ユース取材ライター陣が推薦する選手権予選注目の11傑vol.1
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 熱戦展開中の第99回全国高校サッカー選手権都道府県予選の注目選手を大特集。「選手権予選注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣に選手権予選注目の11選手を紹介してもらいます。第1回は(株)ジェイ・スポーツで『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当する傍ら、東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史氏による11名です。

 

 土屋雅史氏「まずは関係者の皆様のご尽力で、無事に高校選手権予選が開催されることを本当に嬉しく思います。今回も私は普段から重点的に取材させていただいている東京のチームで、11傑を選出してみました。あるいは他の地域の選手たちより、ボールを蹴る期間や場所も制限されてきたかもしれない彼らが、この憧れの舞台で思う存分暴れまわってくれることを願っています」

 

以下、土屋氏が推薦する11名

 

GK村上健(國學院久我山高3年)
1年時には入学前の船橋招待U-18サッカー大会でも、既にトップチームで起用されていたように、大きな期待を寄せられていた村上が、定位置を掴んだのは昨年の全国総体から。以降は精度の高い左足のキックをビルドアップに生かしつつ、大事な局面でのビッグセーブも武器に久我山のゴールマウスに君臨。昨年度の選手権2回戦でも、数的不利でもつれ込んだPK戦で相手のキックをストップした上に、最後は7人目のキッカーとして自身で激戦に終止符を打つなど、“村上ショー”を演じてみせた。中学時代に在籍していたFC東京U-15深川のチームメイトは、同じGKの熊倉匠(山梨学院高)や佐久間賢飛(市立船橋高)、稲村隼翔(前橋育英高)、安斎颯馬(青森山田高)など全国の強豪で活躍中。今回の選手権ではより大きな舞台で彼らも羨むような “村上ショー”を再演するために、まずは激戦が予想される東京Aブロックの連覇に向けて、守護神は静かに出番を待ち侘びている。

 

DF菅原涼太(関東一高3年)
まだ入学して数か月しか経っていなかった1年時の全国総体では、レギュラーとしてベスト16進出に貢献。その経験から「全国で勝つ事の難しさを感じ、日々のトレーニングの一つ一つの質にこだわるようになりました」と高い意識を持って、この2年余りの日々を過ごしてきた。関東一のセンターバックらしく、持ち味は長短のパスの使い分けも含めた足元の巧みさだが、「プジョルの気迫のこもった守備やキャプテンシーが憧れで、モチベーションを上げたい時にプレー集を見たりしています」とも。テクニックとパッションの融合にも余念がない。この2年間は遠ざかっている選手権の東京代表奪還に向けては、「目標はもちろん東京で優勝して、全国での最高成績を残すことです」と力強い言葉に続けて、「関東一高は野球が強いと言われていますが、サッカーも強いんだということを証明したいです」と本音もチラリ。“サッカーのカンイチ”を牽引するディフェンスリーダーには要注目だ。

 

DF岡田知也(東海大高輪台高3年)
「球際、空中戦の強さ、シュートブロック、闘争心、状況を見ながらの積極的な攻撃参加が自分の強みですが、中でも闘争心は誰にも負けない自信があります」と言い切るファイターは今年のキャプテン。昨シーズンも総体予選までは定位置を確保していたものの、選手権予選を前に負傷離脱。チームの決勝敗退をスタンドで見つめることしかできず、「とても不甲斐なく、情けなく、申し訳ない気持ちでいっぱいでしたし、ピッチに立った選手よりも悔しい想いは強かったです」とその時を振り返る。今後は指導の道を志すため、「指導者として生きていくために、自分自身の経験としても東京制覇、そして日本一の景色を見て、誇れるサッカー選手としての最後を迎えたいです」ときっぱり。決勝のラストプレーで敗れた1年前の光景を脳裏に刻み込み、「東海大高輪台サッカー部として自覚、責任、覚悟を背負って、新しい歴史を作るために戦います」と熱く言葉を紡いでいる。

 

