昨年度はインターハイ、選手権共にベスト8に輝き、私学勢が全盛の中で公立の雄として存在感を見せたのが、徳島市立だ。チームを率いるのは、現役時代にインターハイ優勝を経験するOBの河野博幸監督。過去には元日本代表の塩谷司(アル・アイン/UAE)らプロサッカー選手も育てた注目の指揮官にチームが目指すサッカーや求める選手について尋ねた。
ーー目指すサッカーについて教えてください。
その年にいる選手のタイプによって戦い方は違います。昨年は全国大会で攻め勝つだけの力がなかったので、粘り強く守ってカウンターを徹底しました。チームとして目指すスタイルを真面目に頑張れる選手が多かった結果がインターハイと選手権のベスト8に繋がったと思います。ただ、毎年のことですが、同じことを繰り返すだけでは昨年と同じかそれ以上の結果は出ないので、昨年よりも前に出ていくサッカーを目指しています。身体能力が高い選手が多いのでボールを奪ってからシンプルに前線に攻撃するだけ奪うのではなく、組み立てながら高い位置まで運ぶスタイルが理想です。そのため、センターバックにはサイズがあってある程度ボールを扱える技術、ボランチにはスペースを埋める感覚やパスを散らせるセンスを磨いて欲しい。ワイドの選手は縦を仕掛けてクロスを上げて欲しい。近年は3バックを継続しているので、年度によってスタイルとシステムは違いますが、選手に求める役割はシンプルです。
ーー年々、一芸を持った選手が増えている印象があります。
今年のチームにもボールが扱えなくても相手と競り合えて、恐れずに飛び込めるセンターバックや左利きで良いクロスやロングスローが投げられる選手など個性的な選手が揃っています。以前はグループでボールを繋ぐサッカーを目指し、足元の技術に長けた選手を重宝していましたが、身体能力が高い選手と対峙した時やプレッシャーがかかる全国大会で継続したことがうまく表現できずに負けが続いていました。県内とは違い、よりさまざまなプレッシャーのかかる全国ではできることよりもできないことの方が多い印象です。それなら、できないことが多くてもトーナメントで勝てる人材を大事にしようと考えるようになりました。また、高校で組織的に崩すサッカーを重視し過ぎても、卒業後に個人で見た際に長所が見えづらいとも気付いたのも分岐点でした。周りが絡んでくれるから活きる選手が多く、単独で突破できるかと言えば難しい。それなら、ボールの扱いが下手でも速さを活かして縦突破からクロスを上げられる選手の方が良い。以前のスタイルならミスが多くて使えなかった選手でも、今は長所を発揮してくれば良いと積極的に起用するようになりました。できないプレーはできる選手に任せれば良い。対人が強くても足元が苦手な選手は、ボールを奪ったらポゼッションできる選手に預ければ良いとの考え方です。もちろん苦手なことが全く出来なくても言いということではありません。
ーーそうした人材の変化もスタイルの変化に繋がっていそうです。
以前はボールを持っていることが守備にも繋がると考えていましたが、今は攻撃を重視しすぎてカウンターを受けるリスクを避けるため、良い守備からカウンターを目指そうと考えるようになりました。勝負に徹するためにシンプルになり、求める選手のタイプも変わっていったイメージです。もちろん、予選を確実に突破するためには得点を奪わなければいけないので攻撃も重視しています。練習もほとんどが攻撃の練習です。
ーースタイルを変えるのは指導者の勇気がいりそうです。
以前のサッカーで結果を出すのではなく、一度手堅くやってから出直そうと考えました。割り切ってから、両極端なスタイルの両方を少しずつ合わせていければ良いかなと考えています。以前は「繋ぐ、蹴らない」、今は「まずは守備を重視して、ドンドン前に出ていく」。昨年はインターハイと選手権でベスト8に入り一つ結果が出たので、今度は守り切って終わるだけでなく、以前のように少しずつ攻撃寄りにシフトし、1点を獲りに行ければと考えています。
ーー昨年の結果は県内の中学生や公立高校の希望になるのではないでしょうか。
一線級の選手でなくても皆で頑張ればある程度の結果が残せると示せたと思います。小学生の頃から上手い徳島県の選手はヴォルティスのアカデミーに行き、徳島市立にはあまり来ません。また、個性よりも足りない部分が多いだけでトレセンに入れず埋もれてしまう子どもの方がたくさんいます。徳島市立には、そうした中学年代の大きな舞台では陽の目が当たらなかった選手がたくさんいるので、彼らの個性を伸ばしながら結果を残し、子どもたちの希望になるチームになるのが理想です。もちろん結果だけでなく内容も大事ですが、トーナメントを何試合も積み重ねていくことで、選手が学ぶことがたくさんあります。1試合で終わったらダメなんです。全国大会での経験を積むうちに昔の人たちは、勝利が選手の成長を加速させると分かっておられたのだと気付けました。2年後にはインターハイが徳島で開催されるので、そこで結果を残したいとの気持ちも強いです。
ーー選手の個性を伸ばすために意識している点を教えてください。
それぞれのストロングポイントを伸ばせるような声掛けは意識しています。短所を補うのではなく、長所で絶対に負けない選手になって欲しい。ボール扱いが上手くなくても、ヘディングが強ければ、ヘディングを徹底して鍛えれば良いのです。一つ自信が持てる武器を持てば、自然と他のプレーも良くしようと思うようになり、選手として成長できます。そうした子どもがスタッフや周囲の人たちから褒められたら、自分を肯定できるようになり、より成長しようと思えるのではないでしょうか。
(文・写真=森田将義)
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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