“変わるきっかけ”となった敗戦が「ベストゲーム」。身体と両足精度持つ京都橘CB金沢一矢は自分磨き続けてプロへ
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 自身のベストゲームに挙げたのは、変わるきっかけとなった試合だった。国体京都府選抜歴を持つ実力派DF、京都橘高(京都)CB金沢一矢(3年)にとっての「ベストゲーム」はPK戦の末に敗れた1月の全国高校選手権初戦・鵬学園高(石川)戦。この試合、2年生CB金沢は安定したパフォーマンスで1点のリードを守っていたが、後半終了間際の失点に絡んで追いつかれ、PK戦の末に敗れてしまう。

 金沢は「個人として、ベストかと言われたらそうじゃないかもしれません」と前置きした上で、「3年生に京都府初の選手権優勝を、出させてもらっている僕ら2年生で導くというモチベーションで挑んだんですが、僕ら2年生が何も出来ず結果出なくて……。PK後に試合終了のホイッスルが鳴って崩れ落ちた3年生を見た時に、自分の中で『これじゃ、アカンな』と。意識が変わって、経験値という意味で僕の中でのベストゲームになりました」とベストゲームの理由について説明する。

 プレー面だけ考えれば、もっと良い試合があったはず。だが、高校からのプロ入りを本気で狙う金沢が「(自分にとっての)ベスト」として挙げたのは一番悔しかっただろう試合であり、変わらないといけないことを知る「きっかけ」になった試合。それが鵬学園戦だった。

 練習の強度はこのままで良いのか。もっと自分たちの代が声を出す必要があるのではないか。取り組みから変えないといけないと痛感。実際に金沢のプレーは、変わり始めているという。「ゴール前での責任感を今まで以上に持つようになりましたし、(新人戦などでは)ゴール前で飛び込んで守備に行けるようになったり、守備で身体を張れるようになりました」。プレミアリーグ昇格と選手権優勝という目標も掲げる金沢は、「ベストゲーム」を忘れずにこの1年のトレーニングに励む。

 新型コロナウィルス感染拡大の影響で京都橘は5月6日まで休校。金沢は試合ができないことでの試合勘、体力面を不安視する。それでも「今はコロナという状況を受け入れるしか無い」とし、「それをプラスにする事はできないかと考えた時に、マスクをして息をしづらい状況で走り込みをして肺活量アップを狙ったトレーニングをしたり、サッカーをめっちゃしたいという気持ちを再開した時にぶつけられるように、イメージトレーニングなどを取り入れています」とコメントした。

 金沢の強みは利き足と逆の左足でのキック精度も高いことだ。9歳離れた兄から「左足を蹴れるようにしておけ」と指摘され、小さな頃から磨いてきた。それが今、他のCBとの違いに。「グラウンダーの速い球、インフロント、インサイド、アウトサイドでの状況に合わせたキックが左右両足から出すことができます」と言うように、キックが彼のプレーの幅を広げ、チームの攻撃のアクセントになっている。

 また、182cmの高さを活かしたヘッドとフィジカル面は4強入りしたインターハイなどの公式戦で実証済み。「高校世代のトップレベルの選手たちとマッチアップしたんですけれども、その中で自分のフィジカルの部分で通用するのは確認が出来ました」と手応えを感じている。

 それでも、昨年末の練習試合で日大藤沢高(神奈川)のFW鈴木輪太朗イブラヒーム(現3年)には過信して当たりに行ったところで力負け。まだまだ未知の強さを持つ選手がいることを知り、以後は常に重心を低くして当たりに行くようになった。「初めて飛ばされました。今年やったら(逆に)ぶっ飛ばしたいですね」。他にも強豪との対戦で学んだことがある。

 京都橘はインターハイ準決勝で優勝校・桐光学園高(神奈川)に0-1で敗戦。後半アディショナルタイムの失点によって敗れた試合で、自分と相手の2年生CB奈良坂巧(現3年)との違いに気付かされた。「同じ2年生ですけれど、あの沖縄の真夏の状況で、奈良坂は誰よりも声を出していて、チームの集中力が切れる時間帯に桐光学園の集中力が切れなかったのは、彼の存在があったからだと感じました」。目の当たりにした声の重要性。また、関西トレセンでコンビを組んでいたCB平井駿助(興國高)が駆け引きの巧さ、フィジカル能力を大きく引き上げて横浜FM入りしたことが刺激になっている。

 金沢の個人としての目標は「武器を伸ばして課題を修正して、高卒Jで闘える選手になることです」。トップレベルの相手と戦う中で、判断のスピードなど課題を改善してきていることは確か。174cmの身長で大柄な外国人FWに競り勝つCB坂圭祐(湘南)を目標とする選手に挙げるCBは今年、どんなFWが相手でも絶対諦めずに戦い、それを封じ込んで白星と評価を勝ち取る。

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