令和初の高校サッカー選手権が12月30日についに開幕する。4038校の頂点に立つのはどの高校になるのか。冬の風物詩、全国高校サッカー選手権を展望する。
■Aブロック
令和初となる第98回全国高校サッカー選手権が30日に開幕する。Aブロックは日本一を経験する名門校から、曲者チームや注目校までもが揃い、抽選会では対戦カードが決まる度にどよめきが起こった。どこが勝ち抜くか分からない死のブロックと言っても過言ではない顔ぶれだ。最注目カードは、2回戦から登場する2度目の日本一を狙う青森山田(青森)と米子北(鳥取)の一戦だ。日本一となった昨年からメンバーが大きく変わったが、DF藤原優大、MF古宿理久(横浜FC内定)、武田英寿(浦和内定)と縦のラインに並ぶ実力者を中心に勝負強さを維持。プレミアリーグEASTを制した力は本物で、今年も優勝候補一角と言える。対する米子北もインターハイでベスト16まで進んだ通り、実力は確か。”デカい・速い・左利き”の三拍子が揃ったDF高橋祐翔(大分内定)だけでなく、MF原田海やDF岡田大和といった一芸を持ったタレントが揃うため、前評判を覆したとしても不思議ではない。
両校の勝者と3回戦で対戦する権利をかけた組み合わせも魅力的なカードが揃う。インターハイ準優勝の富山第一(富山)とMF山田真夏斗(松本内定)擁する立正大淞南(島根)は、高校サッカー好きにお薦めしたい一戦だ。共にトリック満載のセットプレーが持ち味のチームだが、淞南の南健司監督いわく相手を戸惑わす仕組みは大きく違うという。そう来たか!と驚きながらも、両者の違いを読み解くのも楽しみの一つかもしれない。MF渡邉綾平、櫻井辰徳を筆頭に今年もタレントが揃う前橋育英(群馬)とエースのMF濱屋悠哉を中心に魅せて勝つサッカーを志す神村学園(鹿児島)のカードも最後まで見逃せない展開となりそうだ。
Aブロックの反対は、各地域で存在感が増す注目校が揃う。インターハイに続いて初出場の専大北上(岩手)は、地元の有力クラブ・ヴェルディSS岩手の出身者が多く、パスワークに定評があるチーム。彼らと対戦する創部7年目の龍谷(佐賀)も、FW又吉耕太と松尾亮汰の2トップが果敢にゴールへと襲い掛かる迫力溢れる攻撃が光る。開幕戦のカードである國學院久我山(東京B)と前原(沖縄)の組み合わせは、類まれな得点力を持つ久我山のFW山本航生を、主将のMF平川龍を中心とした全員の走力で封じられるかがポイントになりそうだ。
近年多数のJリーガーを輩出する昌平(埼玉)と興國(大阪)の一戦も忘れてはいけない好カードだ。両校ともにプロ注目の逸材が多く並ぶ中でも特に注目して欲しいのが、2年生10番の対決。緩急をつけた突破からのパスとシュートが光る昌平のMF須藤直輝に対し、興國のMF樺山諒乃介は力強い突破から放つ左右両足でのシュートが売りだ。試合の行方と共に、来年の高校サッカーの顔をかけたバトルからも目が離せない。
■Bブロック
Bブロックの本命は今年が勝負の年と位置付ける帝京長岡(新潟)だ。今年はインターハイへの出場は逃したが、選手権に照準を合わせて強化を進めてきた。下部組織である長岡ジュニアユースFC時代からチームメイトであるMF谷内田哲平(京都内定)とFW晴山岬(町田内定)、DF吉田晴稀を中心としたテクニカルな戦いは、選手権で8強となった昨年よりも更に成熟している。組織的な”エイミーフットボール”をテーマに掲げる熊本国府(熊本)との初戦は難関だが、突破すれば埼スタまで駆け上がっても不思議ではない。
