後半の優勢、ほとんどのチャンスに絡む
プレミアリーグEAST第3節・流通経済大柏と前橋育英の一戦。会場はいつもの流通経済大柏高校のグラウンドではなく、隣の茨城県にある流通経済大学龍ヶ崎フィールド。
この日は第二試合に関東大学1部リーグ・流通経済大対東京国際大の一戦が組まれており、高校と大学総出の重要な一戦だった。ゴール裏には大学、高校のサッカー部員だけではなく、下部組織のクラブドラゴンズ柏、流通経済大柏中学サッカー部の選手も応援に駆けつけていた。
その大観衆の中で視線を集めたのは、1人の2年生FWだった。流通経済大柏の背番号16・柚木創は、足に吸い付くようなトラップからのドリブル、アウトサイドを駆使した相手の意表を突くパス、そして積極果敢な前線からのチェイシングを見せ、ピッチ上で大きく躍動していた。
この試合、流通経済大柏は思わぬ展開だった。開始早々の30秒、GKとDFの連係ミスから痛恨のオウンゴールで前橋育英に先制点を献上してしまった。動揺を見せるチームのなかで、柚木はチームに流れを取り戻すべく、前述したように最前線で豊富な運動量とハイレベルな技術を見せて攻撃の中枢となった。
「あの16番、何者だ」、「あいつだけレベルが違う」とゴール裏で応援していた大学生も舌を巻くほど、際立つプレー。後半に入ると流通経済大柏は完全にペースを掴み、45分間をほぼ相手コートで過ごした。
そして71分には右からのクロスに途中出場のMF笠松良緒が飛び込むと、前橋育英GK雨野颯真に倒されてPKを獲得。しかし、笠松が放ったPKはGK雨野のセーブに阻まれた。
圧倒的に攻め込んでいてもゴールを決められず、PKまで止められてしまうという流通経済大柏にとっては嫌な展開となったが、ここで柚木がさらにプレーのギアを上げた。
78分、寄せてきた相手を嘲笑うかのように、ペナルティエリア内左に走り込んだMF山口裕也に浮き球のスルーパスを通す。82分にはペナルティエリア右外でボールを受けると、2人がかりで前を塞ぎに来た相手に対して、スッとライン裏のスペースに抜け出したFW葛西亮太に右アウトサイドから相手の股を抜くスルーパスを通し、GKと1対1に。葛西のシュートはGK雨野のビッグセーブにあったが、会場からは大きなどよめきが起こった。
85分には左CKを得ると、柚木が右足で直接狙った。これも、再三ビッグセーブを見せるGK雨野によってかき出されたが、チャンスのほとんどに柚木が絡んでいた。
股抜きスルーパスをスラスラと解説
結果は後半だけで15本、合計21本のシュートを浴びせ、相手のシュートは後半の1本に抑えたが、開始早々のオウンゴールが最後まで重くのしかかり、流通経済大柏は0-1の敗戦を喫した。
「この負けは本当に悔しい。この試合は絶対に落としてはいけなかった」
試合後、柚木は悔しさをあらわにしながら、こう口にした。確かにチームにとってはあまりにも痛すぎる敗戦だが、彼のプレーのクオリティは間違いなく際立った一戦だった。
後半の股抜きスルーパスについて聞くと、「相手のセンターバックがあまり食いついてこなかったので、高い位置でボールを受けたら落とさずに前を向くことを意識していました。あのシーンも前を向いたら、敵が目の前にいて、あまり選択肢はなかったのですが、葛西が狙っているのは把握していたし、相手の股の下が開いていたので間髪入れずにアウトサイドで出しました」と、スラスラとその時の描写が出てきた。他のプレーについて聞いても、すぐにそのシチュエーションが言葉として出てくる。
これは選手にとって非常に重要なことだ。それだけ試合中に考えて、駆け引きをしながらプレーしている証拠であり、プレーの記憶を積み重ねて再現性を持ったアクションができる選手の特長でもある。それだけでも柚木の能力の高さ、ポテンシャルを測り知ることができる。
「ボールを受ける前は基本、センターバックとゴールを両方見ていますし、それを把握したうえで味方の動きも間接視野に入れています」
そんな柚木はこの悔しい敗戦をどうプレーにアップデートさせていくのか。次なる相手は同じ千葉の最大のライバル・市立船橋。「この試合をターニングポイントにして、しっかりと準備をしてライバルを倒したい」と誓った柚木は、千葉ダービーでどのようなプレーを見せてくれるのか。非常に楽しみだ。
取材・文●安藤隆人
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■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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