目標の3冠へ、強敵との戦いを全部勝つ――。青森山田高(青森)は9日の高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EAST第11節で前橋育英高(群馬)に2-1で逆転勝ち。先制され、2失点目のピンチもあったが、DF陣が幾度も相手のシュートをブロックし、セットプレー、クロスからのゴールで試合をひっくり返した。前半戦のラストゲームを終え、リーグ戦の成績は8勝2分1敗。2位・川崎F U-18(神奈川)と勝点4差の首位でリーグ戦を折り返した。
“高校年代最高峰のリーグ戦”で強さを示している青森山田の中心的な存在が、CB山本虎主将(3年=青森山田中出身、22年U-16日本代表候補)と10番のボランチMF芝田玲(3年=青森山田中出身、23年U-17日本高校選抜候補)だ。主将の山本は守備能力の高さに加え、高校年代トップクラスのキック精度、プレミアリーグでも3得点をマークしている得点力も兼ね備えた注目DF。一方、昨年から中盤の柱を担う芝田は正確なスルーパスやプレースキックで違いを生み出すほか、チームが苦しい時に戦うこと、声を出すことができるもう一人のリーダーだ。2人が首位ターンしたプレミアリーグEASTやお互いの存在について、また神戸弘陵高(兵庫)との初戦から始まるインターハイ(7月29日開幕)へ向けた意気込みについて語った。
―プレミアリーグEASTで首位ターン。
山本「前節、2位と勝点4差になって、今日の試合は悪かったんですけれども、その中でも勝ち切れて4差のまま終われたことは大きいことだと思っています。でも、暑い中でもっと戦わないと、インターハイは連戦が続くので、もう一回(青森へ)帰った時に体力強化をやっていきたいと思っています」
芝田「まずは前期首位で折り返せることは、目標にしていた部分です。3冠というところに目を向ければ、首位ターンしなければいけないものだったので、チームとしては評価できると思います。でも、個人としても、チームとしても、まだまだ今日の試合を見ても、インターハイ予選明けの3連戦を見ても、課題が山積みなので。できないことから逃げずに、しっかりと自分が目を向けてそこを言っていかないといけないですし、妥協させてはダメですし、試合後も満足している選手はいませんでしたが、もっともっと『これからだぞ』というところは自分も伝えました。(インターハイへ向けて、)チームとして優勝に向かって貪欲に強化できるところは少しでも強化して臨むということは、やりたいと思っています」
―プレミアリーグの勝因をどう感じている?
山本「やっぱり前半凄く良くない試合というのが多かったけれど、その中で後半逆転したり、失点しても逆転できるチームになってきたと思います。最初の3戦は(失点)ゼロでそのあとは失点してしまったという課題があるんですけれども、逆転できるチームになったというのは凄く大きいかなと思います」
芝田「自分がこのチームの核になっている中で、前半は良くないっていう時間帯には正直自分もイライラしてチームメートに当たってしまうこともあったんですけれども、やっぱりそこはチームとしてここに勝ちに来ているということをもう一回自分の中で整理して、みんなを励ます声というか、こういう暑い中で誰がリーダーシップを持っているかと言ったら自分しかいないと思っているし、甘く、優しく言うだけじゃダメだと思っているので、そこは厳しく言いながらもハーフタイムには改善点を話す。一方通行や愚痴にならないようにということは意識して、そこでの修正力は後半勝てている要因だと思うので。それをインターハイ70分しか無い中で、後半修正すれば良いというのは自分たちも望んでいる戦い方ではないですし、もっと入りからやれるように、(監督の)正木さんのマネージメントだけではなく、自分や虎の経験をもっと活かさないとこのままではインターハイでは取られて取れずに負けるというのが容易に想像がつくので、改善策を見つけてやっていかないといけない」
―今日(前橋育英戦)は後半のシュートブロック、執念の部分も勝因に。
芝田「でも、今日の試合はあそこ(ゴール前)まで簡単に侵入されていたので、あそこのシュートブロックは自分は絡めていなくて、みんながしてくれたものなのでそこはありがたいですけれども、あの一番危険なところを簡単に取られてしまうとやっぱり失点の確率が……今日は勝てたものの、という感じなので、良くはなかったですね」
―あれだけのシュートを止めたのも相当だと思うけれど。
山本「芝田も言っていましたけれども、あそこで侵入されることはまず良くないことなので。(5-1で勝った)昌平戦でできていたことは、PAで侵入されないことだったので、そこに侵入させなければカウンターで前の選手も行けますし、守備がライン下げずに前に行くということをやっていかないといけない」
―インハイの組み合わせ(初戦で神戸弘陵高、2回戦で東京1位の國學院久我山高、互いに勝ち上がれば3回戦でプレミアWEST首位の静岡学園高と対戦の可能性)を見て感じたことは?