もう一つの有力候補は、5年ぶり5回目の出場を掴んだ日大藤沢(神奈川)か。予選決勝でインターハイ王者・桐光学園を破った実力は確か。主将のDF青木駿人を中心とした守備は、県の二次予選で無失点。攻撃も清水の練習に参加したMF植村洋斗や、素材感溢れる191cmの大型FW鈴木輪太朗イブラヒームらを擁し、トーナメントを勝ち上がるだけの可能性を秘めている。ただ、初戦で激突する広島皆実も日本一の経験を持つ実力校。今年もMF田中博貴や岡本拓海といった個性的な選手が在籍し、番狂わせを虎視眈々と狙っている。
Bブロックは他にも実力校が並ぶ。C大阪内定のDF田平起也に注目が集まる神戸弘陵(兵庫)だが、MF沖吉大夢を中心に多彩な崩しを見せる攻撃も力はある。全国最多の45回もの出場回数を誇る秋田商(秋田)も迫力ある攻撃が特徴で、ゴール前の攻防が面白くなりそうだ。明秀学園日立(茨城)と高知(高知)との一戦は、MF大山晟那を起点にパワフルな攻撃を繰り出す明秀日立をいかに食い止められるかが勝敗の鍵を握る。DF林優太を中心とした高知守備陣の踏ん張りに期待したい。
MF豊倉博斗らサイドの俊足を活かした戦いを繰り広げる仙台育英(宮城)は、1回戦で初出場五條(奈良)と対戦。五條はMF池田達哉を起点に、ドリブルを重視したスタイルが持ち味で、どちらのカラーを色濃く出せるか見ものだ。北海(北海道)も司令塔のMF杉山壮太を中心に臨機応変な攻撃を繰り出す好チーム。DF田中誠太郎やMF内田裕也など守備ブロックに好選手が揃う高川学園(山口)との1回戦は、最後まで一点を争う手に汗握る試合になりそうだ。
■Cブロック
本命不在でどこが抜け出すかが分からないのが、Cブロックだ。本来なら昨年度4強の尚志(福島)が本命となる所だが、腰椎分離症のため、FW染野唯月(鹿島内定)が選手権不出場。ただ、この一年、彼が代表などで抜けることを想定してチーム作りを行ってきたのがプラスに働くかもしれない。不在となったが主将のFW山内大空やプロ注目のFW阿部要門がカバーできれば、大きな問題はない。GK中川真を中心とした堅守でインターハイ8強入りを果たした徳島市立(徳島)との初戦は、格好の腕試しの場となる。
対抗は、数多くのJリーガーを輩出する名門・静岡学園(静岡)。染野と同じく鹿島への入団が内定するドリブラーMF松村優太だけでなく、DF阿部健人、FW小山尚紀ら各ポジションに実力者が揃い、タレントの質は今大会でも屈指。上手さと力強さを兼ね備えたチームだけに、MF山田龍之介、FW岡田知也ら実力者を擁する岡山学芸館(岡山)との初戦を突破できれば、上位進出も見えてくるだろう。11年ぶりの出場となる筑陽学園(福岡)も東福岡の7連覇を防いだ実力は侮れない。DF吉村颯真とGK野中友椰を中心とした堅守からのショートカウンターが武器で、予選を接戦で勝ち上がった通り、勝負強さが光る。筑陽学園と初戦で対戦する初出場の愛工大名電(愛知)は、苦しい展開が予想されるが、ポテンシャルの高さが目を惹くGK安原哲平にとっては格好のアピールの場になるかもしれない。
2年連続で青森山田と対戦し、初戦敗退が続く草津東(滋賀)は雪辱を晴らす格好のチャンスかもしれない。東久留米総合(東京B)が繰り出すMF佐藤海翔と野口太陽のサイド攻撃を封じ込み、エースFW渡邉颯太にボールを集める回数を増やせれば、勝機がグンと高まるだろう。このブロックで面白そうなのは、丸岡(福井)と長崎総科大附(長崎)の組み合わせだ。FW田海寧生を中心にボールロストを恐れずゴールに挑み続けるアグレッシブな攻撃が光る前者に対し、長崎総科大附もエースMF千葉翼を起点にFW近江光と岩永空潤の両ウイングが、果敢に縦突破を挑み続ける積極性が持ち味。一瞬でも気を抜けば、失点のリスクがあるカードなだけに守備陣の集中力が勝負の行方を左右しそうだ。
