サッカーキャリアで初の負傷による長期離脱を強いられた直後は、なかなか心の整理がつかなかったが、時間が経つにつれて、はっきりとわかってきたものもある。「自分がプレーしている時よりもいろんなことが見えてきて、『誰がどういうパスを欲しがっているな』とか、『誰がどういうプレーをしたいんだな』とか、客観的に見てわかるようになってきましたし、また違った視点から見て『サッカーって面白いな』と感じました」。185cmの長身を誇る大宮アルディージャU18の大型ボランチ。中山昂大(3年)は、もっとサッカーが好きになってきた自分を感じている。
新型コロナウイルスの影響で、全体での活動は自粛しているものの、限られた時間と限られた人数で使えるように、練習グラウンドを開放している大宮アルディージャU18。中山は偶然にも10年を超える付き合いの同級生と、同じ時間にトレーニングすることが多い。「キーパーにシュートを打ちたくて、レイを使ってやってます。レイとは幼稚園からずっと一緒なので、ちょっと変な感じですね。今は気が強い感じですけど、昔は凄く泣き虫だったので(笑)、変わったなという印象はあります」。
守護神を任されているジョーンズ・レイとは、新座西堀キッカーズからアルディージャのU18まで、一貫して同じチームでプレー。まさに腐れ縁とも言えそうな間柄だが、昨シーズンの高円宮杯プレミアリーグEASTの開幕戦は揃ってベンチスタート。「同じ学年で開幕から出ていた選手が何人かいたので、そういう選手を見て『悔しいな』という想いがありました」と素直に当時を振り返る。
だが、チームメイトの負傷を受け、後半開始から投入された第2節の市立船橋高戦で一定以上のパフォーマンスを披露すると、第3節以降はスタメンを確保。時にはボランチ、時にはサイドハーフとして、中盤のバランス維持に腐心する。とりわけ昨年の代にはスペシャルな個を持った先輩が何人もいたため、中山の役割は自然と定まっていく。
「去年で言ったら瀬良俊太(現・筑波大)とか、高田颯也(現・大宮アルディージャ)とか、いろんなタイプがいたので、自分はどっちかと言ったらバランス系で、前に行くよりも周りを見ながらチャンスを窺う、という感じでしたし、ボランチとサイドハーフでやるべきことは変わっていなかったと思います」。
とは言いつつも、自分の中で勝負したいポジションは定まっている。「基本的に点を獲るのはフォワードが多かったりするんですけど、ボランチの選手が決定的なパスを出せれば点に繋がりますし、そういう“気持ちよさ”は凄く感じているので、ボランチが一番やりたいなと思っています」。参考にしているのはバルセロナのセルヒオ・ブスケツ。大型ながら足元の技術が高いという共通項もあり、意識する存在のようだ。
リーグ終盤。残留争いのさなかに、中山の名前はメンバーリストから消える。無念の負傷離脱。最後の4試合に出場することが叶わず、奮闘するチームメイトを見つめることしかできなかった。「ああいう緊張感のある中で試合をやりたかったのと、自分が残留争いに関わらせないように、もっと何ができたのかは凄く考えていて、あの時はかなり悔しい想いがありましたね」。そのサッカーができない時間の中で、少しずつあるものを身に付けている自分に気付く。
「自分がプレーしている時よりもいろんなことが見えてきて、『誰がどういうパスを欲しがっているな』とか、『誰がどういうプレーをしたいんだな』とか、客観的に見てわかるようになってきましたし、また違った視点から見て『サッカーって面白いな』と感じました」。時には我慢できなくなり、「トレーナーに怒られながらもボールを蹴ってましたね(笑)」という告白はご愛敬。バランサーが手にした“客観性”は、今年のチームの小さくない武器になるかもしれない。
サイズも含めたスケール感は抜群。自身の特徴をこう語る。「人よりも身長が高いのは1つの武器としてあるんですけど、足元の技術は大きい割に大事にしているかなと。あと、実はスピードやジャンプ、持久力はチームの中でも自分が結構上の方にいて、そういうふうに見えないと思うんですけど(笑)、そこも武器にしていけたらなとは考えています」。アスリートの素質にも恵まれた中山のダイナミックなプレーを、早く再び見てみたい。
いよいよ迎えたアカデミーのラストイヤー。ジュニアからの総決算として、今年に懸ける想いは強い。「9年くらいアルディージャにずっといるので、何かしらの形でこのクラブに恩返ししたいと思っていて、それが日本一のタイトルを獲ることになればいいですし、自分が何かチームにとって良い働きをすることでもいいですし、今年は凄くそういう想いでやっています」。
「その上で、去年は3年生に付いていくだけというか、乗っかっていくみたいな感じだったんですけど、今年は自分が一番上になったので、個人のことだけを考えるのではなく、チームを引っ張っていくような存在になりたいと思っています」。“アルディージャのブスケツ”がチームを牽引する旗頭となった時、自ずと結果は付いてくるはずだ。
自覚と、責任と、それでいて1つ1つのプレーを楽しむ心と。185cmの長身を誇る大宮アルディージャU18の大型ボランチ。中山昂大は、もっとサッカーが好きになってきた自分をはっきりと感じている。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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