DF馬場跳高(堀越高3年)
昨シーズンから最終ラインで公式戦に出場し続けてきたレフティは、「去年は正直自分の満足の行くプレーができない1年でしたけど、それでも試合に出られることは当たり前ではないし、チーム全員の想いを背負って戦う責任はとても感じました」とメンタル面の変化を強調。最高学年となった今年は、さらにその意欲を高めている。サイズはそこまで大きくないものの、粘り強い守備力に加え、「正確なロングキックや戦術理解度、最後まで走り負けない体力にも自信を持っています」と自己分析。対人の強さや両足の精度を誇る、マルセイユの長友佑都をお手本に研鑽を積んできた。惜敗した昨年度の選手権予選準決勝の帝京戦から、1年間思い続けてきた舞台への再挑戦に「今まで自分たちを支えてくださった全ての人に結果で恩返しできるように、目の前の試合を全力で戦っていきたいし、高校サッカーの最後で自分のプレーでチームを勝たせられるように頑張ります」と決意も固い。

 

MF戸田岳滉(成立学園高3年)
もともとは大阪の出身。中学時代は興國高のセンターバック中島超男(3年)と同じアイリスFC住吉でプレーしていたが、父親の転勤に伴って東京の高校を探していたタイミングで「偶然チームを見たんですけど、プレイヤー1人1人のレベルが高くて、何より楽しそうにサッカーをしていて『ここでサッカーしたい!!』と強く思って」成立学園高の門を叩くと、2年の夏過ぎから存在感を発揮。自らも「ボールに関わりながらゲームをコントロールしつつ、ここぞという所でゴールに直結するようなプレーができる所です」と話す特徴を生かした中盤の仕切り屋として、チームをコントロールしてきた。開催中のT1(東京都1部)リーグで5戦4勝と好調を維持するチームに対しても「今年は突出した人がいない分、1人1人がチームのために攻守において闘うことができると思います」と手応えを口に。ゼブラ軍団が15年ぶりとなる冬の全国切符を勝ち獲るためには、この司令塔の躍動が欠かせない。

 

MF森尾波月(駒澤大高3年)
都内屈指の大所帯である駒澤大高の中で、1年時からトップチームに関わるなど、高い評価を受けてきた長身ディフェンダーもいよいよ最高学年に。今シーズンはボランチ起用も多く、参考にしているという山口蛍(神戸)のような「セカンドボールの回収やボール奪取が特徴です」という自身のストロングが生かされているようだ。「3年生だけでも部員が70名近くいるので、それだけの想いを背負うことはプレッシャーでもありますが、チームメイトの多さは駒澤の強みでもあるので、気負い過ぎず、力に変えていけるようにしていきたいです」とグループを代表して試合に出る意味も感じつつ、チームが苦しい時に声掛けを意識するなど、責任感も増している様子。一昨年の冬の全国は、ケガもあって出場機会を得られなかっただけに、「その悔しさを最後の選手権にぶつけて、まずは都大会を勝ち抜き、全国大会では駒澤の最高成績であるベスト8を越える成績を残したいです」と鼻息も荒い。

 

MF澁谷薫(東久留米総合高3年)
同校の大先輩に当たる中村憲剛(川崎)やグティを参考にした、長短を使い分けるパスを武器に、昨シーズンも紅白戦ではサブ組の中心選手としてレギュラー組を圧倒する力を見せながら、自身も「メンタルの弱さが出てしまい、力を発揮できない不甲斐なさがありました」と振り返るように、トップチームの試合では持ち味を発揮し切れずじまい。選手権予選の準決勝と決勝、さらに全国大会の1回戦でもベンチには入ったものの、出場機会は最後まで訪れず、「チームとしての躍進は嬉しかったですけど、個人としては悔しい部分が多かったです」と素直な感情を明かす。公式戦の数もなかなかこなすことができず、今年のチームには全体的な技術の高さを感じながら、「手応えはまだ感じられていないので、勝ち上がっていく中で掴んでいきたいです」とも。悔しい経験を力に変えてきた澁谷のプレーが、ディフェンディングチャンピオンが目指す連覇へのカギを握っている。

 