山形中央(山形)と今治東(愛媛)、チームを牽引するCBの対決に注目が集まる。竹田憂斗(山形中央)と大谷一真(今治東)は共に上背と全国的な知名度は高くないが、競り合いの強さは目を見張る物を持っている。粘り強く無失点を続け、勝利を引き寄せるのはどちらになるだろうか。
■Dブロック
Dブロックは市立船橋(千葉)が勝ち上がりの最右翼だ。県決勝で昨年度のファイナリストである流通経済大付属柏との打ち合いを制した攻撃力は本物。個人で見ても、DF植松建斗やMF鈴木唯人(清水内定)など各所に世代別代表の経験者が並ぶ。ただし、初戦で当たる日章学園(宮崎)もMF中別府柊太、FW鈴木陽介を擁する実力校で、簡単には勝たせてくれない。DF畑大雅(湘南内定)とDF阿部稜汰による高校屈指のSB対決も試合の見どころになりそうだ。
彼らに続く京都橘(京都)も2012年の準優勝以降は、成績が下降線を辿るが、今年は過去最高成績を狙える好チームに仕上がっている。MF佐藤陽太と志知大輝を中心としたボール回しからMF髙木大輝らが繰り出すサイド攻撃の鋭さは、4強入りを果たしたインターハイでも証明済み。”強い京都橘”に付き物であるFW小屋松知哉(京都)や岩崎悠人(札幌)ら点取り屋の存在も、FW梅村脩斗と梅津倖風によるペアが成長し、快勝しつつある。MF永田貫太、鈴木綺騎が個性的なアタッカー陣が目を惹く鵬学園(石川)との初戦を突破すれば、大会の先行はが明るくなるだろう。
他にもDブロックは拘りを感じさせる注目校が多く揃う。主将のDF長江皓亮を筆頭に大型選手が揃う矢板中央(栃木)の守備力は全国でも上位。空中戦の強さを押し出した戦いはトーナメント向きだ。彼らと1回戦でぶつかる大分(大分)は、真反対の足元重視のポゼッションサッカーが売りで、MF重見柾斗とFW菊地孔明のセンスは光る物がある。矢板中央が繰り出すパワフルな仕掛けを防ぎ、自らの戦いに持ち込めるかがポイントになるだろう。帝京大可児(岐阜)と大手前高松(香川)のカードは互いにパスワークが売りのチームで拮抗した展開が予想される。鍵になるのは飛び道具を活かせるか。前者にはDF神戸政宗、後者にはMF滝平昂也という強肩がいるため、勝敗を分けるのは地上戦ではなく、空中戦となるかもしれない。
ダークホースとなり得るのが、松本国際(長野)。FW木間皓太郎と小林丈太郎のダブルエースを活かした戦いが持ち味で、今年はDF滝澤大輔や小山成格ら大型選手の力強さを備えているのが強みだ。1回戦で当たる和歌山工(和歌山)も、司令塔のMF岩橋陽世を中心としたコレクティブな組み立ては一見の価値あり。多くの選手が卒業を機に就職するため、サッカーに打ち込めるのもあとわずか。最後の晴れ舞台に挑む彼らの勇士にも注目して欲しい。
伝統校の四日市中央工(三重)に挑む格好の初出場の日大明誠(山梨)は粘り強さがチームの信条。選手権がプロ入りをかけた就活の場となる天才ドリブラー・MF森夢真やFW田口裕也(鳥取内定)による迫力十分の攻撃を封じ、全国大会初勝利を狙いに行く。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
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■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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