小学校5年生から背負い続けてきたエンブレムの意味は、誰よりも自分が一番よくわかっている。お世話になった8年間の月日に対し、何ができるのかも常に考えてきた。「やっぱり浦和レッズに恩を返したいという想いがあって、自分がプロになって海外に出たりすることで恩返しになるのか、どういう形になるかはまだわからないですけど、何かの形で恩返しできればという気持ちはあります」。浦和レッズユースのクールなレフティ。盛嘉伊人(3年)が抱える“恩返し”への想いは、今でも日を追うごとに強まっている。
去年の浦和レッズユースは何とも個性的なチームだった。とにかくレフティが多い。試合によっては、ピッチに立っているフィールドプレーヤーの右利き、左利きの比率で後者が上回るほど。とりわけ中盤は4人のうち、3人がレフティということもざらにあり、独特のゲームリズムを醸し出していた。
そのことを問われ、「そんな違和感はなかったですけど、相手からしたら嫌なのかなあという感じですね。左利きの人って個の特徴がある選手が多いので、やりやすかったりもしますけど、右利きの人とやっていても、気持ちの面はそんなに変わらないです。たまたまだと思います」と笑う盛嘉伊人の左足にも、確かな才気が宿っている。
圧巻だったのは高円宮杯プレミアリーグEASTの第4節。結果的に王者の座をさらった青森山田高を相手に、ボランチの位置で積極的にボールへ関与。1点ビハインドで迎えた後半35分には、得意の左足でダイレクトボレーをゴールネットへねじ込み、チームに勝ち点1をもたらしてみせた。
だが、「アレくらいでしたね。他の公式戦でも獲ってないですから」と本人も言及するように、2019年の公式戦で記録したゴールはその1点のみ。「自分の理想とするプレーは自らドリブルで行って、シュートを打ったり、自分のパスからゴールをアシストするという所で、去年はゴールを奪う部分や、チャンスメイクの部分がなかなかできなかったので、そういう面ではまだまだだったかなと思います」と課題も口にする。
シーズン終盤には負傷したことで戦線離脱。「チームとしても結果が出てきていた時期でしたけど、リーグ戦も終わりに差し掛かっていたので、自分としては『ここで無理する必要はないな』とは思っていました」と当時を振り返りつつ、「試合を見ていても『自分が出ていたらな』とか、『自分だったらこうしていただろうな』みたいな、そういうもどかしさはありました」と素直な心情も思い出す。
とはいえ、転んでもただでは起きない。その時期を自身のプレースタイルを見直す時期に充てる。「試合に出なくなったことで、結構心の余裕ができたというか、海外の試合もより見るようになったんです。それまではポジション柄もあって、ボランチを中心に見ている中で、特にイニエスタ選手を参考にしていたんですけど、バルセロナのメッシ選手とか、ユベントスのディバラ選手とか、左利きの前線で得点に絡むような選手が気になるようになりましたし、はっきり意識は変わりましたね」。
もともと攻撃的な選手ではあったものの、ボランチを任されることが多くなったことで、少しプレーにブレーキを掛けていたが、離脱期間を経た今年は改めてプレーの比重を前に傾けることを誓っている。「自分としてはゴールに向かう姿勢が特徴だと思っていますし、フォワードもやってみたいですね」。2020年はよりゴールに近い位置で躍動する盛の姿を見る機会が増えそうだ。
浦和レッズに入団したのは小学校5年生。「私生活からの緊張感は日頃から持つようにしています。たとえば日常で考えれば、自転車で2列になっている時に『1列になれよ』と言ったりとか、携帯電話をいじらないとか、電車で席を譲るとか、当たり前のことですけど、そういうことをできるようにしたいなと。それはエンブレムの付いている服を着ていても、着ていなくても一緒です」。背負い続けてきたエンブレムの意味は、誰よりも自分が一番よくわかっているという自覚もある。
だからこそ、今年の重要性も十分すぎるほどに理解している。「もう高校3年生ですし、ここでプロになれなかったら、いったんは浦和レッズから離れなくてはいけないこともわかっているので、頑張りたいですよね。やっぱり浦和レッズに恩を返したいという想いがあって、自分がプロになって海外に出たりすることで恩返しになるのか、どういう形になるかはまだわからないですけど、何かの形で恩返しできればという気持ちはあります」。お世話になった8年間の月日に対し、何ができるのかも常に考えてきた。
「自粛期間は1人でボールを蹴っていたので、自分でしか自分を評価できなかったですけど、チームメイトと一緒にボールを蹴ると、仲間を見て学ぶこともありますし、自分も周りから指摘を受けられるので、『やっぱりサッカーは楽しいな』と率直に思いました」。この半年はまさに集大成。大事な仲間と過ごす時間に想いを巡らせる。
「ここから公式戦はどうなるかまだわからないので、目標という具体的なものは持てていないですけど、もちろんプロを目指しながら、与えられた場所で自分ができることをやりたいですし、何より浦和レッズのためにプレーしたいなと思います。この半年間を大切にしていきたいです」。紡いだ言葉に、確固たる決意が浮かんだ。
浦和から世界へ。その道程を自らの左足で切り拓いていくイメージは、もうとっくにできている。浦和レッズユースのクールなレフティ。盛嘉伊人が抱える“恩返し”への想いは、今でも日を追うごとに強まっている。
■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
- 1 トッテナム・ホットスパーFC VS リヴァプール 予想、対戦成績、最新情報2024/1/9
- 2 AJオセール VS LOSCリール・メトロポール 予想、対戦成績、最新情報2024/1/11
- 3 FCナント VS ASモナコ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/11
- 4 メンヒェングラートバッハ VS FCバイエルン・ミュンヘン 予想、対戦成績、最新情報2024/1/12
- 5 レアル・マドリード VS RCDマヨルカ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/10
- 6 フラム VS ワトフォード 予想、対戦成績、最新情報2024/1/10
- 7 マッカーサーFC VS アデレード・ユナイテッドFC 予想、対戦成績、最新情報2024/1/6
- 8 アーセナル VS ニューカッスル・ユナイテッド 予想、対戦成績、最新情報2024/1/8
- 9 アトレティコ・マドリード VS CAオサスナ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/13
- 10 スタッド・ラヴァル VS レッドスターFC 予想、対戦成績、最新情報2024/1/11