生涯チャレンジ――。年齢を重ねても、情熱は尽きない。雨の日も風の日もグラウンドに顔を出し、寮に戻っても子どもたちと同じ時間をすごす。遠征があれば、行動を共にした。孫ほども歳は離れているが、関係ない。サッカーを通じ、人を育てる。74歳を迎えた長崎総合科学大学附属高校の小嶺忠敏監督が、今年も高校サッカー選手権の舞台に挑む。
長崎総科大附を率いる、小嶺忠敏監督
島原商高や国見高で一時代を築いた小嶺監督が、長崎総科大附高に関わり始めたのは今から12年前の2007年11月。V・ファーレン長崎で理事長の責務を全うする傍、大学の教授を努めていた縁で、無名だったサッカー部の総監督に着任した。そこからチームは、2012年に冬の選手権に初出場。
そして、2015年9月に部の強化を図るべく、監督の座に就いた。監督を務めるのは国見高以来、じつに16年ぶり。だが、当時の小嶺監督は長く留まる考えではなく、就任当初は1年間の条件付きでオファーを快諾していた。それでも、周りの声に推され、前言を翻すことになる。
「学校や保護者などが、いい意味で少し厳しくして、リーダーシップを取ることを求めてくれた。僕は70歳ぐらいなのでやる気はなかったけど、『長年の経験を踏まえ、指導者がどうあるべきかを見せて欲しい』と言われたんです。なので、1年間だけやりましょうと。だけど、周りの人からもう少しやってくれと頼まれたんですよ」
そこから本気の改革がスタートする。「本当はゆっくりしたいけど、やるからには本気でやらないといけない」(小嶺監督)。今まで以上の熱量でチームと向き合った。就任当初はサッカー部の活動は整備されておらず、練習環境はお世辞にも恵まれていたとは言い難い。それでも、選手を受け入れる土壌をつくるために奔走。形骸化していた朝練習も見直し、自らが先頭に立って指導に携わった。自らも選手と一緒に寮へ住み込んで、子どもたちに愛情を注いだ。進学を検討している生徒がいれば、自ら足を運んで言葉を交わした。
気がつけば、長崎県を代表するチームに成長し、県外からも選手が集まってくるようになった。だが、いわゆる”サッカーエリート”と呼ばれるような選手はひとりもいない。サッカーの能力が高くても、性格に一癖ある。あるいはプレーの平均値は高くないけど、一芸に秀でた選手。そんな彼らを鍛え上げ、多くの選手を育ててきた。
選手権は今年で4年連続7回目の出場となる。一昨年はベスト8、昨年はベスト16に進出。Jリーガーも輩出し、世代別代表に名を連ねる選手も出てきた。一昨年の安藤瑞季はセレッソ大阪、昨年の鈴木冬一が湘南ベルマーレへ加入。蒔いた種は確実に芽吹きつつある。
選手たちに愛情を持って接してきた小嶺監督。指導歴51年で培った引き出しを適切なタイミングで開けながら、子どもたちと向き合ってきた。ただ、昔のように厳しく指導するだけではない。時には自ら笑いを取りに行くことも多くなった。選手たちにとっては、抱いていたイメージとかなり違ったようで、2年生GKの梶原駿哉はこう振り返る。
「小学生の時から国見高時代の話を聞いていて、『監督は何かあったらすぐに走らせる。俺の比じゃない』と当時のコーチなどに言われていたので、厳しい指導のイメージがありました。なので、本音を言えば、長崎総科大附から誘いの話をもらった時は、あまり小嶺先生に会いたくなかったんです。でも、中学生の時に小嶺先生がわざわざ自分の地元である大分まで来てくれて、実際にしゃべってみたら全然違ったので驚きました」
小嶺監督も「今は飴が7割ぐらい」と言って笑みを浮かべる。では、なぜこれほどまでに変わったのだろうか。理由は今の子どもたちにある。小嶺監督が年を重ねたことで”丸く”なったのもあるが、現代の子どもたちが、以前のようなメンタルの強さを持ち合わせていないことに起因する。
「国見や島原商の時は、選手たちが自分たちで感じ取りながら(行動)できていた。でも、今はそうした判断をできる選手が少ない。なぜかと言うと、家庭環境などが変わってきて豊かになったから。(子どもたちは)何でも言いたい放題、好き放題で、一歩家を出ればコンビニがある。何でも手に入って満足ができるので、自分たちが逆境になった時の力が発揮されるまでが遅いんです」
