京都サンガF.C.U-18のレフティモンスター、中野桂太
やれることもわかったし、やれないこともわかった。だが、一度その基準を知ってしまったからには、もう後戻りすることは叶わない。「自分ももっとやればあのレベルに行けないことはないというか、世界で戦ってみたい気持ちはメチャクチャ強くなりました。自分の代の世界のトップを知れて、やれる自信も付きましたし、もっと課題を補っていかないといけないというのも突き付けられた感じですね」。誰もが魅せられる悪魔の左足を持つ男。京都サンガF.C.U-18のレフティモンスター。中野桂太(3年)は世界への階段をはっきりと、力強く登り始めている。
その“一振り”を初めて見た者は驚愕するだろう。ほとんど位置や距離は関係ない。ゴールというターゲットを見つけたが最後、左足から放たれた軌道はあっという間に目標へ到達する。「ゴール前で仕事ができるのは自分の武器だと思います」と言い切る男は、その利き足からマンチェスター・シティのフィル・フォーデンやユベントスのパウロ・ディバラを参考にこそしているものの、「自分のプレーに合う選手がなかなかいなくて…」と口にするように、独特のスタイルで異彩を放っている。
ただ、昨シーズンは苦しい時期も経験している。夏前には所属するサンガでもスタメンから外れ、終盤に投入される試合が続く。「もちろん焦りはありましたし、悔しかったですけど、監督やコーチの(前嶋)聰志さんとも話したりする中で、『ここを超えるとワールドカップにもいい形で持っていけるんじゃないかな』というのはありました」。
10月開催のFIFA U-17ワールドカップを見据える中で、転機になったのも代表での活動だった。リーグ戦で3試合のスタメン落ちを経て、迎えた国際ユースサッカーin新潟。最終日のU-17新潟選抜戦で、日の丸を付けた中野の左足が火を噴く。後半36分にペナルティエリア外でパスを受けると、左足一閃。ボールは右スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺さる。「得意な形のミドルシュートだったので、自分の武器はこれだと改めて感じましたし、自信の付いたゴールでした」。
ようやく調子を上げながら臨んだクラブユース選手権では、最初こそスタメンではなかったが、2点差以上での勝利が義務付けられた横浜FCユース戦で、「自分が点を獲るイメージというか、大丈夫やろという自信があった」という言葉を証明するゴールを叩き出してグループステージ突破を手繰り寄せると、以降は定位置を奪い返し、チームトップの4得点を記録するなど、ベスト4進出に貢献。「自分の中ではあの大会が本当に大きな分岐点でした」と振り返る手応えを取り戻してみせた。
10月。ブラジルでのワールドカップメンバーに選出される。初戦のオランダ戦は途中出場で世界デビューを果たし、3戦目のセネガル戦では90分フル出場。しかし、さらなる飛躍を期して挑んだラウンド16のメキシコ戦は、中野の心に忘れられない悔しさを打ち付ける。2点のビハインドを負いながら、アップエリアにいた彼の名前が最後まで呼ばれることはなく、交替枠を残したままで敗退の瞬間を味わった。
「チームが苦しんでいる中で、力になれなかったのが悔しかったですね。『アイツを出せば何とかやってくれる』という信頼を、自分自身が勝ち獲れていなかったというか、そこはそれまでの自分の積み重ねだとわかっていましたけど、何とも言えない悔しさがあって、『これから見返してやりたい』という想いはかなりありましたし、今でもあります」。
とはいえ、得たものも決して小さくない。「自分ももっとやればあのレベルに行けないことはないというか、世界で戦ってみたい気持ちはメチャクチャ強くなりました。自分の代の世界のトップを知れて、やれる自信も付きましたし、もっと課題を補っていかないといけないというのも突き付けられた感じですね」。やれることもわかったし、やれないこともわかった。だが、一度その基準を知ってしまったからには、もう後戻りすることは叶わない。
今年はキャプテンに就任した。チームを率いる前嶋監督は、彼を指名した理由についてこう言及する。「本人としてはキャプテンをするイメージはなかったみたいなんですけど(笑)、間違っているものは間違っているとちゃんと言える強さを持っているので、そういう性格は本当に魅力的だなと思います。実は監督から話した方がいいか、彼がちゃんとみんなに話をして、選手たちの中で解決に導こうかという相談はよくしている中で、彼が『自分で引き受けます』と言うことが多くて、責任感を持ってやってくれているんだろうなと凄く感じますね」。間違いを正せるメンタルも、グループの責任を担う覚悟も頼もしい。
優勝を掲げたプレミアリーグは中止が決まったが、もう次の目標へと頭を切り替えている。「プレミアがなくなってしまったのはもちろん残念ですけど、関西での試合だといろいろな方に応援に来てもらえる機会も増えると思うんですよ。自分の友達も違う高校にいて、そのチームとも試合できたりするので、みんな前向きに考えていますし、新しいリーグでの優勝は狙っています」
「サンガは自分を選手としても、人としても成長させてくれた場所で、中学生の頃はトップチームの試合も『カッコいいな』という感じで見ていたんですけど、高校生になってからは自分も成長して、その舞台に近付いている感覚はありますし、やっぱりサッカーでしか恩返しできないと思っているので、個人としては1日でも早くトップチームに絡んで、Jリーグで点を獲るのが目標です」。
誰もが魅せられる悪魔の左足を持つ男。立ちはだかる壁はすべて破壊してみせる。京都サンガF.C.U-18のレフティモンスター。中野桂太は世界への階段をはっきりと、力強く登り始めている。
■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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