名門・東福岡のエースがJユース相手に4発!“赤い彗星”の9番が紆余曲折を経て取り戻した得点感覚
{by} https://www.soccerdigestweb.com/

東福岡のエースストライカー、長野星輝が2年次に伸び悩んだワケとは?

 

 

“赤い彗星”の9番がプロ入りに向け、ギアを上げている。

 

 185cm・74kgの恵まれた体格、正確なポストプレー、足もとの技術、力強いドリブル突破。高校年代でも指折りの攻撃センスを持つ東福岡のFW長野星輝(3年)がリーグ戦再開と同時に調子を上げてきた。

 

 9月22日に行なわれたU-18高円宮杯スーパープリンスリーグ九州の第3節。長野はアビスパ福岡U-18戦に先発出場すると、4ゴールの活躍でチームの快勝に貢献した。

 

 4-1-4-1の最前線に入ると、中盤に降りる動きを混ぜながら攻撃の起点となるポストプレーでチャンスに絡む。収めるだけではなく、隙あらば最終ラインの背後に抜け出して自らゴールも狙った。31分にはPKでチームの2点目を奪い、後半開始早々の46分には自身のポストプレーで起点を作ってチャンスメイク。最後は右SB竹内良(3年)のクロスに自ら合わせ、ネットを揺らした。

 

 以降もポストプレーと裏への抜け出しで好機を演出。積極的にシュートも放ち、貪欲に結果を求めた。59分にはMF遠藤貴成(3年)のスルーパスに反応。GKとの1対1を制し、ハットトリックとなるゴールを右足で決めた。これで勢いに乗った長野はこの後も止まらない。75分には浮き球のパスにノートラップで合わせ、左足で豪快に蹴り込んだ。12日の第2節・筑陽学園戦はアシストを決めたものの無得点。その悔しさを晴らす結果で自身の存在を強烈にアピールした。

 

 東福岡でエースストライカーを担う長野。ただ、1年次に注目を集めた一方で昨季は伸び悩んだ。卒業後の進路をプロ一本に絞っているが、現時点でJクラブからのオファーはない。今後のアピールがポイントになるが、何故1年の時から注目を集めていたFWは、思うように成長を遂げられなかったのだろうか。

 

ケガから復帰するもプレーの感覚が戻らず…

 

 

 中学時代は小倉南ジュニアユースでプレー。卒業時には関東のJクラブからも誘いがあったが、同クラブのOBで東福岡の先輩・福田湧矢(現G大阪)の助言もあって東福岡への進学を決めた。すると、1年次の4月からトップチームに所属。同年8月のプレミアリーグWEST・14節の名古屋U-18戦から2試合連続ゴールを奪うなど、そのスケールの大きなプレーに世代別代表のスタッフも注目していた。しかし、同年の高校サッカー選手権前に左足首を負傷。本大会の登録メンバーを外れ、4か月もピッチから遠ざかった。

 

 その怪我を乗り越え、昨年の4月に戦列に復帰。だが、長野は強烈な違和感を覚えた。当時を振り返り、本人は言う。

 

「手術レベルの怪我をして、プレーや得点の感覚的なものが戻らなかった。復帰したけど、全然上手くいかなくて……。『こんな感じだったのかな?』と戸惑い、自信をなくしたんです」

 

 怪我を負う前はイメージできていた得点への道筋。しかし、長期間に渡って離脱した影響で復帰後はゴールまでの絵を描けない。そのギャップに苦しみ、昨季は満足のいくプレーができなかった。

 

「感覚が戻らなかった。本当に楽しくなくて、苦しかったです」

 

 背番号9を託された新チーム移行後も感覚は戻らない。結果を残せず、チームも2月の県新人戦は準決勝で敗退して14年ぶりに九州大会への出場を逃した。

 

 自身の実力不足を痛感した長野。しかし、この敗北をきっかけに変わっていく。新型コロナウイルスの自粛期間中はほとんどトレーニングをできなかったものの、新人戦の敗北をきっかけに勝負へこだわる姿勢が増していったのだ。

 

「全部勝敗にこだわって、全試合自分がゴールを決めてチームを勝たせたい」

 

「練習とかでもちょっとしたゲームでも勝敗にこだわって、自分のチームが負けないようにしたかった。負けないようにするためにどうやったら得点が取れるのか。そこを考えてくうちに、夏前には感覚が戻ってきました。得点のイメージが湧いてくるようになったんです」

 

 練習中の些細な事でも負けるのを嫌い、誰よりも勝利を目指して戦う姿勢。実際にこの福岡戦でもそうした欲が見られた。自身の2点目となったPKの場面。仲間に掛け合ってキッカーを譲ってもらい、ストライカーとしての矜持を示した。

 

 取り戻した感覚――。「インターハイがあれば、たぶん活躍できたと思う。それぐらいの手応えはあった」と言えるほどの充実感が今のプレーに繋がっている。

 

 選手権予選まで残り1か月。昨年は怪我の影響で満足に戦えず、チームは県大会の決勝で涙を飲んだ。2年ぶりの本大会出場と5年ぶりの日本一を果たす原動力となれば、自身のプロ入りにも近づく。

 

「ここからのゲームは全部勝敗にこだわって、全試合自分がゴールを決めてチームを勝たせたい」

 

 遅れて来たエースは誰よりも強い気持ちで最後の冬に向かう。

 

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

 

関連ニュース
ユース取材ライター陣が推薦する「クラセン注目の11傑」vol.1

森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...

クラセン注目の11傑
{by} web.gekisaka.jp
相手をリスペクトした真っ向勝負で静岡学園に3発快勝!神戸U-18が描く頂点へのロードマップに加わる個性豊かな色彩の可能性

[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...

高校サッカー
{by} web.gekisaka.jp
「ここが決勝戦」。大一番へ向けて準備してきた東京都が“アウェー”で鹿児島県にPK戦勝利

[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...

国体少年男子
{by} web.gekisaka.jp
【2024年】高校年代サッカー・プロ内定者一覧 【加入情報】

※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...

高校サッカー
{by} koko-soccer.com
「今の状況を打開していきたい」藤島監督が退任、新体制でリスタートを切った埼玉・昌平がプレミアリーグEASTに臨んだ

10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...

埼玉・昌平高校サッカー
高校サッカー
{by} soccerdigestweb
選手権代表決定日一覧 【第102回全国高校サッカー選手権予選】

■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...

第102回全国高校サッカー選手権予選
{by} koko-soccer
【2024年】高校年代サッカー・プロ内定者一覧 【加入情報】

※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...

高校サッカー
{by} koko-soccer
7年連続でJリーガー輩出中。選手育成も注目の強豪、昌平高・藤島崇之監督が退任へ

高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...

昌平高
藤島崇之監督
{by} web.gekisaka.jp
【2024年】高校年代サッカー・プロ内定者一覧 【加入情報】

※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...

高校サッカー
{by} koko-soccer
藤枝内定のMF芹生海翔、プロの練習で痛感した守備の重要性。成長を続ける司令塔は鹿児島城西を7年ぶりの選手権出場に導けるか

鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...

高校サッカー
{by} soccerdigestweb