6失点の冬、インハイ中止…米子北GK長崎勇也は前を向いて、選手権の悔しさを選手権で晴らす
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先輩たちに恩返しできなかった冬。米子北高GK長崎勇也は選手権でのリベンジを誓う。

 

 選手権の悔しさは、選手権でしか晴らせない。米子北高(鳥取)で1年時から正GKを任されている守護神・長崎勇也(3年)は、全国の舞台で雪辱を果たすべく、日々の練習に励んでいる。

 

 サウーディFC(岡山)から米子北に進み、鋭いシュートストップを武器に1年夏のインターハイから全国大会でプレー。その冬の全国高校選手権でも2試合に出場するなど、着実に経験を積んできた。

 

 だが今年1月の選手権初戦、青森山田高(青森)との2回戦は0-6の大敗。鮮明に記憶に残っているのは、後半開始直後の1分に喫した2失点目だ。

 

 相手のクリアを拾おうとしたDF高橋祐翔(現大分)がピッチに足を取られて転倒し、ボールを拾った青森山田MF武田英寿(現浦和)が、向かって右サイドからゴールに迫ってきた。前に出ていた長崎は、いったんペナルティーエリア内まで後退。「武田選手のボールタッチが大きかったので、次にタッチしたら前に詰めようと思っていた」という。

 

 しかし、逆サイドからDF岡田大和(現福岡大)が懸命に戻ってきており、武田への対応に間に合いそうだった。「それに気付かず、完全に1対1の状況だと勘違いしていました。ボールだけに集中してしまって」。岡田が間に合うと判断し、ゴール前まで下がっていれば、防ぐことができたかもしれない。結果的に中途半端な位置取りになり、武田の鮮やかなループシュートで頭上を抜かれ、ゴールを破られた。

 

 米子北は前半を0-1で終えたものの、何度かゴールに迫った場面はあり、接戦に持ち込めば勝機を見いだせる可能性もあった。だが、後半開始直後の失点で試合の流れは完全に青森山田に傾き、その後も何度も守備を崩されて計6失点を喫した。

 

 試合終了直後、青森山田のGK佐藤史騎に声を掛けられた。「自分は『優勝してください』と言いましたが、あまりにも泣いてしまっていて」、何を言われたのか覚えていない。涙があふれたのは、試合に出られない選手たちの思いに、プレーで応えることができなかったからだ。「メンバーの他のGK2人は3年生でした。他の3年生にも支えてもらってきたのに、何の恩返しもできなかったことが、本当に悔しかった」と振り返る。

 最終学年を迎え、中村真吾監督は「シュートストップは今年もやってくれるだろうと思いますが、ボールポゼッションで攻撃にも参加してほしい」と語り、「プレーでも普段の生活でも、いるだけで安心できるような存在感を出してほしい」と期待を寄せる。長崎自身は「ディフェンスラインの裏のスペースのカバーが、まだ十分できていない。もっと前に出てカバーしていきたい」と課題を見据えている。

 

 休校期間中の自主練習では、体力アップのための走り込みや、テニスボールを使って集中力を高める練習に取り組んだが、「孤独感があった」と語る苦しい時期だった。5月7日に授業と部活動が再開し、現在は平日に2時間、全体練習ができている。「みんなと一緒に練習しているので、緊張感がある」という環境は、やはり充実感が違う。

 

 インターハイの中止にはショックを受けたものの、仲間たちと「下を向いていても意味がない。いま、どうするべきかをしっかり考えてやろう」と話し合い、選手権に向けて力を蓄えている。そこで「青森山田を倒す」という目標に向けて、さらに存在感を増して米子北のゴールを守り抜く。

 

(取材・文 石倉利英)

 

 

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