山本「どの試合も勝って行けば、全部(相手が)強くなっていくと思います。全部強い相手ですが、全部勝てば『本当のチャンピオン』だと思うので。最初3試合連続ですけれども、そこを勝てば一日空くので。まず3試合勝って、あとの3試合も波に乗れば勝てると思うので、そこ(組み合わせ)はちょっと嬉しかったです」
芝田「シーズン前のガバナーカップで神戸に行った時に、『今年の神戸弘陵は結構強いよ』というのは聞いていて、(初戦が)神戸弘陵となった時に結構強いんだろうなというのがあります。(2年前のMF松木)玖生さんの時の組み合わせと比べたら自分たちの方が難しい組み合わせになっていると思いますし、その中でより価値のある優勝ということを考えたら、虎も言っていた通り全部倒せば良い。強いチームとやって全部倒してというような感じなので、初戦が神戸弘陵というのは、大会前の宿舎からピリッとした空気になる良い組み合わせだと思います」
―インターハイはそれぞれにとって、どのような大会?
山本「(優勝した)1年目はサポートメンバーとして帯同させてもらって、静学戦(準決勝、被シュートゼロで4-0)は本当に、あの相手にこんな圧倒的な試合ができるって凄いって思っていました。去年は自分が出ながら何もできなかったというのが悔しかったので、両方経験した上で、今年はもう一回2年前のような戦いができるチームにしていきたいです」
芝田「35分ハーフの短い時間の中で、山田としては入りで勝って押し切るという勝ち方が一番良いかなと(個人的に)思っています。(今年は)こういう(前橋育英戦のような)スロースタートみたいな試合ばかりを自分たちはしてしまっているので、そこを山田と言えば、入りの圧倒的なパワーというところがあるので、インターハイの中で戦い方を確立していくしかない。入りのところで圧倒して、そこで押し切ってという戦い方を全試合して、優勝できればなと思います」
―山本君にとって芝田君、芝田君にとって山本君の存在はどのように感じていますか?
山本「今日の試合もそうなんですけれども、キツイ、暑い時間とかに芝田はチームを鼓舞してくれますし、ダメな時はみんなに厳しく言って、褒める時は褒める。本当に自分がキツイ時にやってくれて、自分もやらなければと思うので、そこは凄く自分に刺激というか、やらなければいけないと思わせてくれる存在です」
―プレー面については?
山本「チームが慌てているというか、落ち着かない状況で芝田は落ち着かせてくれるので、CKとかプレースキックでもアシストしてくれますし、チームの中心として欠かせない存在です」
―芝田君はどうかな?
芝田「自分は2年生頃から虎に『もっとやんないと』ということはずっと伝えてきましたし、やっぱり自分しか虎に言えるやつはいないと思うので、その中で虎ももちろん自分に言いますし、お互いに言い合える関係。自分と虎が中心になっている中で、それが王様になってしまうようなチームはいけないと思うので、お互いがお互いにしっかり言いながら、その中でも(2人が)自分のプレーにしっかり集中して、周りを鼓舞するのはやっていけたらなと思っています」
―プレー面は?
