後半終了間際、青森山田高1stチームのCB藤原優大主将がダメ押しゴール
[10.4 スーパープリンスリーグ東北決勝 青森山田高 2-0 青森山田高セカンド 青森山田高G]
高円宮杯JFA U-18サッカーリーグ2020のスーパープリンスリーグ東北は、4日に王者決定戦を行い、グループA首位の青森山田高(青森、以下1st)が2-0でグループB首位の青森山田高セカンド(青森、以下2nd)を破り、意地を見せた。
トップチームは、昨季のプレミアリーグチャンピオンシップを制覇。本来であれば、今季もプレミアリーグEASTを戦うはずだったが、新型コロナウイルスまん延防止策の一環として長距離移動を伴うプレミアリーグが所属チームの多い関東に限定されたため(全リーグで昇格・降格なし)、ファーストチームがセカンドチームと同じリーグに属する形になった。ファーストチームはベガルタ仙台ユースなどが属するグループAで5戦全勝(得失点差36)、セカンドチームは尚志高などが属するグループBで4勝1分(得失点差+15)と、どちらもグループを制覇し、本来なら実現しない同門対決による東北王者決定戦となった。
試合の立ち上がりは、互角だったが、攻撃の質で勝る1stチームは、前半17分に右DF内田陽介(3年)のクロスをMF安斎颯馬(3年)がボレーで狙い、ポストをたたくチャンスを創出。さらに21分、FW名須川真光(2年)のポストプレーからU-17日本代表MF松木玖生(2年)が安斎とのワンツーを狙うと、安斎が相手に引っかけてしまったボールを自ら回収してシュート。2ndのGK沼田晃季(2年)がブロックしたが、雨で滑ったボールが脇をすり抜けてネットを揺らし、先制点となった。
さすが1stチームと思わされる先制点だったが、むしろ前半は、2ndチームのペースだった。DF三輪椋平(2年)、DF多久島良紀(1年)の下級生CBコンビが空中戦で名須川を完封。ボールを奪うと、右DF藤田夏寿丸(3年)のアーリークロス、右MF藤森颯太(2年)の仕掛け、トップ下の本田真斗(2年)のアイディアで素早く反撃。前半36分には藤森のFKから多久島がヘディングシュート。さらに、MF鈴木遼(3年)のパスから本田がドリブルシュートを放つなど、相手より多くゴールに迫った。
この展開に1stチームは、しっかりと対応。ハーフタイムで戦い方を変え、一気に試合の主導権を奪い取った。相手CBに跳ね返され続けたロングパスを止めて、地上戦に変化。MF宇野禅斗(2年)の鮮やかなゲームメイクで左右に振りながら前進すると、2ndチームは守備のプレッシャーラインに迷いが生まれた。2ndチームの2ボランチの一角を務めた鈴木は「前半は早く敵陣に攻めてラインを上げてハイプレスができていたけど、間延びしてしまい、前から行くか、後ろに引くかが中途半端になってバイタルエリアを使われた」と悔しがった。
1stチームはポゼッションに切り替えただけでなく、主将で浦和に加入が内定しているU-19日本代表候補DF藤原優大(3年)は「明らかに球際で負けて、セカンドボールを取られていた。このままでは、絶対にやられるぞという話をした」と話したとおり、素早い守備への切り替えも強化。後半2分、松木が左からクロスを上げると、右MF仙石大弥(3年)がボレー。後半10分、DFタビナス・ポール・ビスマルク(3年)の対角フィードを仙石が中央へつなぎ、相手GKがニアサイドへ出てきたところで松木がクロス。フリーで飛び込んだ左MF小原由敬(2年)がシュートを放ったが、2ndチームは右DF藤田が無人のゴールをカバーし、追加点を許さない。
その後も1stチームが攻め立てたが、1点差でしのぐ2ndチームも虎視眈々と好機を狙った。後半29分、相手のプレスが緩んだ隙に攻撃参加した左DF山本航大(3年)のクロスに鈴木が飛び込んだが、シュートは惜しくもクロスバーを越えた。そして試合終盤、1stチームは再び役者が仕事をした。アディショナルタイム、松木が蹴った右CKを「やっぱり、1点差では相手に勢いが出る。とどめを刺したかった」と話した藤原がヘッド。走り込むコースより大きく飛んできたボールにアジャストし、折り返し方向へたたきつけた技ありヘッドでダメ押しの2点目を奪い、1stチームの格を示した。
コロナ禍で公式戦が長く行われず、スーパープリンスリーグ東北が8月末に開幕し、約1か月の短い戦いが幕を閉じたが、青森山田が目指すタイトルは、この先にある。17日には、第99回全国高校選手権の青森県大会が開幕。シードの青森山田は10月24日に初戦を迎える。昨季は、全国大会で準優勝。惜しくも連覇を逃した。昨季から主力として活躍し、決勝戦で得点も挙げた藤原は「今年のチームは、公式戦でも練習試合でも1回も負けていない。すごく、チームに自信はある。ただ、そんなチームでも1つ落としてしまうのが選手権だと思うので、もう1回引き締める必要がある。1年間、負けなしのチームを作ろうと思っている」と意気込みを語った。
インターハイが中止になり、プレミアリーグで関東の強豪と公式戦を戦う機会も失ったが、2ndチームのレベルの高さが、青森山田という集団がチーム内の切磋琢磨で向上心を刺激し合っていることを証明している。2ndチームの主将を務めた内間隼介(3年)は「前半、相手は少ないチャンスを決めてきた。逆に自分たちはチャンスが多い中で決められなかった。これから選手権に向かって、今度はAチームもBチームも一丸となって戦っていく中で、その課題はチーム全体でこだわっていかないといけない。やれた部分はあるが、課題が多く見つかった」と健闘に満足せず、どん欲に課題を追求。後半に惜しいチャンスがあった鈴木も「もっとシュートの質にこだわったり、後半の守備をあいまいにせずに戦えば、失点せずに勝てたかもしれない。もっとこだわらなければいけない。まだ選手権まで時間がある。細かい所を詰めて先発に食い込みたい」と1stチーム入りに意欲を示した。
2チームに分かれて東北王者の座をかけた真剣勝負にたどり着き、勝った1stが2ndの意地を感じ、2ndは1stとの差を意識して次の課題を見つけていた。コロナ禍でもたくましく力をつけている青森山田は、主将の藤原が語った「1年全勝」を達成すべく、選手権に向かう。
(取材・文 平野貴也)
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