青森山田の古宿理久 [写真]=野口岳彦
「自分たちが目指している前からのプレッシャーで高い位置でボールを取れて、ショートカウンターやサイドチェンジも出せたし、前半の入りは悪くなかった。でも90分を通しての継続という意味ではできなかった。(静岡学園は)外すことだったり、タメを作るのがうまい選手がいっぱいいて、無理に飛び込めなかったですね。今までやってきた中で一番うまいチームだったと思います……」
令和初の成人の日。青森山田と静岡学園が相まみえた埼玉スタジアムには高校サッカー選手権史上最多、5万6025人もの観客が詰めかけた。大会連覇を狙った青森山田は前半のうちに2点リードを奪うも、前半終了間際に失点。その後は個人技に秀でる静岡学園に2点を奪われ、2-3とショッキングな逆転負けを喫してしまった。
中盤を統率するMF古宿理久(3年/横浜FC入団内定)は試合展開を悔やんだ。ポゼッションで上回る相手に対し守勢に回る中、体力的に追い込まれてしまった。
「Jユースとやる時もポゼッションをされることは多いですけど、選手権で戦ったチームの方が攻守の切り替えが速かった。Jユースはボールを奪った時、あまり来ないんで、自分が自由に回せるんですけど、今大会は厄介なチームがいっぱいいましたね。そこで90分間、走れる体力があったかと聞かれたら『まだまだ』と言うしかない」と課題を口にした一方で、「自分は何でもできるボランチを目指しているので、守備も攻撃もできて対人に強くてヘディングでも勝てるっていうオールラウンドな選手になっていきたいと思います」と、高校生活ラストの大舞台を飾れなかった屈辱感をJリーグで生かそうとしている。
古宿が加入する横浜FCは今季、13年ぶりのJ1に挑む。ジュニアユース時代を過ごし、ユース昇格見送りという辛い経験をしながら這い上がり、背番号32を託されたルーキーも一員として「トップ10」という目標に向かっていく。ジュニアユース時代の同期・斉藤光毅はすでにトップで実績を残し、一歩リードされているが、負けるつもりはない。
「練習会に行った時は『本当に高校生なのか?』っていう感じのプレーをしてました。高2からJの試合に出ている選手なので、高校生らしくないっていうか、すっかりプロに染まってる感じがした。自分も早く染まんなきゃいけないですね」
そう意気込む古宿だが、ボランチ競争は熾烈を極めるだろう。今季の陣容を見ると、中村俊輔、松井大輔という元日本代表の両ベテランに加え、佐藤謙介、田代真一、新戦力の手塚康平ら多彩な面々が揃っている。実力者たちとのポジション争いに参戦し、出場機会を手にするのは容易ではない。
「横浜FCというチームは経験豊富な選手が多いですし、学ぶことが多い年になってくると思います。プロの世界には『クビ』もあるし、いられる時間に吸収できることはしないといけない。『中村俊輔さんや松井さんにも絶対負けない』『出た試合は結果を残してやろう』って気持ちでやっていきたいです」
古宿には展開力や戦術眼といった大きな武器がある。一方で、選手権決勝で直面した走力などのフィジカル面、球際の強度や寄せの速さなど、守備力を向上させていかなければいけない。昨季加入した中村俊輔も、新人時代はラスト15~20分で送り出され、徐々にインテンシティーを高めていった1人だ。古宿もコツコツとチャンスをつかんでいけば、大先輩のように大きな飛躍を遂げられる可能性は少なからずある。横浜FCの福田健二強化ダイレクターも「課題は沢山あるけど、光るものを持った逸材」と期待を寄せている。
将来を嘱望される大器が見据える先には、青森山田の先輩・柴崎岳がいる。かつて黒田剛監督に「この子は将来、日の丸を背負ってワールドカップに出る」と断言された男は、2018年ロシアW杯のピッチに立ち、日本の16強入りの原動力になった。その雄姿を現場で見守った黒田監督も感涙にむせぶ姿を見せた。恩師を感動させた偉大なボランチとコンビを組んでプレーすることが、9つ年下の古宿の夢だ。
「代表のいろんな試合を見ますけど、岳さんはホントにボールを奪われないですし、見て学ぶことが多い。でも逆に自分には岳さんにない者があると思う。そういう長所を伸ばして、真似するところは真似して、自分のプレーを突き詰めていきたい。いつか一緒にプレーできるようになりたいです」と彼は目を輝かせた。
強度が上がるJリーグで戦い抜くためのフィジカル、メンタル、戦術眼をまずは身に着けること。そこからスタートしてほしい。青森山田の緑から横浜FCのブルーを身にまとう若きボランチの堂々たる雄姿を見られる日が待ち遠しい。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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