青森山田の正木昌宣監督(写真=会田健司)
黒田剛前監督が、J2FC町田ゼルビアの新監督に就任。高体連からJへ異例の転身となったが、その黒田前監督から青森山田の監督を任された正木昌宣新監督。
選手としてプレーした母校の青森山田で19年間コーチを務めた正木監督に、選手時代の話から、指導者を始めた経緯などをインタビューした。
――昨年はシーズンの途中から監督に就任しましたが、今年は最初からということで、何かを変えたところはありますか?
特に何を変えるとかはないんですけど、やっぱり今まで良かったところは間違いなく全国でも通用してきましたので、そこはしっかりと引き継ぎながら、毎年選手によってやるサッカーは若干違ったので、今年は今年の選手たちが一番力を出せるメンバーやサッカーに取り組んでやれればいいかなと思っています。
――監督になってやることは増えましたか?
そうですね、ただ、今きてくれているスタッフが自分の行き届かないところをケアしてくれていますので、監督になって仕事量が増えるのは当然なんですが、今のところはスタッフと協力しながらやっていけていると思います。シーズンが始まれば色んな事が起きて、上手くいくことも行かないこともあると思いますので、そうなった時にどうなるかですね。まだ見えていない部分も多いので。
――監督になってもバスの運転は続けているんですか?
はい、やってますよ(笑)。スタッフも来てくれているので交代しながら運転しています。
――町田の試合はご覧になっていますか?
開幕戦は観に行きましたよ。(黒田監督は)変わらず監督でしたね(笑)。Jの監督になってもいい意味でブレずにやれているのはやっぱり凄いですよね。環境が変わると変わってしまう人もいると思いますが、全く変わらずに"THE青森山田"って感じでやっていますからね。
――正木監督の野望はありますか?
自分自身はずっと高校サッカーの指導者をやりたくてやっていたので、19年コーチをやって来て、この年代で一番強いチームを作りたいですし、卒業した生徒たちがプロの舞台や世界で活躍してほしいっていうのはずっと思っています。そこをしっかりと出来るようにしたいですね。
――コーチを19年やられるというのはかなり長かったと思いますが、他のチームから監督のオファーもあったのでは?
なかったと言えばウソになりますが、でも一番は母校というのが大きかったです。青森山田が弱いっていうのは嫌だし、青森山田で日本一を取りたいという想いでしたので、19年間他で監督をやるつもりもなかったですし、だからと言って青森山田で早く監督をやりたいというのもなかったです。
――それにしても、急な監督交代でしたね?
本当に急すぎますよ(笑)。「あとちょっとで代わるぞ」とかもなく、急に監督になりましたから。
――普通はそういうものですかね?
そういうものじゃないですよ(笑)。普通は「あと一年で辞めるよ」とかがありますよね。
――急なタイミングでバタバタしたりはしませんでしたか?
まあ、ヘッドコーチをやっている時から「自分が監督だ」ってぐらいの気持ちでやっていたし、責任もそれなりに背負っていましたので、バタバタはしなかったです。今は黒田監督が残してくれた財産があるわけなので、あと何年かしたときにどうなっているかじゃないですかね。
――なるほど。では正木監督もこれから指導者の育成もしていくことになりますね?
そうですね、組織なので下のスタッフの成長、そして自分も成長していかないと勝てなくなるだろうし、育成できなくなってしまうと思うので、まずは自分がもっと成長しないとですね。自分が成長してから育成もしていこうと思います。
――ご自身ではどんなところを成長したいですか?
やっぱり組織の長になるので、現場以外のマネージメント能力というのが一番かなと思います。時間の使い方とかもそうだと思いますが、現場に穴が開かないようにしながらも、いろんな応援してくれる人もいっぱいいますので、そういう人たちともきちっと関係性を築いていかないといけないと思っています。
――今年は正木監督も注目されますね?
去年までと比べたら今は静かなもんですよ(笑)。ただ、叩かれるってことは注目されているってことでもありますし、注目されるってことは素晴らしい事だと思いますので、注目されつつ、みんなから応援されるチームになっていければなと思います。
――青森山田で選手をやっていた時から、今思うと後にコーチを要請されるような前触れみたいなものはありましたか?
