令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技は7月29日から8月4日まで熱戦が繰り広げられ、明秀日立高(茨城)の初優勝で幕を閉じました。「インターハイ11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣にインターハイで活躍の光った11選手を紹介してもらいます。第1回は“ユース教授”ことサッカージャーナリストの安藤隆人記者による11人です。
安藤隆人記者「8日間にわたる激闘が繰り広げられた旭川インターハイ。明秀日立と桐光学園の関東対決となった決勝は、桐光学園が2点差から追いつくしびれる展開となったが、最後は明秀日立がPK戦の末に初優勝を手にした。今大会を初日から最後まで見て、純粋に活躍度を持って大会ベスト11を選出させてもらった。フォーメーションは【4-4-2】。今年は3年生の活躍が目立った大会となり、ベスト11も多くが3年生となった」
以下、安藤記者が選出したインターハイ11傑
山本 碇
齋藤 松田
神田 吉田
尾野 平田翔 平田大 長谷川
ギマラエス・ニコラス
GKギマラエス・ニコラス・ロドリゲス(市立船橋高2年)
全体的に非常に安定感のある守護神だ。バネとフィジカルがあり、ハイボールの処理は非常に落ち着いたものがある。セービングもシュートコースをしっかりと見極めてから、スムーズな手の出し方と跳躍で広範囲を防ぐことができる。DFラインに対するコミュニケーションもスムーズで、今大会も常に声をかけながら守備を統率。ベスト8で尚志に敗れてしまったが、終始安定したプレーを見せていた。
DF尾野優日(日大藤沢高3年)
今大会を通じて光ったのは攻撃力というよりも守備のカバーリングとクロス、対角のボールの質だった。横へのスライドは非常に効果的で、攻撃にウェイトを置くチームにおいて、ダブルボランチやサイドハーフが飛び出した後のスペースを埋める動きは秀逸だった。1対1の対応もよく、今大会では守備面での貢献度が高かった。
DF平田大耀(国見高3年)
国見のベスト4進出の立役者。高い打点のヘッドと細かいラインコントロール、そして対人の強さを発揮して、最終ラインに強固な壁を築いた。準決勝の桐光学園戦では両サイドから矢のようにやってくる齋藤と松田のドリブルに対しても、冷静にシュートコースを切り、中央を破らせないように対応。キャプテンシーも抜群で、彼の統率力によって国見は全試合無失点を達成した。
DF平田翔之介(桐光学園高3年)
チームメイトやスタッフから「のすけ」と愛称で呼ばれていた彼は、大会を通じて冴えた読みを駆使した鋭い出足のインターセプトを何度も披露した。奪ったボールをそのまま前に運んで両サイドやFW宮下拓弥につけるパスは絶品で、空中戦でも長い対空時間と、フィジカルの強さを見せて制空権を握った。試合中に「のすけ」と呼ばれる声が非常に多いほど、周りから頼りにされ、信頼されていた。
DF長谷川幸蔵(明秀日立高3年)
「いつも『なぜそこにいるの?』と言われるんです」と笑ったように、彼は右サイドバックでありながら神出鬼没の動きを見せた。それは決して好き勝手やっているのではなく、守備のやり方を相手や状況によって緻密に変化させる明秀日立において、「みんなの立ち位置やプレスの掛け方を見て、空いている場所やチャンスになる場所に行くようにしている」と感覚を研ぎ澄ませてポジションを取る。守備のうまさもあり、非常に見ていて楽しいサイドバックだ。
MF吉田裕哉(明秀日立高3年)
桐光学園との決勝戦では彼がまさにゲームの中心となっていた。豊富な運動量と技術レベルの高さを兼ね揃えたボランチである彼に大きな衝撃を受けたのは、その予測とプレーの組み立ての選択の速さだ。あまり止まることなく、常にステップや体の向きを変えながら動き、ボールを自分からアプローチに行って、ドリブル、キープ、パス、クリアと流れるように的確なプレーをする。「常に遠い場所から見て、判断をしています」とサラッと言ってのける彼の今後に期待しかない。
MF神田拓人(尚志高3年)
攻撃陣に多くのタレントを有する尚志はプレミアリーグでも今大会でも圧倒的な攻撃力でベスト8まで勝ちがあった。その裏には彼の高い守備力と全体のバランスを整える頭脳的なプレーの数々があった。常に全体を見渡しながら、攻めている時にこそカウンターリスクのある場所を探して、そのスペースを埋めながら、かつ足元の技術とパスセンスで攻撃にアクセントを加える。競り合いも強く、尚志にとってなくてはならない選手であることを今大会で改めて印象付けた。
MF齋藤俊輔(桐光学園高3年)
両サイドは桐光学園の2枚看板ドリブラーが強烈すぎた。齋藤のドリブルは直線的かつ急加速と急停止を繰り返しながら、鋭い身のこなしで縦もカットインも仕掛けられる。準々決勝の尚志戦との大一番で見せたドリブルからのミドルシュートは圧巻だった。この大会を通じて、ドリブルの質はどんどん上がって行った。準決勝の国見戦で右スネを打撲し、決勝は後半からのプレーになったが、後半から延長戦にかけてのドリブルはもう止められなかった。
MF松田悠世(桐光学園高3年)
今年注目のドリブラーはよりその馬力とキレが増したように感じた。利き足である左足だけではなく、右足を頻繁に使うようになり、特にアウトサイドの持ち出しが増えたことで、より相手の懐に潜り込みながらボックス内に侵入をしてフィニッシュに持ち込める回数が増えた。今大会もボールを持って複数枚に囲まれても果敢に突破を試み続けたことで、相手の守備は混乱し、疲弊した。決勝での同点弾は彼の持ち味を凝縮した見事なゴールだった。
FW碇明日麻(大津高3年)
CB、ボランチ、インサイドハーフ、FWとセントラルポジションならどこでもできる選手として注目され、J2の水戸加入が内定した彼は、今大会では【3-4-2-1】のインサイドハーフでプレー。チームは初戦で市立船橋に敗れてしまったが、この試合は今大会のベストバウトと言っていい試合だった。その中で彼が見せたクロスからの反転シュートは凄さまじいの一言。あの一撃でベスト11位入りが決まった。
FW山本吟侍(高川学園高3年)
スピードがあって、ポストができて、キックもうまい万能型ストライカーは、真夏の旭川で進化の後を見せた。走るフォームがきれいになっており、かつ何度も、何度もスプリントを繰り返してゴールに迫るなど、迫力が出てきた。この迫力は前線からの守備の質の向上にも繋がっており、高川学園でスプリントコーチに本格的な走り方の指導を受けてきた成果が着実に出ていることを証明する大会でもあった。
執筆者紹介:安藤隆人
日本列島、世界各国を放浪するサッカージャーナリスト。育成年代を精力的に取材する“ユース教授”。主な著書は『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』『壁を越えろ 走り続ける才能たち』(いずれも実業之日本社)、『高校サッカー聖地物語』(講談社)。共同制作として、『15歳 サッカーで生きると誓った日』(梅崎司)、『そして歩き出す』(早川史哉)、『ムサシと武蔵』(鈴木武蔵)、『ドーハの歓喜』(徳間書店)
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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