Jクラブとしても、ひとりの指導者としても、注目される人事が行なわれた。昨季まで市立船橋高校の監督を務めた朝岡隆蔵監督(42歳)が、今季からジェフユナイテッド市原・千葉アカデミーU-18Aの監督に就任することが発表されたのだ。
朝岡監督は、3月末に母校の監督を退任後、日本高校選抜を率いて欧州へ遠征。4月24日に帰国後、ジェフ千葉U-18の指導にあたっている。5月9日、クラブハウスで取材に応じ、新たな挑戦について「公務員は転勤もある。今後、5年、10年と同じ現場にいることはできないと思ったし、(母校である)市立船橋以外の高校で監督をするイメージは、持てなかった。ジェフは、千葉出身の私にとって一番身近なプロクラブ。(ユース年代同士でも交流があり)練習も試合もよく見ていただいている。その上でオファーをいただいたので、名前(や成績)だけでないところで評価してもらったと理解し、タイミングの(難しい)ところはあったが、引き受けた」と決断の背景を語った。
Jクラブの場合、OBがアカデミー(育成組織)の指導者を務めることが多く、高校の強豪校から監督を迎えることは珍しい。また公務員の職を辞してプロ指導者に転身する事例も、決して多くない。朝岡監督に数年前から打診していたことを明かした千葉の高橋悠太GMは、自選手が通う学校との連係や寮などクラブとしてアカデミー全体のインフラ整備が進んでいる手応えがあるなか、さらに前進するために「ひとつはネームバリュー(と実績)があり、選手や親御さんが信頼できること。もうひとつは、選手をトップチームに輩出するために、どんな選手でなければならないか、(成長のために)どんな要素が必要かということを把握していること」と新監督決定の方針を定め、朝岡監督にオファーした経緯を説明した。
クラブOBではなく、外部から招へいする形になったことについて、高橋GMは「クラブのOBも含めてリストアップした中で行き着いた」と断ったうえで「特にアカデミーの世代は、精神的な成長も大きい。(朝岡監督が教職員として)学校で生徒を身近で見て来た経験は、今、すごくジェフには必要。最終的にジェフのエンブレムを付けて絶対に活躍するという思いを持つ選手をより多く育てるには、いろいろな経験が必要。プロクラブで働いてきたという以外の部分も、なんとなくジェフには足りていないと感じていた。人間的、精神的にも強い選手を育てるうえでは、多くのクラブ、選手を見て来た経験は必要だと感じていた」と朝岡監督が中学、高校、街クラブと様々な環境で指導してきたキャリアと、そこで培った指導力を評価したことを明かした。
ジェフ千葉U-18は、トップチームに在籍する佐藤勇人、佐藤寿人、工藤浩平、鳥海晃司、古川大悟を含め、多くのプロ選手を輩出しているが、一方で育成に歴史のあるアカデミーでありながら、チームとしての成績は伸び悩んでいる。以前は高円宮杯U-18プリンスリーグ関東を戦っていたが、2017年に降格して以降は、千葉県1部リーグに属している。アカデミーでは、チーム強化より選手の育成が重視される。しかし、才能ある小学生や中学生が目指すU-18チームとなり、強度の高い試合を通じて成長を促すためには、レベルの高いリーグが育成環境として重要だ。
同じ千葉県でも、柏レイソルU-18、流経大柏高、市立船橋高は、最高峰のプレミアリーグを戦っている。2段階下のリーグではなく、同等のリーグに昇格することもクラブとしての課題だ。当面の目標として、トップチームへの選手輩出とプリンスリーグ関東への昇格を掲げた朝岡監督は「選手たちには、好感触を持っている。しっかりとした指導を受けていて(指導に対して)修正する反応が早い」と話したうえで「個のポテンシャルは、もうひとつ足りていないし、もっと大人にしていかないといけない。(育成世代は)トップに上がるとか、試合に勝つという目標のために必要な思考やメンタリティを間違えてつまずく選手が多いので、捉え方、考え方を少しずつ伝えていきたい」と、さらに成長させるために取り組む課題を指摘した。
公立高校サッカー部の場合は、監督が強化組織のトップだ。しかし、プロクラブではクラブが育成方針を決め、アカデミーダイレクターなどと大枠の方向性や目標を共有しなければならない。朝岡監督は「公立高では、自分の考え方一つで良い方向にも悪い方向にも大きく変わる。プロクラブでは、考えをすぐに実行に移せるようなスピード感はなくなるが、他のスタッフとの合意の下に物事を進めて、みんなで(成功を)勝ち取っていくことに喜びを感じている。コミュニケーションをしっかりと取って(勝手に)突っ走らないように気をつけなければいけないとも感じている」と異なる環境で新たな刺激を受けていた。
朝岡監督は、市立船橋高で監督就任初年度に全国高校選手権を優勝。その後、インターハイを2度制覇。3度の日本一に輝いている。その中で、ジェフ千葉に進んだ杉山弾斗(富山へ育成型期限付き移籍中)のほか、昨季のルヴァンカップ決勝で決勝ゴールを決めた杉岡大暉(湘南)、原輝奇(鳥栖)など多くのプロ選手を育ててきた。チームの強化と個の成長。高校サッカー界で見せた手腕が、Jクラブでどのように発揮されるのか、注目される。
森田記者が推薦するMF長田叶羽(ガンバ大阪ユース、3年) 7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集!「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第1回は関西の高校生を中心に各カテゴリーを精力的に取材する森田将義記者による11名です。 森田記者「すでにトップチームに欠かせない戦力になりつつある広島ユースのMF中島洋太朗。6月の新潟戦でJ1デビューを果たした鹿島ユースのFW徳田誉。高3ながらもこの夏、海外に渡る熊本のFW道脇豊。今年はアカデミー出身の若い選手の飛躍が目を惹きますが、クラブユース選手権(U-18)には彼らに続く可能性を秘めた選手がまだまだ存在します。今回は夏の祭典を機にブレークを果たしてくれると期待し、見た試合でのインパクトが...
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)] 相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。 「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。 真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2...
[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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