芝田「(山本は)サイドチェンジやボールを持った時の落ち着きは自分がサポートに入らなくても良いというくらいの安心感がありますし、今年キャプテンとしてチームを鼓舞してくれる回数は去年に比べたら格段に増えているので、頼もしくなっていると思います」
―それぞれ、自分の成長をどう感じている?
山本「去年は自分を出せなかったというか、みんなに任せてしまって遠慮してやっていた部分があったので、今年はキャプテンになって責任感が生まれて、チームが苦しい時に点を奪える選手になるということは思っているので、そこは徐々に成長できている部分だと思います」
―怪我のスタートだったけれど、ベストシーズンになっている。
山本「やっぱり夏以降。これからだと思うので、将来、プロに行くためにはもっと成長していかないといけない」
―芝田君は?
芝田「山田がボールを保持することを志向しているチームではないので、何回も何回も自分が触ろうと思っていますけれども、触れる状況の試合が多いわけじゃないので、その中で自分にボールが入った時は違いを見せたいなというのはあります。ボールを触っている方が中盤は見栄えが良いと思うので、自分にボールが入った時に『やっぱりコイツは違うな』というのをプレースキックもそうですけれども、違いを見せれる選手にならないといけないと思っています。そういう意味では、今日のようにしんどくなった時に自分でボールを運んで、前に持って行ったりということはやろうと思ってしていますけれども、もっとそういう回数を増やして、もっとこのチームに良い影響を与えないとなと思っていますし、10番をつけて戦えるインターハイ、後半のシーズン、もっともっと自分が成長してやりたいなと思っています」
―ピッチ外は?
芝田「虎は子供です。それがオレらの良いところだと思いますけれども、ピッチの中は厳しくやっていますけれども、ピッチの外は自分たち山田内では幾つかカテゴリーがありますけれども、みんながフラットになるのが自分たちの代の良いところだと思っている。山田中学校がある中で、やっぱり(みんな仲が良くて)、そういうのが今年は良いところかなと思っています」
山本「芝田も言っていましたけれども、カテゴリー関係なく本当にサッカー以外はみんな子供というか。私生活は(はっちゃける方が)自分たちは楽しい」
芝田「ワチャワチャしているだけです(微笑)」
―最後に、インターハイはどのような大会にしたいですか?
山本「(将来、)プロに行くということを考えたら、優勝しないと意味がないと思う。(初戦まで)2週間時間があるので、自分の足りないところを見つめ直して、本当に個人もそうですけれども、チームも成長して、インターハイで優勝できればと思います」
芝田「自分は今年中に代表に入りたいという思いがあるのでアピールの場にしたいですし、その中でチームとして2年生の時から掲げている3冠を本当にこのチームみんなで絶対に達成したいですし、インターハイ落とせば3冠はできないので、本当に気持ちの入った最高の大会にしたいと思います」
(取材・文 吉田太郎)
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[10.12 国体少年男子1回戦 東京都 1-1(PK4-2)鹿児島県 OSAKO YUYA stadium] 東京都が“決勝戦”と位置づけていた一戦を突破した。対戦した鹿児島県はともにU-16日本代表のMF福島和毅(神村学園高1年)やFW大石脩斗(鹿児島城西高1年)を擁し、地元国体のために準備してきた注目チーム。この日は、800人の観衆が地元チームを後押ししていた。 だが、石川創人監督(東京農大一高)が「僕らは『ここが決勝戦だ』と言ってチームを作ってきた」という東京都が、強敵を上回る。技術力の高い選手の多い鹿児島県に対し、MF仲山獅恩(東京Vユース、1年)とMF鈴木楓(FC東京U-18、1年)中心にコミュニケーションを取って準備してきた守備で対抗。相手にバックパスを選択させたり、奪い取る回数を増やしていく。 鹿児島県の巧さの前に迫力のあるショートカウンターへ持ち込む回数は少な...
※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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