鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希
今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う
“半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。
鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。
近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。
一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨しながら全国舞台に顔を見せていた。しかし、最後に全国大会に出場したのは2016年度の選手権で、以降はライバルの壁を越えられずにいる。
迎えた今季。同校のOBで2018年から指揮官を務める新田祐輔監督の下で力を付けると、1月の県新人戦で神村学園を2−0で下し、4年ぶり優勝を果たした。2月の九州新人戦でも如何なく力を発揮し、決勝では再び神村学園を撃破。前半に奪った3ゴールを最後まで守り切る完封勝利で、さらなる飛躍を予感させた。
夏のインターハイ予選は、0−2で神村学園にリベンジを許したが、決してチーム状況が悪いわけではない。以降もプリンスリーグ九州1部で優勝争いを演じており、9月28日の時点で首位の日章学園と勝点2差の暫定3位に位置する。怪我人を抱えているが、選手権予選には戻ってくる見込みで、万全の状態で最後の大舞台に挑めるのはプラスの材料だ。
とりわけ、今年のチームは攻撃陣にタレントがおり、得点力は神村学園に引けをとらない。スピードが武器のFW矢吹凪琉(3年)や身体能力が魅力のFW岡留零樹(3年)に加え、U-16日本代表のFW大石脩斗(1年)も台頭。状況に応じて組み合わせを変えられるようになり、“仕掛け”の幅が広がった。
2列目のMF石内凌雅(3年)も含め、個性的なタレントが織りなす攻撃は十分に全国舞台でも通用するレベルだ。守備陣もCB横山輝人(3年)を中心に安定感が増しており、簡単には崩れない。神村学園の牙城を崩す可能性は決して小さくないだろう。
期待感が高まるなか、右肩上がりで成長を続けている選手がいる。彼らを操るMF芹生海翔(3年)だ。
来季からの藤枝への加入が内定している司令塔の主戦場は、ボランチとトップ下。試合展開によってプレーエリアを変えながら、推進力を武器に攻撃を牽引している。身体の使い方が上手く、体勢を崩されても前にボールを運べるタイプでパスセンスも高い。シュートの意識も高く、3列目から飛び出してゴールを奪う術を持ち合わせている点も芹生の魅力だ。
「やらないと生き残れないと感じたんです」
また、守備面の成長も著しい。昨季までは上級生に頼り、ディフェンスに関しては物足りない部分があった。だが、藤枝の練習に参加した経験が自身を変える。春先に初めてプロのトレーニングを体験すると、守備の重要性を痛感させられた。
「去年は3年生が守備をしてくれていて、自分が自由にできた。3年生になってからは自分がやらないといけない意識も出たのもありますが、何より藤枝の練習に行ったことが大きかった。守備が重要視されている戦術でそこをやらないと生き残れないと感じたんです」
プロの選手に混じってもプレースピードで戸惑わなかったが、プレー強度や守備の意識はまだまだ物足りない。そこから芹生は得意の攻撃面だけではなく、守備でもチームに貢献できる選手に変貌を遂げていく。
新田監督も賛辞を送り、「守備のスイッチを入れるのが上手くなった。前の選手に合わせて、スッとプレスをかけられるようになりましたよ」と成長ぶりに目を細めるまでになった。
また、夏にU-18日本代表の活動にサポートメンバーとして参加した点もプラスになっている。試合に出場できない立場ではあったが、SBSカップ国際ユース大会を戦う同世代の仲間たちから大きな刺激を受けたという。
「移動着を着ただけだけど、日の丸を背負うプライドを感じた。(ピッチ外でも)食事をしながら体重を増やした方がいいと思ったし、ピッチ外の取り組みも勉強になりましたね」
特に刺激を受けたのは、同じポジションの大関友翔(川崎)だ。
「見えているところが違った。『そこにパスを出すのか』みたいなプレーが多かったし、参考になることがあった。ピッチの外から見ていれば『ここ空いてるな』というのは見えるけど、ピッチ内だと見えないこともある。それでも大関選手は見えているので、本当にすごいなと感じた」
憧れはベルギー代表のケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)。九州屈指の司令塔は世界的名手のように、攻守でチームに貢献できる選手を目標に掲げる。
チームを久しぶりの全国舞台に導くためにもさらなる成長は必須。7年ぶりの選手権出場を目ざすチームのために、芹生は歩みを止めるつもりはない。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
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