惜しくも1回戦敗退となった日大明誠だが、試合後、特別な想いを語ってくれた選手がいる [写真]=瀬藤尚美
創部60年目にして初出場。悲願の選手権出場が叶い、日大明誠のモチベーションは試合前から最高潮だった。それは選手だけではない。熱気はスタンドにも波及。サッカー部、吹奏楽部、ダンス部、全校応援で訪れた一般生徒。誰もが並々ならぬ想いを持っていた。しかし、結果は1-3の敗戦。高校サッカー選手権を制した経験を持つ四日市中央工に対し、13分までに2失点を喫してしまう。その後に1点を返したが、後半早々に3点目を奪われて力尽きた。
試合後、涙に暮れた日大明誠。そのピッチの中で特別な想いを持つ選手がいた。背番号22を背負う酒井蓮人(3年)だ。
もともと酒井は大会前までベンチ入りを勝ち取れるか、微妙な立ち位置にいた選手だ。新チーム立ち上げ当初は出番を得ていたものの、以降は出場機会をつかめずにいた。すると、5月に酒井は決心する。応援リーダーに回ることを決めたのだ。「僕もチームの役に立ちたい」。性格的には先頭に立って盛り上げるようなタイプではなかったが、その一心でスタンド組を引っ張った。
とはいえ、サッカー選手である以上はピッチに立ちたいと思うのは当然。応援組をまとめる傍ら、練習にも人一倍打ち込んだ。その想いが報われ、選手権予選ではメンバーに登録され、1回戦ではベンチ入りを果たす。出場機会は巡ってこず、以降は再びスタンドに戻ったが、選手権出場を決めた後も地道にトレーニングに励んだ。
「応援リーダーになっても腐らずにやると決めていたし、全国大会前から調子が上がってきたんです」
コンディションも徐々に上がり、サブ組のCBでプレーするように。そして、試合日当日にベンチ入りを告げられ、再び応援リーダーから選手に戻ったのだ。
今度こそチームのためにピッチへ立ちたい−−。早々に2失点を喫し、残り30分の時点で1-3。劣勢に追い込まれ、時計の針がアディショナルタイムを迎えようとしていた時だった。酒井はベンチでユニホームに着替えると、後藤聡志監督の下へ。そして、新人戦以来となる公式戦のピッチに足を踏み入れたのだ。最前線に上がった齋藤康友(3年)の代わりにCBへ入ると、堂々たるプレーを披露。出場時間はわずか5分強だったが、高校最後の試合を全力で戦った。
「最後5分間だったけど、ピッチに立てたことは自分の3年間が報われた。やっぱりもっとみんなと長くサッカーをやりたかったけど、ピッチに立っている時に夢を見ている感じで、これが選手権なんだなと思って…。」
試合後、ミックスゾーンに現れた酒井の目に涙が浮かんだ。3年間一緒に戦った仲間。1年生の頃は決められた時間に入れなかった場合はもう1本追加になる持久走でゴールできず、仲間から「練習から外れてくれよ」と言われることもあったという。それでもチームメイトは自分をゴールさせるために、背中を押して一緒に走ってくれた。
最終学年では掛け替えのない友のために、自分が恩を返そうと応援団を志願。多方面と連絡を取り、チームを盛り上げるために縁の下の力持ちを担った。最後はピッチに立ち、最高の時間を過ごしたのは間違いない。
卒業後は日大に進学し、サッカーは部活動には入らずに新たな夢を追う。
「まだ決めてはいないけど、自分の夢はサッカーに携わること。イベントを行う企業に入って、1人でも多くの人に選手権のように感動できる舞台に立つ力になりたいです」
試合は敗れた。だが、後悔はない。「この仲間がいなかったら、ここまで自分はできなかった。この3年間は僕の宝物でした」。新たなステージでも、日大明誠で過ごした時を一生忘れない。
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■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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