名古屋のCR7から日本のST7へ。名古屋U-18FW武内翠寿が放ち続けるオンリーワンの存在感
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名古屋グランパスU-18で存在感を放ち続けるFW武内翠寿

 

 次々と口を衝く言葉の流暢さと、その発信力は既にプロレベルと言って差し支えない。だが、その裏には確固たる信念が隠されている。「ピッチ内外も含めて、自分がまずしっかり行動してみて、それを背中で見せることで、後輩とか同級生、先輩もそうですけど、『アイツがあれだけの立ち振る舞いをしているんだから、オレもしっかりしないといけない』と思ってもらえるようにしていきたいなと」。名古屋のCR7から日本のST7へ。武内翠寿(名古屋グランパスU-18、3年)は自身の行動に責任を課すことで、さらにオンリーワンの存在感を放ち続けていく。

 

 この男から、普通の答えは返ってこない。今回の活動自粛期間にしていたことを尋ねると、こんな回答が紡ぎ出された。「僕自身はSNSでの皆さんへの発信だったり、あとは全然表には出ないですけど、身近な友達へ『Jクラブはこういうことをやっている』ということを説明して、そのポテンシャルだったり、それに対する自分の価値観だったりを常に発信し続けていましたね」。1人でも厳しいトレーニングを積んでいるのは当たり前。プラスして、この機会でできる“発信”に力を入れていたというのだから、只者ではない。

 

 ある機会では、トップチームの猛者をも驚嘆させている。先日、アカデミーの選手と長谷川アーリアジャスールによるオンラインミーティングが開催されたが、そのMCを任されたのが武内。スムーズに場を回し、スムーズに場を捌いていく。ミーティング後には、長谷川も思わず「彼は凄いですね」と驚いていたとのこと。キャラの立ち方は高校生の域を超えている。とはいえ、それが決して嫌味になったり、鼻に付いたりはしない。実際の彼は常に礼儀正しく、常に自分の発言の意味を正確に把握している。

 

 もともとは群馬県の出身。3種は地元の前橋FCでプレーしており、中学卒業後は海外へ行くことも考えていたが、グランパスから熱烈なラブコールを受ける。「試合を何度も見ていただいていた当時のスカウトの三浦(哲郎)さんが、わざわざ前橋FCの事務所まで来てくださって、『こんなに世の中には自分を欲しがってくれる人がいるんだ』と思ったんです」。熟考の末、単身で名古屋へ。1年時はなかなか思うような結果が出なかったものの、2年になると少しずつAチームに絡み出し、7月にはU-17日本代表の招集も受ける。

 

 ブレイクのキッカケは昨年のクラブユース選手権。「今までのツラさを思い出したり、『ここでやっと』という実感も形になって表れた瞬間だったので、サッカーで初めてぐらいに泣きました」と振り返る東海予選の3位決定戦で、ジュビロ磐田U-18に3-2と競り勝って全国切符を掴むと、本大会では4ゴールを叩き出してチームの日本一に貢献してみせた。

 

 この大会は準々決勝までが群馬開催。地元凱旋となった武内は、改めて自分がプレーすることの意味を再確認する。「前橋FCにはチーム全体で試合に来ていただいて、少年団の時の地元のチームからも見に来てくれる方が多くて。そこで自分自身が凄く感じたのは、サッカーに関わらず、社会に出た時の教育という部分で、ピッチ内外も含めて、自分がまずしっかり行動してみて、それを背中で見せることで、後輩とか同級生、先輩もそうですけど、『アイツがあれだけの立ち振る舞いをしているんだから、オレもしっかりしないといけない』と思ってもらえるようにしていきたいなと。そこで武内翠寿という柱をブラさず持っていくことが大切だと感じています」。“先輩”の背中は、きっと“後輩”たちにも大きな刺激になったことだろう。

 

 本人の髪形を見れば容易に想像も付くが、憧れはクリスティアーノ・ロナウド。すべてがリスペクトの対象だという。「小学校6年生の時に、日本で行われたレアル・マドリーのキャンプで選抜メンバーに入って、スペインへ行くことになったんですけど、サンチャゴ・ベルナベウで試合を見た時に衝撃だったのがロナウドでしたね。ちょっと鳥肌が止まらなかったです。で、ロッカールームに行って、ロナウドの所に座って『オレ、ロナウドじゃね?』みたいに思ってました(笑)」。

 

 新チームの背番号は、自身への期待の表れだと捉えている。「ずっと志願はしていたんですけど、僕たちが背番号は決められるわけではないので、コーチ陣だったりチームスタッフの方だったり、そういう方々の話し合いの中でサプライズ的に僕にくれたのかなと。もう頑張るしかないです」。ロナウドと同じ“7番”を身に纏い、自らのゴールでチームへ勝利をもたらす覚悟は整っている。

 

 実は武内をグランパスへ導いた三浦は、2年前にこの世を去っている。入団前から親身になって接してくれたアカデミースタッフの中井崇之。この2人を筆頭に、お世話になったグランパスを取り巻く多くの方々に対する感謝を形にするため、アカデミーで過ごす最後の1年に懸ける思いは人一倍強い。

 

「グランパスの話がなければもう海外に行っていたかもしれないですけど、結果的にグランパスでサッカーができて本当に良かったです。でも、1回代表に入ったぐらいでは三浦さんや中井さんも、まだ絶対喜ばないと思うんですよ。ここから(菅原)由勢さんや吉田麻也選手以上になって行かないと『あの時スカウトして良かった』という所まで至らないはずですし、そういう選手になるためには“今を生きる”ことが凄く大事だと考えているので、今を全力で生きて、ゴールを決める所はしっかり決めて、結果を残し続ける選手になっていきたいですし、その結果で三浦さんや中井さんたちにも恩返ししたいです」。

 

 そのキャラクターは規格外。有言実行。名古屋のCR7から日本のST7へ。武内翠寿は自身の行動に責任を課すことで、さらにオンリーワンの存在感を放ち続けていく。

 

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

 

 

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