(写真=多田哲平)
「Z世代」と呼ばれる令和時代の子どもたちは、以前とは異なる特性や価値観を持ち、学習スタイルやコミュニケーションの方法、感受性も変化している。テクノロジーに親しんでいるため情報を素早く処理する能力が高く、論理的に物事を考えらえるのはZ世代のひとつの特徴だ。
そうした子どもの性質変化に合わせた指導は、サッカーの監督やコーチにとっても重要な課題である。令和時代の特徴を踏まえ、サッカー指導においても新たなアプローチが求められている。
インターハイで全国制覇1回、選手権で全国制覇2回など輝かしい実績を誇る千葉県の名門・習志野高校サッカー部を2021年度から率いる金子大助監督は、現代の子どもの特徴と指導法の変化を以下のように話す。
「今のZ世代と呼ばれる子たちはちゃんとした説明をしてあげないと響きません。部活動だけではなく、体育の授業にしても生活指導にしても、ただ『やれ』と押しつけるだけでは動かない。理由を的確に説明してあげることが重要なんです。『こうだから、こうしたほうがいいんじゃないか』と気づきを与えて自発的にやらせることを意識しています」
根拠を求める現代の子どもに対して無理強いをしても反発を生み出すだけ。チームミーティングや個別面談の際には、理由や意図を明確に説明することが肝要だろう。そうすることで、子どもたちが納得感を持ってトレーニングや試合に取り組むことができる。
また金子監督が強調するのが個性の伸ばし方。多様性が叫ばれる現代だが、若者は個性がないと言われる。サッカー界で言えば、似たような選手が増えてきているとその没個性が危惧されている。
1990年代や2000年代初頭に比べて、協調性があるため監督の指示をよく聞き、チームプレーに徹することができる選手が増えた一方で、強引にひとりで局面を変えてしまうような尖ったタレントが減ってきている印象は否めない。
金子監督は実際に生徒を観察していて「みんな真面目で、突き抜けたりして変に目立ってしまうのを嫌がる感じが見受けられる」と言う。一方で「上にいくためには個性はなくてはいけない」と“個”を伸ばす重要性も口にする。
「もちろんサッカーはチームスポーツであり、学校活動は集団行動なので、礼儀などの当たり前のことは当たり前にさせないといけません。どんな時もやたらと『個性が、個性が』と言うのは違います。それはただのわがままであり尊重されません。プラスアルファの部分でいかに個性を発揮してもらえるか。そういうところはしっかりと子どもたちに伝えてやっていくべきですね」
金子監督は、さらにこうも続ける。
「昔から変わらないところは変わらない。ダメなものダメだとしっかり伝え、当たり前のことを当たり前にできるようにする。その積み重ねかなと思いますね」
個性を磨くことは大事だが、その土台となる人間性やモラル、マナーは時代が変わっても変わらない。指導者は社会に出ていく子どもたちに対して基本的なことを教える役割であり、時代の変化に対応しながらも、そうした原則をまずは教えるべきだろう。
「昔からアプローチの基本は変えていない」と言うのは、全国屈指の強豪校・青森山田高校サッカー部を今季から率いる正木昌宣監督だ。
昨年までは黒田剛監督(現・FC町田ゼルビア監督)の下で17年間コーチを務め、様々な生徒を指導し、多くのプロ選手の育成に関わってきた。監督になった今年は「黒田監督が大事にしていた『人としてしっかりする』いうところも引き継ぎながら自分らしくやりたい」と責任感を強めている。
そんな正木監督は「社会に出ていけばどんな世代だろうが関係ない。だから最低限のことはやらせて、上手く導けるようにしないといけないんです」と子どもたちの将来を常に見据えた指導を心掛けているという。「指導の根本は変わらない」のだ。
またZ世代の子どもは打たれ弱いとも言われる。子どもに限った話ではないが、いわゆるメンタルタフネスが昔と比べて劣るのは、自己肯定感の欠如が影響しているからだそうだ。よりグローバル化が進み競争力が高くなる社会で、自らの価値を見出すのに苦労している。
そんな背景に加え、SNSやインターネットが発達したことにより、厳しく叱責すればすぐにパワハラとして問題視され、大きなニュースとなりやすい。指導者にとっては時に厳格な態度で接することも必要だが、どこからが問題となるのかのボーダーラインを見極めなければならない。だからこそ選手一人ひとりと密にコミュニケーションを取ることが重要だ。
正木監督は「確かに世間で言うように、ちょっと甘い部分も今の子たちってありますけど」とZ世代の特徴に理解を示しつつ、「『社会に出たらもっときつくなるんだから今のうちに覚えようよ』という話はしています」と語る。
厳しい指導がパワハラと捉えられる要因のひとつは、指導者と生徒のコミュニケーション不足であることは間違いない。お互いの意識のズレが精神的なストレスを生み出す。
だからこそ、いかに生徒と面と向かって本音で話し合うかが求められる。以下の正木監督のコメントに人間育成の本質が集約されている。
「今の子は今の子で難しさはありますけど、15年前、20年前もやんちゃ坊主がいっぱいいましたからね。また違う難しさはありましたよ。でも生徒と向き合って良さを出してあげながら、ダメなところはしっかり注意して改善する。そういう当たり前のことを当たり前にやるのは、いつの時代も変わらないと思います」
科学的根拠に基づいたトレーニング、GPSを用いたトラッキングデータの収集、AIを用いた戦術分析など、研究の発展やテクノロジーの進化によって、より効率的な指導法が次々に生まれている。それでも育成の本質は変わらない。生徒と真正面から向き合い、その人間性を養うこと。様々な指導論が生まれている現代だからこそ、その根本を忘れてはいけないのである。
(文・写真=多田哲平)
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※2023年10月12日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽市立船橋FW郡司璃来(→清水エスパルス) ▽桐光学園MF齋藤俊輔(→水戸ホーリーホック) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド...
10番・長のゴールを称えるチームメイトたち。昌平は尚志を相手に逆転負けを喫した。写真:河野正 村松コーチが監督代行として指揮 埼玉・昌平高校サッカー部を全国屈指の強豪へ育て上げた藤島崇之監督が10月3日付で退任し、新体制に移行して最初の公式戦、高円宮杯JFA U-18プレミアリーグEASTが7日に行なわれ、昌平は尚志(福島)に1-2で逆転負けし、3連敗を喫した。村松明人コーチが監督代行として指揮を執った。 今季プレミアリーグに昇格したチーム同士の対戦。4-2-3-1の昌平は前半6分あたりからペースを握り出し、ボランチの土谷飛雅とトップ下の長準喜(ともに3年)を経由してリズミカルな攻撃を展開。13分、MF大谷湊斗(2年)が右から鋭く切れ込んでからの最終パスが尚志DFに当たり、そのこぼれ球を長が蹴り込んで先制した。 前節まで6試合連続無失点の尚志の堅陣をこじ開けたことで、昌平...
■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
※2023年10月2日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽湘南ベルマーレ...
鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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