令和最初の高校サッカー選手権は静岡学園(静岡)の優勝で幕を閉じた。
24年ぶり2度目となる冬の日本一――。1995年度は鹿児島実(鹿児島)と同校優勝となったため、今回が初の単独優勝となる。静岡県勢としてもそれ以来の大会制覇になった。
今大会を振り返ると、技術に秀でた高校が上位に進出した。大会を制した静岡学園や新潟県勢初のベスト4入りを果たした帝京長岡(新潟)。いずれも技術に特化したチームで、個人技や細かいパスワークを生かした攻撃が特徴だ。初めて8強まで勝ち上がった昌平(埼玉)も含め、新たな時代の到来を予感させた。
チームが積み重ねてきた結果が、今大会の躍進に繋がったのは間違いない。とはいえ、大舞台で青森山田(青森)の存在は際立っていた。
今回も含め、直近4大会で3度の決勝進出。うち2度は頂点に立っている。今年は2種年代の王者を決めるU-18高円宮杯プレミアリーグを制するなど、高体連だけではなく、Jユースや街クラブを含めた中で王者の称号を手にした。
プレミアリーグを制した青森山田は優勝候補筆頭だった [写真]=梅月智史
そうした実績も踏まえ、大会前から優勝候補の筆頭に挙げられていた青森山田。攻守の切り替え、球際の強さは他ではお目にかかれない強度があり、勝負にこだわる姿勢は他の追随を許さない。武田英寿(3年/浦和入団内定)らを擁する前回王者に死角はないと見られていた。決勝で敗れたものの、強豪揃いのブロックを勝ち上がったのは流石の一言。2000年代初頭の国見(長崎)が持っていた“王者の威圧感”を感じさせるほどだ。
だからこそ、どのチームも“打倒・青森山田”を掲げていた。試合前に対戦相手の監督に話を聞いても、出てくる言葉は同じ。しかし、その凄みは対戦しないと分からない。決勝後に静岡学園の川口修監督はこう話した。
「選手たちには、日頃から高いレベルでやることがチームと個人の成長になると話しています。我々はプレミアリーグのチームと戦う機会がないので、選手権で勝ち上がれば、プレミアリーグのチームと戦える。決勝の前半を見れば分かると思うのですが、青森山田はプレーの強度が違った。それは覚悟していたけど、球際や寄せるスピードも異なったし、実際に体感してやっぱり違う。前半を見ながら、自分たちのリズムになればと思ったけど、そこがプレミアリーグとプリンスリーグの差だった」
24年ぶり2度目の選手権優勝を勝ち取った静岡学園 [写真]=山口剛生
プレミアリーグに参戦するチームと戦う意義。青森山田に準決勝で敗れた帝京長岡の古沢徹監督、同じく準々決勝で涙を飲んだ昌平の藤島崇之監督も、それは感じたという。
「勝負強さとチームとして徹底する力。サッカーのスタイルは違うけど、アプローチの仕方は学ぶべき点が多かった」(藤島監督)
「守備で相手が締めて、頑丈なブロックを作ってきた。入れ替われそうなところで身体をぶつけられて、相手より一歩先に動いても寄せてきた。そこは1枚も2枚も上手だった」(古沢監督)
そのほかのチームや選手に話を聞いても、「一番強かったチーム」という言葉が多く聞かれた。戦うだけで経験値を得たのは間違いない。
逆に青森山田はファイナルで静岡学園に敗れ、学ぶべき点があった。黒田監督は言う。
「やるべきところでやることがサッカーの原理原則。敗戦を素直に認めないといけない」
選手たちの努力で準優勝を成し遂げた一方で、決勝で負ける経験は全国で1チームしかできない。この敗北を次にどう繋いでいくか。その貴重な体験が青森山田をさらに強くするはずだ。
青森山田が先頭を走り、他のチームが切磋琢磨する。その中で静岡学園は圧倒的な技術を全面に押し出し、王者の牙城を崩した。だが、準優勝に終わった高校サッカー界の“ラスボス”が他校に与えた影響は大きい。青森山田とライバルチームのせめぎ合い。来年もそのサイクルが続けば、選手権のレベルはさらに高まるはずだ。
取材・文=松尾祐希
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
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[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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