僕が選手の時は黒田監督も20代でしたので、結構近い距離感で指導してもらっていて、我々は3年生が少なかったので、よく練習が終わった後に「監督!ごはん行っていいですか?」と言って、監督の家にご飯を食べに行ったりもして、他の学年の人たちよりも監督とは近い関係性ではあったと思います。それで、大学に行ってからも色んなことを報告していましたし、大会などで近くに来たら会いに行ったりもしていたので、そういうところですかね。
――母校に戻るきっかけになったのは?
元々サッカーを始めた頃から、指導者になりたいと思っていて、高校サッカー選手権に憧れてサッカーを始めました。指導者になって選手権に出て優勝したいという想いがあったので、誘われた時はほぼ即決でした。母校に戻れるっていうチャンスも早々あるわけでもないので、タイミングも合ったし、監督の事も理解していたし、自分の想いもあったし、全てが合致したなと思います。
――コーチになって最初の頃は黒田監督からどんなことを教わりましたか?
黒田監督は一から十まで全部を言うタイプではなかったので、「感じろ」とよく言われていました。コーチ自ら気付いて行動する。その方法とかは指摘をされたりはあったと思いますが、何かを教わったりというよりも、傍にいて感じ取った方が多いですかね。その中でいくつか言葉のヒントがあったり。そういう意味では「見て学べ、感じて学べ」という感じでしたね。
――どれくらいの期間でコーチとしてチームを任されるようになりましたか?
どうですかね、自分がコーチになってから黒田監督が高校選抜のコーチになったので、2年目でサニックス杯をいきなり任されたんです。そこでベスト8まで行ったんですが、前年チャンピオンと準優勝の市船と鹿実、アジアチャンピオンのU-17中国代表と同じグループだったんですが、そこを2位で通過して、黒田監督からも「お前凄いな」って言われて。そこで結果を出したのが凄く自信になりましたね。
あとは黒田監督がA級やS級ライセンスを取りに行ったりで不在になることもあって、4年目くらいまでにチームを任される事が結構ありました。特にS級を取りに行っている期間は長かったので、練習からゲームに向けて自分で構築してやっていました。なので、そうやっている中で監督から「次の新人戦をやってみろ」と任せてもらえるようになったと思います。
――今年のチームの事をお聞きしたいのですが、昨年は黒田前監督が冬の間に練習が出来なかったのが響いたと仰っていましたが、そういう意味では今年は雪中トレーニングだったり、冬も練習が出来たのは大きいですか?
去年はコロナで練習自体1か月半ほど出来なかったので、それは雪中じゃなくてもそれだけできないとやっぱりかなりしんどかったですね。今年はそこが出来ているので馬力もだいぶついてきているのかなと思います。
――今年は青森出身の選手が多いですよね?
中学校時代から常に一緒にやっていて、DF小泉佳絃は中学校は違うけども選抜とかでも一緒にやっていたでしょうし、そういった意味では知った仲なのでチームを作りやすいところはありますね。もう6年、小学校時代を入れればもっとやっているわけですから。だからこそ言い合える関係性もあるし、お互いの良さも悪さも知っているので修正しやすいんじゃないですかね。
――今年はプレミアに高体連のチームが増えましたが?
プレミアが始まって13年目。1年やってないにしても。始まったころは全部Jユースになるだろうと言われていた中で、高体連がこれだけ頑張っているのは嬉しいですよね。単純に。さらに同じ高体連なので負けたくないというのも出てきますし。純粋に嬉しいですけど、言い訳が出来ない。負けられないので。逆にインターハイと選手権でその人たちと競っていかないといけない。今までうちしか経験できなかったようなことを1年かけてプレミアで経験してくるので、選手権の時に出来上がってくるチームが増えてくるかなと思います。うちも成長率をもっと上げていかないといけないと思っています。
――ライバルが増えますね?
増えますよね。監督さんたちも知ってる人ばかりですし、歳も近い人が増えてきたし。僕は一年生ですけど(笑)。
――最後に、今年はどんなチームを作りたいですか?
今年は攻撃力をウリにしていきたいですね。あと、守備のところはゼロで行きながらというベースは絶対にやらないといけないと思っています。頑張ります。
(文・写真=会田健司)
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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