クラブユース選手権。Jユースカップ。高円宮杯プレミアリーグ。クラブチームの高校年代における3大大会で、すべてのファイナルを経験したゴールキーパーは、サッカーのある日常の意味を痛感している。「練習が大変な時は『休みたいな』と思う時もあったんですけど(笑)、いざサッカーを取られると自分は何もやることがなくなりますし、自分が『生きてる!』って感じられるのはサッカーをしている時が一番強いので、『やっぱりサッカーがないとつまらない』というのは強く思いましたね」。名古屋グランパスU-18の護り人。東ジョン(3年)のビッグセーブが、今年もチームの栄冠を力強く引き寄せる。
出番は唐突に訪れた。絶対的な守護神だった1つ年上の三井大輝(現名古屋)が負傷。高円宮杯プレミアリーグWEST第6節のアビスパ福岡U-18戦で、東の名前がスタメンのリストに書き込まれる。「『チャンスはそうそう来ないだろうな』と思っていた中で、三井さんがケガしたことによって、予期しない形での出場になったんですけど、そこで思いきり自分のプレーをしようと思っていたのに、最初は上手くいかなくて…」。デビュー戦は後半39分まで2点をリードしていたものの、結果的には3-3のドロー。最後の失点はキャッチミスと言われても仕方がないものだった。
それでも、「試合の勝敗に関わるミスもしてしまったんですけど、周りが凄く自分が成長するためにいろいろなアドバイスをくれたので、去年は本当に3年生に助けられました」と振り返るように、周囲のサポートも得て少しずつ自信を纏っていく一方で、チームも6月以降は公式戦無敗を継続。クラブユース選手権でも快進撃を披露し、西が丘でのファイナルへ進出すると、この晴れ舞台で東は眩い輝きを放つ。少なく見積もっても3度のファインセーブで失点の危機を救い、全国制覇の瞬間をピッチで体感した。
「勝っていくうちに『本当にやれるんじゃないか』という気持ちがどんどん強くなってきて、やっぱり準決勝、決勝になってくると『日本一以外は見えない』という状況だったので、優勝したあの景色は今でも忘れられないですね。決勝は最初に何本か止めて、『コレ、行けるぞ』って感じはありましたし、心の余裕もあって楽しくプレーできました」。2か月前のデビュー戦とは見違えるような16番の姿が、そこにはあった。
今年からトップチームに昇格した“先輩”の存在が、自身の成長を促したことも間違いない。「上のレベルに追い付くためには先輩が基準になるので、そこに追い付くためにいろいろなものを吸収しようと思いましたし、少しでも三井さんに近付けるように去年は頑張ったので、自分にとって凄くプラスな存在でした」。
秋口には負傷から三井が復帰。リーグ戦ではスタメンを譲る機会もあったが、Jユースカップと高円宮杯プレミアリーグのファイナルには、どちらも東がスタメンに指名された。「複雑な想いはありましたけど、自分としては勝ち続けてきて、凄く結果を出せましたし、自分の良いプレーを出せるようになったり、発言したりすることで、プレーでもプレー以外でも自信を持って振る舞えたから、監督やコーチの信頼を勝ち獲れたのかなと思っています」。自身のパフォーマンスがチームの結果へ直結する自覚は、今まで以上に心の奥へ刻んでいる。
今年の1月にはU-18日本代表に選出され、スペイン遠征を経験。初めての代表活動で実感したのは、“武器”を持つことの重要性だった。「スペインやメキシコの選手たちに共通して言えるのは、必ず自分の大きな武器を持っていることで、失敗しようとも成功しようとも、それを出そうとしてくるんですよね。たとえばドリブルが得意な選手だったら、ずっとそのドリブルで抜きに掛かろうとしていて、キーパーだったら積極的にビルドアップに参加して、攻撃に繋がるようなパスを出していて。自分たちも確かな武器を1つでも2つでも持っていないと、世界とは戦えないなと強く感じましたし、世界でも自分の武器が他の人よりも突き抜けられるようにしないといけないなと強く思いました」。
だからこそ、自分の特徴を語る言葉にも力が入る。中でも、自信を持っているのは“決断力”だという。「相手の足元に飛び込んで行くようなプレーは結構得意ですね。去年もそれで何回も相手にファウルされたんですけど、迷わずに止めることだけを考えて飛び込むと意外とケガしないので、そういうメンタル面も関係しているのかなと思います」。ただ、普段のそれは、サッカーほどではないらしい。「プライベートではコンビニでも『何買おうかな…』って迷いますよ。何分も考えていることもありますし、そういう意味では決断力はないかもしれないですね(笑)」。そう話す笑顔は等身大の高校生そのものだ。
サッカーへの想いは、この自粛期間でより強いものになった。「練習が大変な時は『休みたいな』と思う時もあったんですけど(笑)、いざサッカーを取られると自分は何もやることがなくなりますし、自分が『生きてる!』って感じられるのはサッカーをしている時が一番強いので、『やっぱりサッカーがないとつまらない』というのは強く思いましたね。ここからはやっぱり結果にこだわってやっていきたいですし、今まで先輩たちがしてきてくれたことを、後輩たちにもできるようにすることと、自分の一番の目標はトップに上がることなので、今はそのことだけを考えてやるようにしようと思います」。
世界へと続く扉はもう視界の先に捉えている。愛と勇気と決断力と。名古屋グランパスU-18の護り人。東ジョンのビッグセーブが、今年もチームの栄冠を力強く引き寄せる。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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