MF宮崎海冬(帝京高3年)
選手権予選では過去5年間で4度の決勝敗退。全国帰還まであと一歩の所まで迫りながら、なかなか駒沢での勝利が遠い帝京において、間違いなく今年のキーマンはボランチの宮崎。「相手がどこへパスをするかは、ボールを受ける前に相手の目を見て、『こっちに出すな』と予測して取るようにしています」と口にする守備面の貢献に加え、下級生が大半を占めるチームの中で、攻撃の配給役として担う役割も重要なピース。昨年、今年と高円宮杯プリンスリーグ関東で強豪と肌を合わせてきたことで、「試合をやっていくたびに少しずつ『自分もやれないことはない』と思っていて、チャレンジャー精神を持ってできています」と自信も確実に付いてきている。甲府でプレーしている兄の宮崎純真とはLINEでやり取りすることも多く、「『こうしたらいいぞ』とか、いろいろと励ましたりしてくれるのでありがたいです」とのこと。11年ぶりの全国切符を掴み取るため、カナリア軍団のキャプテンが違いを見せ付ける。

 

MF永吉葉太(実践学園高3年)
「基本的なことを徹底し、実践の全員攻撃・全員守備を体現できるようになりました」と今年のチームに手応えを感じている永吉は、憧れている中田英寿のように、運動量を生かして攻守に関わり続けることのできるリンクマン。自粛期間中も「誰よりも高いモチベーションで、長所を維持するために毎日走るようにしましたし、短所でもあった逆足のキックをひたすら練習したことで、この期間を良いものにできたと思います」とさらなる自身のレベルアップに取り組んできた。兄は2年前に国士舘高で東京代表として選手権に出場した永吉風太(現・国士舘高学生コーチ)。「兄弟とも選手権の舞台でプレーをすることが夢で、兄が出場したことに関しては嬉しさもありましたが、やっぱり『兄には負けたくない』と思っていたので、悔しかったです」と素直な感情も。昨年の選手権予選はピッチで敗退を経験しただけに、“兄超え”となる全国での勝利を手繰り寄せるべく、まずは東京制覇を真剣に狙う。

 

MFファン・チャンジュン(東京朝鮮高3年)
小さい頃からの目標は従兄弟でもあり、高校のOBでもあるリャン・ヒョンジュ(早稲田大4年)。「相手との駆け引きやドリブルの運び方は常に参考にしています」と話しつつ、「僕もサイドでのドリブルからカットインや足元の技術は、誰にも負けない自信があります」と自ら言及するように、偉大な先輩を彷彿とさせるアタッカーでもある。自粛期間明けのタイミングで負傷してしまったが、「サッカー部のみんなが励ましの言葉を掛けてくれて、それに支えられてモチベーション高くケガの期間を過ごせましたし、改めて仲間の大切さを実感しました」と新たな気付きを得たことも、個人としては結果的に大きなプラス材料。5年連続で西が丘での敗退を突き付けられている選手権予選にも「ベスト4止まりの現実をしっかり受け止めて、チーム全員で日々準備してきたので、今年こそは西が丘の壁を破って、東京朝高の名を全国に轟かせたいです」と意欲十分。自らの力で歴史を変える覚悟は整っている。

 

FW尾崎元(大成高3年)
昨シーズンの立ち上げ時はトップチームに入れなかった男が、総体予選で一気にブレイク。途中出場となった準々決勝の堀越高戦で、本人も「練習でも1回もあんなシュート打ったことないんですけどね」と笑うゴラッソを叩き込むと、以降はスーパーサブの立ち位置を確立。沖縄で行われた全国総体でも、チーム唯一の得点をマークするなど、夏過ぎからはメインキャストの1人に成長を遂げた。180cmの体格を生かしたポストプレーには以前から自信を持っていたが、昨年度のセンターバックコンビを組んでいた佐藤イライジャと金井渉と紅白戦でマッチアップする中で、プレーの幅が広がったとのこと。言動にも現れる強気なメンタルも頼もしい。1年時の決勝はスタンドで応援しており、昨年の準々決勝はスタメン起用に応えられず、交替後のベンチで敗戦を見届けただけに、選手権予選には並々ならぬ意欲を抱いているはず。同校初となる冬の全国出場を引き寄せるためには、このストライカーの爆発が必要不可欠だ。

 

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
(取材・文 吉田太郎)

 

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