ゴールセンスが凝縮された一撃! Jスカウト注目の市立船橋エースが宿敵との決勝で示した“半端ないポテンシャル”【総体予選】
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調子が万全でなくとも大一番で仕事を果たす。市船FW郡司(10番)はエースの面目躍如たる活躍をみせた。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 

2年時から名門でナンバー10を背負う

 

 やっぱり、頼りになる。まさにエースの仕事だった。

 

「あれを決めるのはスーパー。決め切ってしまうのは能力の高さなんでしょうね」(流経大柏・榎本雅大監督)と、敵将をも唸らせるゴールを決め、市立船橋を2年連続となる夏の全国舞台へと導いた。

 

 6月18日、インターハイの千葉予選決勝が行なわれ、市立船橋は流経大柏と対戦。長きに渡って県内の覇権を争ってきたが、インターハイ予選の決勝で対戦するのは2017年以来となる。しかも、千葉県の出場枠が2校から1校になってからは初。そんなライバル同士の戦いは立ち上がりから終盤まで白熱の攻防が繰り広げられ、市立船橋が3-2で制して出場権を勝ち取った。

 

 伝統の一戦で輝きを放ったのが、市立船橋で2年時から10番を背負うFW郡司璃来(3年)だ。

 

 最大の見せ場は1-0で迎えた前半17分だった。チームはゲーム序盤から守勢に回り、2トップの一角で出場した郡司に良い形でボールが入らない。その状況下でカウンターのチャンスが訪れる。MF佐々木裕涼(3年)が自陣で大きくクリアすると、ボールは敵陣へ。これに反応したのが郡司だ。右サイドでボールを拾うと、一気にスピードを上げてゴールに迫る。

 

 凄かったのはここからだ。相手CBの高橋力也(3年)がカバーに入ってきたところ、キックフェイントで一度外す。そのまま左足でシュートを打つ体勢に入ったが、郡司は冷静だった。

 

「シュートを打つフリをして、一度切り返して、そこから打つつもりだった。でも、もう1回切り返せば、相手が滑ると思ったんです。その読みがうまく当たった」

 

 ふたたびフェイクを入れて相手を手玉に取ると、GKしかいない状況に。深い位置まで入っていたため、角度がなく、シュートコースはファーサイドしかない。限られたコースにきっちりと打ち込んで、チームに貴重な追加点をもたらした。

 

 最終的に5ゴールが飛び交う撃ち合いとなったが、郡司の一撃が勝負を決定づけたといっても過言ではないだろう。

 

「勝負が決められるような選手にならないといけない」

 

 これぞ10番の仕事でチームを勝利に導いた郡司。技術力や一瞬のスピードはもちろん、狡猾な駆け引きや小柄ながら倒れずに前に運べる強さなど、この決勝でも特徴を随所で披露した。それでも、コンディションが決して良かったわけではない。

 

 5月中旬のゲームで左足を痛め、肉離れと診断された。当初は完治まで6週間かかる見込みだった。腱まで痛めている可能性があり、インターハイ予選中の復帰は絶望的。だが彼は驚異的な回復力を見せ、3週間で実戦に戻ってきた。状態は戻している最中で、本調子とは言えないなかでのプレーが続いていたのだ。今予選も全試合でゴールを奪ったとはいえ、運動量は乏しく、この試合もゴール以外は消えるシーンが目立った。

 

「ゴール以降はチャンスらしいチャンスがなく、(少ない好機が巡ってきても)決め切るべきところで決めれず、ふたつぐらいはゴールにしても良かった場面があった。そこは勝負が決められるような選手にならないといけない」(波多秀吾監督)

 

 指揮官が注文をつけたように、決定力の部分で課題も少なからずある。しかしながら、ここぞという場面で決め切ってしまうのは流石のひと言だ。

 

 2年連続で挑む夏の全国舞台。高卒でプロを目ざす郡司にとっては、就職活動の場となる。すでにJ2クラブの練習に参加しており、他のチームからも興味を示されているが、具体的なオファーは届いていない。郡司自身に焦りはないが、時期を考えれば、夏のインターハイでのアピールが卒業後の進路に大きく関わる。

 

「全国大会でゴールを決めれば、間違いなくアピールになる。バンバン、点を取っていきたい」

 

 世代別代表歴を持つ“市船”を牽引する10番が、北海道で行なわれるインターハイの本大会で主役になれるか。その可能性は十分にある。

 

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

 

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