても致し方ないのでは――と思って見ていたら、救いの時が訪れる。飲水タイムだ。
フリーになることを覚悟で素早く寄せる
この日、小山町の隣にある御殿場市の最高気温は22.8度だった。とはいえ日が差すと暑さを感じる気候だったこともあってか、20分過ぎに給水タイムが設けられたようだ。下田にとってみれば、わずか1、2分とはいえ、時間が止まる。
肉体を休められるとともに、戦術的な修正を図れる時間でもある。識者から“VARや給水タイムは、ボールを持たれているチームに優位に働くことがある。休む時間が自動的にもらえるから”という話を聞いたことがあるが、まさにその言葉通りの現象が起きた。チーム全体が修正を施し、決定機を作らせなかったのだ。
1トップの寺嶋が時にはボランチ並みの位置までプレスバックしたかと思えば、サイドバックのような位置でボールを奪取している……もちろんほかの6人のフィールドプレーヤーも素早い寄せで相手に自由にさせず、完全フリーになることは覚悟で逆サイドに展開させないようにしていたのだ。
試合後、窪田陽輔監督はこのように語っている。
「前半の飲水タイム以降に限って言えば、相手を無得点に抑えることができています。チームの立ち上がり、相手の激しいプレッシャーに上手く対応するという部分ができれば、チャンスはあったかなと思います」
このコメントは決して強がりではないほどの立ち直りを見せた下田イレブン……ではなく「下田エイト」。何とか2点ビハインドで40分間を折り返し、ハーフタイムに突入した。
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※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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