ジュビロ磐田U-18のオールマイティー、小林篤毅
中学の頃から一緒にプレーしてきたアイツに、少し先を行かれてしまった感覚はあるが、自分もいつかという想いは常に心に秘めている。「プロになるタイミングは人それぞれなので、いつか追い越せるように、自分は自分のストロングポイントを生かして努力したいと思いますし、良い仲間であり、良いライバルですね」。いつかあの背中を追い越せるように。ジュビロ磐田U-18のオールマイティー。小林篤毅(3年)は“信じ続ける心”を携えて、今日もボールを追い掛けている。
2年生となった昨シーズンは、高円宮杯プレミアリーグEASTでも開幕戦から左サイドバックの定位置を確保し、粘り強い守備で劇的な勝利に貢献。以降は右サイドバックにポジションを変えながらも、世代最高峰のリーグで経験を積み重ねていく。ただ、それまで全試合に出場していた第10節を最後に、小林の名前はメンバーリストから消える。
「左肩脱臼の反復ですね。中学校3年生の時に初めてやってから何回も外れていて、次にやったら手術というのは決めていたので、そこで決断しました」。癖になっていた肩の脱臼を治すため、戦線離脱を受け入れた上で手術を決意。半年近いリハビリの日々と向き合うこととなる。
将来を考えた上で何より大事な3年間だと捉えていた高校生活に、これだけサッカーのできない期間が待っているとは想像もしていなかった。だが、その難しい日常の中で、自身の新たな側面に気付いていく。「本当に毎日毎日のトレーニングの質を何より大事にしていて、少しでも昨日より量が少なかったり、質が意識できなかったりすると、夜もグッスリ眠れないというか、ちょっとした所で昨日より今日、今日より明日という意識でずっとやっていました」。
さらに同じ境遇を強いられた仲間との絆も、より深まっていく。「(馬場)惇也とは2、3か月ぐらいは一緒にリハビリしていたので、正直愚痴を言い合ったりしてストレス解消もしましたけど、結局は『オレらが頑張らないとな』と。『一番苦しい想いをしたからこそ、一番成功するはずだ』ということは2人で信じてきました。今もほぼずっと一緒にいますね。学校とかでも一緒にいます(笑)」。周囲も羨むようなホットラインが、馬場との間には出来上がっている。
「早くサッカーしたいとか、ボールに触りたいとかあったんですけど、復帰した時に自分でも『変わっているな』と思いましたし、毎日毎日コツコツと長所や短所をしっかり見つめてきて、本当に良かったなと感じています」。地道な日常を確実にこなしていくことの大事さを知っている男が、強くならないはずはない。
もともとは愛知県出身。小学生時代は三浦弦太(現・G大阪)や白井康介(現・札幌)も輩出しているFC豊橋リトルJセレソンでプレーしていたが、「自分が今どのくらいのレベルにいるのかを知りたくて」参加したセレクションでジュビロアカデミーの合格を勝ち獲り、U-15時代は1時間近く掛けて電車で磐田まで通っていた。
「中学の頃は、今から思えば本当に子供だったなと。練習の質も『昨日より落ちてるな』とわかっていても、『まあ明日やればいいや』とか、サッカーに対する想いも『楽しければいい』というのが強くて、上手くなることの優先順位は楽しくやることの次だったんです」。サッカーはもちろん、生活面でスタッフに怒られることもしばしば。当時を知る世登泰二監督も「中学の時は“ちゃらんぽらん”でしたね」と笑いながら振り返る。
だが、指揮官の続けた言葉が印象深い。「最近は入ってきたばかりの1年生にプレーのアドバイスをしたり、凄く面倒見がいいですし、フィールドの中で一番声も出ますし、トレーニングの時も雰囲気を締めてくれたりとか、そういう所では凄くリーダーシップや自覚が出てきました。人間的にだいぶ落ち着いてきたのかな(笑)」。
世登をはじめとしたスタッフ陣へ対する感謝は、強すぎるほどに感じている。「結局自分自身がサッカーに本当に向き合わないと変われないということに、気付かせてもらえたのはスタッフの方々のおかげなので、人として凄く成長させてもらったなと感じています。コツコツやれば絶対に結果が出るとわかったので、それを信じ続ければもっといろいろなことが変わるんじゃないかなと思いますし、今はまだ小さな結果ですけど、これを続けることが大きな目標です」。“信じ続ける心”がもう揺らぐことはない。
どのポジションも水準以上にこなせるが、一番やりたい場所は決まっている。「中にカットインしたりとか、何でもできるポジションなので、左サイドバックが一番楽しいですね。緩急あるドリブルで相手を外しながら、パスも使って前に進むのが得意な部分で、守備の面でも1対1の対応は負けない自信があります」。イメージはレアル・マドリーのマルセロ。彼のプレーを笑顔で語る姿に、サッカー好きな普通の高校生の一面が覗く。
一足先にプロの扉を叩いた“同級生”の存在が、さらに自分の決意を深めてくれている。「(鈴木)海音は中学の時から凄い選手で、自分のプレーを信じながらブレずにずっとやってきた選手なので、今まで頼っていた部分はたくさんありました。でも、プロになるタイミングは人それぞれなので、いつか追い越せるように、自分は自分のストロングポイントを生かして努力したいと思いますし、良い仲間であり、良いライバルですね」。少し先を行かれてしまった感覚はあるが、自分もいつかという想いは常に心に秘めている。
コツコツと積み重ねていく日々は、決して遠回りなんかじゃない。いつかあの背中を追い越せるように。ジュビロ磐田U-18のオールマイティー。小林篤毅は“信じ続ける心”を携えて、今日もボールを追い掛けている。
■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
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※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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