11日に準決勝を迎える全国高校サッカー選手権。4強の中でパッと目を惹くサッカーをしているのは静岡学園だ。パスとドリブルを駆使する個人技集団とはよく言われるが、今回はそれに加え、ボールを奪い返す速さに目が留まる。
ボールを奪われた瞬間にこそ、チーム全体の闘争本能に火が灯るといった感じで、周囲の選手がボールと相手に向かって襲いかかろうとする。面食らった相手が、焦り慌てる間にボールを奪取する。
静岡学園はその結果、相手陣内でボールを保持し続ける。パス、ドリブルなどの個人技が、いっそう光って見えることになる。相手は守勢一方に陥る。準々決勝で対戦した徳島市立は5バックで守るスタイルだっただけに、そうした傾向はピッチにより鮮明に描かれることになった。
布陣は4-3-3。とりわけ際立つのが小山尚紀(左)と松村優太(右)の両ウイングだ。両サイドバックも高い位置をキープし、その動きを下支えするので、2人の両ウイングはサイド攻撃を安定的に行なうことができる。
プレッシング+サイド攻撃。スタイルは攻撃的サッカーそのものだ。日本代表を中心に回る日本のサッカー界では、代表チームが守備的な3バックを採用すると、すかさずその流れが日本全国に波及する傾向がある。トルシエジャパンが3-4-1-2を採用した時がそうだった。結果的に5バックとなり、後ろで守ろうとするサッカーを、高校サッカー選手権の舞台でも普通に見かけたものだ。
森保ジャパンが守備的な3バックに転じようとしているいま、徳島市立的なサッカーが増えていくのではないかと危惧されるなか、静岡学園は準々決勝で、それとは真反対のサッカーを披露しながら4-0と大勝した。
あえて言えば、それは昨季のJリーグを制した横浜F・マリノス的なサッカーである。
その横浜FMにあって昨季、最も目を惹くプレーをしたのは右ウイングの仲川輝人だった。実際、年間最優秀選手に選出されたわけだが、いまの静岡学園もこれと似た状態にある。もし優勝を飾れば、右ウイングを務める松村は今大会の最優秀選手と言ってもいいはずだ。
その特徴は、仲川とかなり似ている。170cm/60kgは、161cmの仲川よりひと回り大きいとはいえ、小柄であることに変わりがない。そしてふたりとも50mを5秒台で走る快足の持ち主だ。
スピード感溢れる小柄な右ウイングという点で一致するふたりだが、広いスペースにボールを持ち出し、スピードを活かして前進する仲川に対し、松村は狭いスペースでも、相手のマーカーとの距離が近くても、それを苦にせず持ち味を発揮する。
ボールが身体に磁石のように吸い付いて見えるタッチの細かいドリブルだ。狭い中を縦方向にハイスピードで前進することができる理由である。
しかも、その状態を長く維持することができる。そのスピードは加速性にも富んでいるので、あれよあれよという間に滑らかにスイスイと進むのだ。5m、10m、20m……。気がつけば30~40m進んでいる感じだ。一気にドーンと30m、40m突き進むスタイルではない。
あくまでも高校選手権のレベルなので、Jリーグや国際舞台でその魅力がそのままストレートに反映されるとは思わないが、大きな可能性を抱かせることは確かだ。
これまでスピードスターと言えば、ボール操作術に難を抱えるきらいがあった。自身のスピードに、ボール操作が追いつかず、制御不能となりボールが暴れてしまうというケースが目立った。スピードスターと騒がれる選手が現れるたびに、そうした傾向がどれほどあるか、疑ってかかる必要があった。
仲川、そして日本代表の右ウイング、伊東純也(ゲンク)が台頭した時にも、その点に注視したものだ。ボール操作術は簡単に上達しないので、若い頃、少しでもそこに危うさを覚えた選手はたいてい、ある時点から伸び悩むことになる。デビュー当時はスピードが勝りすぎていたキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)などは、そういう意味で例外になるが、松村にその手の心配は不要だ。Jリーグ(鹿島アントラーズに内定)に入って、成長にブレーキがかかるようには映らない。
右利きの右ウイングは、世界的にも国内的にも、とにかく貴重な存在だ。絶対数が不足している個性になる。日本でそこに仲川、伊東が台頭したことには大きな意味があるが、松村のタイプはこのふたりとはまた少し異なっている。言うならば、より近代的な右の快足ウイングだ。
その近代性は、相手ボールに転じた瞬間にも見て取れる。松村は間髪を入れず、ただちにボールと相手にアタックを仕掛けるのだ。マイボールの時以上のスピードで。持ち前のスピードを、ふたつの異なる局面において、境界なく連続的に発揮できるという点に新しさを感じる。
それは今回の静岡学園のサッカーの魅力そのものだと言える。その象徴が松村で、スタイルの発信源としての役割も兼ねている。準決勝の相手は矢板中央。松村率いる静岡学園がどんなサッカーを見せるか、楽しみである。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
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10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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