藤島監督は「彼らにしかできないプレーがある」と激励
来季のJリーグ入りが内定している埼玉・昌平高校サッカー部の4選手が10月9日、同校での記者会見に臨んだ。
主将のMF須藤直輝とMF小川優介がJ1鹿島アントラーズへ、FW小見洋太がJ2アルビレックス新潟へ、MF柴圭汰はJ3福島ユナイテッドへの加入が内定。昌平は前年度の第98回全国高校選手権で初めてベスト8に進んだが、4選手とも全3試合にフル出場している。
緩急自在のドリブルで敵陣を切り裂く須藤は、鹿島とサンフレッチェ広島から誘われた。「伝統あるクラブでやれることを誇りに思う。スペイン・リーグでのプレーと日本代表が目標」と抱負を語る。質の高い攻撃を組み立てるボランチの小川は、「鹿島からのオファーを自信に変え、感謝の気持ちを忘れずに頑張りたい」と笑顔で話した。
埼玉の高校生が鹿島入りするのは、1993年の武南高校・室井市衛以来で、同じ高校から複数の加入となると94年の森岡隆三と橋本研一(神奈川・桐蔭学園高校)、2013年の植田直通と豊川雄太(熊本・大津高校)に続く3例目となる。
守備の背後に進入するのが巧みな小見は、J2水戸ホーリーホックからも打診を受けたが、「新潟の試合を見てJ2で一番いいサッカーをしていると感じた。日本一のストライカーになりたい」と意欲を示した。中列後方で攻守のバランスを取る162センチの柴は、「自分が活躍することで、小さい選手に夢と希望を与えられる選手になりたい」。なお福島には、1学年先輩の鎌田大夢が今季加入している。
藤島崇之監督は「4人とも身体は小さいが、彼らにしかできないプレーがある。自分の特長をJリーグの舞台で出して活躍し、愛される選手になってほしい」と激励した。
昌平は2016年から5年続けて合計9人、大学経由では新潟医療福祉大の和田幹大が今季、J3のY.S.C.C横浜に加入しており、輩出したJリーガーは合計で10人にのぼる。
10月11日に開幕する第99回全国高校選手権埼玉大会の決勝トーナメントには24日の3回戦から登場し、2年連続4度目の優勝を目ざす。
選手権予選で4強入りすれば、8年連続の新記録
初出場した2016年のインターハイで4強に進んだ陣容から、松本泰志(アビスパ福岡)と針谷岳晃(ジュビロ磐田)が初のJリーガーになると、翌年は佐相壱明(長野パルセイロ)が続く。18年のインターハイ4強の立役者である原田虹輝は川崎フロンターレへ、日本代表MF鎌田大地の弟・大夢は今春、福島ユナイテッドに加入した。
そして今季のチームから一気に4人のプロ選手を誕生させるなど、昌平はいまや人材の宝庫と言える。
1979年創立の東和大昌平時代は、県大会にすら進めない弱小だったが、校名を変えた07年、青森山田高校でコーチ、青森山田中学で監督を務めた藤島監督が着任すると、8年目の14年に全国高校選手権埼玉大会で初優勝。これまでに同大会を4度、インターハイ予選を3度、関東大会予選を1度、新人大会を5度制し、短期間で埼玉高校サッカー界の本流となったのだ。
指揮官は就任以来4-2-3-1の陣形を変えず、ボールを保持する戦い方を貫く。「ボールを握る時間が長くなるほど得点の可能性が増え、失点のリスクは減る。うちの戦術はボールを失わないことが基盤」と、マイボールを大切に扱わせている。
11年9月に完成した人工芝グラウンドのほんの一部を使い、12対12に時間を割く。狭い地域での反復練習が、チームの特長である少ないタッチでのパス交換と高いボール支配率を可能にし、同時に技術と判断力を向上させた。ここ数年は、とりわけ緩急自在のドリブルを駆使できるMFが数多く育っている。
12年に中学生のクラブチーム、FC LAVIDAを創設。昌平のコーチ陣が指導に当たり、有望株を“昇格”させる下部組織制も好素材を輩出する一因だろう(小見と小川はLAVIDAの出身だ)。昌平のコーチでもある村松明人監督は、「ボール扱いを大事にし、個の長所を伸ばす指導をしています。彼ら4期生は優秀な選手が多かった」と述べる。
総勢12人もの指導者を抱え、09年からは藤島監督の父・信雄さんもコーチ陣に加わった。日本代表の国際Aマッチ64試合に出場し、主将も務めた豊富な経験と知識を伝えてもらえる利点も大きい。
その年の主力が翌年にはポジションを失うこともしばしばで、才能豊かな人材が次から次へと現われる。元々高い水準にあった選手を鍛え上げ、圧倒的な個の力と組織力で全国区の強豪へと栄達した。
全国高校選手権埼玉大会では、前回まで7年続けての4強入り。今年も準決勝へ進んで8年連続となれば、全国大会の出場校が現在の48校に定着した83年度の第62回大会以降、大宮東高校を抜いて埼玉の最長記録となる。昌平の隆盛はとどまることを知らない。
取材・文●河野 正
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※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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