そうなると、昔と同じように指導をしていても選手は伸びない。常に選手たちの気質を見ながら、それぞれにあった指導を行なう必要がある。
「時代にマッチしたモノを探さないといけない。たとえば、今の子どもたちは長嶋茂雄さんや釜本邦茂さんの現役時代を知らない。釜本さんがすごいシュートを打っていたと話しても、今の子は『何?』という感じになってしまう。なので、今の選手たちに伝わる事例を言わないといけない」
もちろん、自立している選手もいるが、その割合は確実に減っている。だからこそ、小嶺監督は常に選手の動きをつぶさに見ているのだ。
とくに今年は、例年以上に苦労したという。「国見時代を含めてもいちばん厳しい世代」だったため、チームづくりは難航した。9連覇を逃した県新人戦とインターハイ予選はベスト8で敗退。苦戦を強いられた理由は単純に実力不足もあったのだが、メンタルの弱さが成長の足枷となった。ただ、そこで匙を投げていては全国への挑戦権は勝ち取れない。
「今年は60回ぐらい鼻をへし折った。なので、ある程度は頑張れる子どもたちになって、1年間取り組んできたなかで走れるようにもなったと思う」
小嶺監督は選手たちに寄り添い、膝を突き合わせた。毎週火曜日のフィジカルトレーニングでは、何かにつけて回避しようとしていた選手を根気強く指導。
「火曜日に走りの練習をすると決めていても、その当日に病院に行きますと言う子どもたちが多かったんです。わざとかはわからないけど、だから走りの日にちを変更したこともあった」
一方で厳しい練習だけで選手たちが伸びないのもわかっていたため、今年は走りの量を減らして、ボールを使うメニューを増やしたという。
酷評されてきたチームも、徐々に変化を見せる。夏以降はキャプテンのMF高武大也(3年)とエースのFW千葉翼(3年)を中心にまとまり、選手権予選ではタフなゲームを制して勝ち上がった。決勝ではかつて自身が率いた国見を撃破。春先から手を焼いた世代を一から鍛え、4年連続の全国舞台に挑む権利を勝ち取った。
昭和、平成で日本一を勝ち取った小嶺監督が挑む令和最初の選手権。伝統のマンツーマンディフェンスや多様なシステムで相手の特徴を消すスタイルは継承しつつも、選手たちと柔軟な姿勢で向き合ってきた。古きよきものは残しながら、変化を恐れない。その意味を誰よりも知る名伯楽の挑戦はまだ終わらない。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
- 1 トッテナム・ホットスパーFC VS リヴァプール 予想、対戦成績、最新情報2024/1/9
- 2 FCナント VS ASモナコ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/11
- 3 AJオセール VS LOSCリール・メトロポール 予想、対戦成績、最新情報2024/1/11
- 4 ACミラン VS カリアリ・カルチョ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/12
- 5 メンヒェングラートバッハ VS FCバイエルン・ミュンヘン 予想、対戦成績、最新情報2024/1/12
- 6 レアル・マドリード VS RCDマヨルカ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/10
- 7 フラム VS ワトフォード 予想、対戦成績、最新情報2024/1/10
- 8 アトレティコ・マドリード VS CAオサスナ 予想、対戦成績、最新情報2024/1/13
- 9 スタッド・ラヴァル VS レッドスターFC 予想、対戦成績、最新情報2024/1/11
- 10 カルチョ・コモ VS ACミラン 予想、対戦成績、最新情報2024/1/15