3位決定戦ではFWでプレーした日大藤沢高DF牧来夢(3年)
[8.5 和倉ユース大会3位決定戦 日大藤沢高3-1山口U-18 城山陸上競技場]
第8回和倉ユースサッカー大会2020の大会期間中、ひときわ目を引く個性的なセンターバックがいた。日大藤沢高のDF牧来夢(3年)だ。
本職の守備をこなしながら、ボールを持つと機を見てドリブルで中央突破。時にはシュートまで持ち込む。これが一度や二度ではない。予選リーグはもちろん、優勝した青森山田高との準決勝(●0-3)でも大胆に前へ運ぶシーンがあった。
5日に行われた3位決定戦のレノファ山口FC U-18戦(○3-1)はベンチスタート。3-1で迎えた後半23分にピッチへ送られると、向かった場所は最前線だった。
「“戦術・牧来夢”って僕は呼んでいる。(彼は)GK以外は公式戦で全てのポジションをやったことがある。本当にどこでもできます」。試合後にこう話した佐藤輝勝監督は1トップ起用の意図について、牧の「柔軟性を生かしたかった」と説明。センターバック時と同じく、前線でもフリックやターンなど「意外性のあるプレー」を持ち味としており、「結構面白いと思いますよ」と牧への期待を強調した。
本人によると、小学校から東京Vジュニアユース時代まではFWや最終ラインを中心にプレー。高校に入った当初はFWだったが、1年生で初めて中盤を経験した。そこから再びFW、さらに2列目へ。2年生の選手権では中盤のアンカーでメンバー入りを果たし、3年生になってからは「今一番センターバックが困っているので、センターバックをやってくれている」(佐藤監督)と、主将DF宮川歩己(3年)とともに最終ラインの中央を任されている。
「自分的にはあまり飛び抜けたところはないと思っていて、どこでも対応できるところが自分の長所だと思っています」
型にはまらない柔軟なプレースタイルは、さまざまなポジションを経験することで培われたものだろう。憧れを抱いたり、目標としたりする特定の選手はいない。「いろいろな所をやっているので、試合を見ていても、いろんなポジションの目線で見ちゃうんです」。多角的に他の選手たちのプレーを観察し、多くのものを吸収している。
「自分でもセンターバックをやりながら、結構上がっていっちゃうところがあって(笑)。前(のポジション)もやってみたい、どこでもできるのが自分の長所なので、いろいろな所で試したいと監督に話したら、今日FWで使ってもらえました」
久しぶりのFWでのプレーは時間こそ短かったが、「できなくはないなっていう感じはあった」と、一定の手応えを得たようだ。
複数のポジションで高い能力を示す牧だが、佐藤監督はまだまだ伸びしろがあるとみており、“スイッチ”が入る瞬間を待っている。
「あいつ自身、『僕を好きって言う監督の方が珍しい』と言うあまのじゃくなところもある。僕は大好きなんだけど。いい意味で裏を取るようなところもあって、だけど男気もある。面白いですよ。トリッキーで。もしかしたら本当にあのポジション(FW)で(点を)取ってヒーローになって勝つかもしれない。宮川より僕はポテンシャルを持っていると思う。手を抜いてるからあれで(笑)」
「牧が(宮川と)同じ気持ちでやれたら、本当に面白くなる。前(のポジション)でもいいし、どこでも、あいつがスイッチが入ってくれれば。でも、どこにスイッチがあるか分からない。どの辺にあるんだろう、あいつの(笑)。スイッチが入ったら面白い。スイッチが入るかどうか」
ピッチ上で見せるプレーと同様に、これからの姿も予想がつかない。可能性は無限大だ。究極のユーティリティープレーヤーの行き着く先はどこになるのか。
「自分がいろんな所に入ることによって、チームの色が変わって面白くなるかなと思って、監督に(3位決定戦はFWでプレーしたいという)話をしました。これからもっといろいろなポジションをこなせるようになって、チームの流れを変えられるような選手になりたいです」
“戦術・牧来夢”。チームにいい化学変化を起こしてくれることは間違いない。
(取材・文 阿部哲也)
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