昭和、平成、令和と、3つの元号を監督として生き抜いてきた古参の将
長崎総科大附を4年連続7度目の選手権出場に導いた小嶺監督。今年のチームの出来栄えは?写真:山崎賢人
今回で98回目を迎える全国高校サッカー選手権。令和最初の大会を制するのは果たしてどこか。青森山田が連覇を達成するのか、それとも昨冬ベスト4の尚志がリベンジを果たすのか。はたまた新興勢力が台頭するのか――。チームと選手たちが紡ぎ出す物語に、興味は尽きない。
冬の檜舞台の対戦カードを決めるべく、11月18日に組み合わせ抽選会が行なわれた。まさに大会の行方を左右する運命の瞬間。代表校が決定していない群馬、千葉、神奈川、新潟、福岡以外の出場校が一堂に会する催しで、各チームのキャプテンが緊張した面持ちでくじに手を伸ばす。決まれば、トーナメント表にボードが掲げられ、時間の経過とともに48の空きスペースはどんどん埋まっていった。
注目校同士の顔合わせになると会場が湧き、前年度王者・青森山田の対戦相手が常連校の米子北に決まった際はどよめきが起こったほどだ。各校の指揮官たちも注意深くその様子を見守っていたなかで、温かい眼差しで壇上に視線を送るひとりの人物がいた。2011年から長崎総科大附で指揮を執る名伯楽、小嶺忠敏監督だ。
74歳を迎えた今もなお現場に立ち続ける小嶺監督。夏のインターハイ、冬の選手権、全日本ユース選手権(現・高円宮杯JFA U-18プレミアリーグ)でタイトルを勝ち取り、全国優勝は14回を数える。とりわけ、一時代を築いたのは島原商を経て、1984年に赴任した国見の時だ。
厳しくも愛のある指導でチームを鍛え上げ、多くの選手をプロの世界へと送り込んできた。三浦淳寛、大久保嘉人、平山相太などを育て、名を挙げた教え子の数は枚挙にいとまがない。
島原商で指揮を執り始めた1968年から数え、今年で51年目。昭和、平成、令和と、3つの元号を監督として生き抜いてきた古参の将は約半世紀に渡り、選手たちと膝を突き合わせてきた。
「長年やっているから、どうなるか分かるんですよ」
柔和な表情を浮かべつつも、その目は今も昔も変わっていない。まさに高校サッカー界の生き証人である。
その情熱は衰え知らずで、今年もチームの最前線に立ってきた。ただ、例年以上に難しかったようで、全国に導くまでには相当の苦労があったという。
「国見時代も含めて一番苦労した年だった。選手たちは能力があると思い込んでいるけど、『こんなもんじゃない』って思っていたね。だから、全国での立ち位置を考えなさいという話をしてきた」
予選決勝では2年生GKを抜擢。見事に期待に応え全国切符を勝ち取る
今年は春先から苦戦を強いられた。鈴木冬一(現湘南)を擁してベスト16入りを果たした昨年と比較しても、個々の力で見劣りしていたのは否めない。県新人戦は8強止まり。夏のインターハイ予選も同じく準々決勝で姿を消した。だが、小嶺監督は変わらず、子どもたちに愛情を注いだ。根本にあるのは選手を信じること。遠征があれば帯同し、学校では孫に近い年の子どもたちと寮で寝食を共にする。時には近い距離で接し、冗談を交えて笑いを取りながらモチベーションを高めてきた。今まで培ってきた様々な引き出しを開けながら、チームをひと回りもふた回りも逞しくさせてきたのだ。
今回の地区予選決勝でも、選手を育てるスタンスを変えなかった。相手はかつて指揮を執った国見。この大一番でU-16日本代表歴を持つ2年生GKの梶原駿哉を起用した。少なからず不安もあったが、小嶺監督は信念を貫いた。
「コーチ陣から反対もあったけど、負けてもいいから使おう」
もちろん、負けるつもりでピッチに送り出したわけではない。この言葉は何かあれば俺が責任を取る覚悟を表わしたものだが、「あいつがいなかったら負けていた」というパフォーマンスで梶原も期待に応えた。
そうした信頼関係を選手たちと築き、再び選手権の舞台にやってきた。長崎総科大附では4年連続7度目の出場。ただ、最高成績は2年前のベスト8で頂点には立っていない。今大会は1回戦で古豪の丸岡と対戦することが決まった。
「今のチームは受けて立つような力はない。彼らがどんな戦いをするか。まあ、このチームで4つまで行っても負けるんだから(笑)」
不敵な笑みを浮かべた小嶺監督だが、4強で負けるつもりなんて毛頭ないだろう。令和で迎える初めての選手権――。名伯楽は子どもたちとともに新たな歴史を作る。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
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[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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